Suspend.
ただいまと声をかけても
応えてくれるのは玄関の鍵だけで
最近ではそのカギすらも
ガチャっという音で
お帰りを告げてくれることが
少なくなった
刻んだタマネギは
ほんのりと甘く目にしみて
圧力鍋の底で
沈んだ飴色になって
ジャガイモやニンジンとともに
崩れて形をなくしていく
眠るときには山積みの食器が
朝起きると片付いている
これじゃぁまるで家の中に
ブラウニーが住んでいるみたいで
天井から
コインでも吊るしておいたのなら
いつかそのコインが
なくなる時が来るのかな
僕にできることは
君がいなくならないようにそっと
ベッドの上に
ハサミを吊るしておくくらい
ありがとうございました。