ep,1 榛摺の世界
‐終わりの始まり‐
時は西暦2150年。地球は壊滅の危機に瀕していた。
地球温暖化による気温の上昇。北朝鮮との核戦争。森林伐採。砂漠化など、人類が解決できないレベルまで、地球の環境は悪くなっていた。
赤道直下の国は全滅。緯度が高い国も平均気温35度という、異常気象に見舞われている。
地表は常に放射線で汚染されているので、人類は地下に暮らすしかなかった。
地下では自然の食糧が採れない。水もほんのわずかしか残っていなかった。人類全滅までは時間の問題ということになる。
そこで世界の首脳たちは会談し、カナダの地下に地下帝国を造ることが決定した。
地球に残された資材と技術のすべてを使い、人工食糧プラントや地下水浄化槽、巨大居住区が含まれた、“アース・ホープ”の建設が始まる。
しかし、重要な問題があった。“革命派”と呼ばれる力を使い食糧や居住区を奪う集団が現れたのだ。その集団がアースホープの計画を知れば、妨害をしてくるに違いない。
奴らは科学者を買収し、最新鋭の防護服や汚染兵器の研究をしている。数も把握できてない。総攻撃を受ければ政府軍は壊滅だ。
地球が終わる。その前に人類は自滅しかねないのだ。
‐第一特務隊‐
空は一面茶色い絵の具を塗ったかのような、汚い色をしている。そんな景色を、一人眺める男がいた。
…ま.さ… なか..まさん…
「中山さん!!軍の所属公表始まりますよ!」
もうそんな時間か…さすがに緊張するな… 時刻は午後1:00。これから政府軍の所属公表が始まるのである。
そもそも政府軍とは、全世界から地球のために動きたい。そういう想いを持った人が所属する政府側の軍隊である。
希望者の中から選ばれた者だけが入隊を認められる。全世界で入隊できるのは2000人。中山は日本人45人の中の1人だ。
そして、いまから行われるのは所属発表。軍には、技術班、衛星班、戦闘第一部隊、第二部隊、第三部隊、開発班、情報班など、たくさんの役割がある。
ほとんどが希望する班に入るのだが、一部の人はランダムで選ばれる。中山はランダムに部隊に配属されることになっていた。これは、中山の希望からである。中山はどの部隊でもいいと、あえてランダム組になったのだ。だたひとつの部隊に関しては、嫌悪していたのだか…
「えぇ今から軍の所属を発表する。各国ごとに別れて着席せよ。各国の発表担当官は準備でき次第、はじめてくれ。」
そう言って説明しだしたのはアースホープ建設計画の責任者兼、政府軍大将のハッタ シューテル オリシンスだ。
正直言って、俺はあの人のことが嫌いだ。権力を見せつけるかのような高級腕時計。オーダーメイドスーツ。そして、自宅に帰れば美女たちのお出迎え。どうせ夜も盛り上がってるにちがいない。あんな奴が代表で大丈夫なのか?
考えているうちに日本の発表室まできていた。掃除もろくにされてない居住区に比べて、ここはずいぶんと綺麗だ。
部屋の広さは学校の教室と同じくらいだろうか。まあ、俺が学校に通っていたのは15年も前の話だ。あのころの地球は綺麗だったなぁ。おっと、余計なことを思い出しちまった。
この部屋の床や天井や壁は見慣れない光沢素材でできている。正面には大きなモニターが一つ。そして、木製の長机がいくつも並んでいる。
厳しい試験に合格した同士たちが席についていた。自分の席を見つけて、俺も腰をおろす。
ほとんどのやつは希望した班に配属される。だが俺は違う…戦闘班かもしれないし、技術班かもしれない。もしくは…
ウィーーン 自動ドアが開いて政府軍の制服をきた人が入ってくる。おそらくこいつが担当官なのだろう。年は俺よりかなり若い。華奢な体格で背も低いように見える。防衛大学でよほど勉強していたのだろう。俺の目には、はっきりと中佐を示すバッチが見えている。
「い、いまから諸君らの所属を発表する!」
こういう仕事には慣れてないのか、緊張した口ぶりで話している。担当官はファイルを開いて、こう言った。
「えー、ま、まず、第一戦闘部隊!有村 瞬、石田 淳平、奥田 正敏、...
俺は思った。本当にランダムにして良かったのか?まさかとは思うが例の部隊に配属されたらどうする。おとなしく、戦闘部隊に入っておけば良かったんじゃないか? 俺は戦闘するのが一番向いていると思う。昔住んでいた町では、俺にケンカで勝てるやつはいなかった。
「えー、最後は無希望グループの所属を発表する。」
ふぅー。俺は深呼吸をする。心拍数が上がっているのを感じる。落ち着け。きっと大丈夫だ。
「川谷 勤、第一戦闘部隊。 栗田 佳祐、技術班。 小林 巧、情報班。田口 涼介、衛生班。 中山 奏司…」
きた。心拍数が一気に上昇する。名前を呼ばれてここまで緊張したのは初めてだ。
「中山 奏司、だっ、第一…特務隊…。」
部屋全体に重い空気が流れる。
「えぇ…」 「かわいそうに…」 「あ、あいつなら大丈夫だろ…」
「みんな静かに!これにて所属発表を終了する。30分後に部署ごとに集まって会議がある。分かってると思うが、日本人だけで集まるのはこれが最後だ。みんなの健闘を祈る。」では、解散!
俺はまだ分かっていなかった。第一特務隊の本当の恐ろしさに…
初めまして。ころずしです。分かりづらいところもあると思いますが、暖かい目で見てください。
暇潰しのネタにでもなれば幸いです。