02 No light
さて、ここで佐川さんに振られたことの気を紛らわすためにも、佐川さんに振られたダメダメな俺を卒業するためにも、自分を見直してみよう。 それをするなら、俺こと、田村叶夢の自己紹介をしなければなるまい。
名前は田村叶夢。 中学三年の14歳だ。 俺の誕生日は10月だから、まだ15歳にはなっていない。 身長は168cm、体重は57kgくらい。 座高が85cmくらいなので、足が長めなのが自慢だったりする。
そして、俺の自己紹介をするうえで避けては通れないこと。 それは、おれが視覚障害を持っているということだ。
視覚障害。 物を目で見るのに必要な、「視覚」に障害もっているということだ。
つまり、物が見えにくかったり、見ることができないのだ。 もっと性格にいうのなら眼鏡やコンタクトなんかの強制視力を使ったとしても、視力をあげられないのだ。
そして、視覚障害者にも、少しは視力のある「弱視」と、まったく物が見えない、視力が0である「全盲」とに分けることができる。
そして俺は、そのうちの後者である「全盲」なのだ。 つまり、視力は0ということだ。
全盲にも、光を感じる感覚、すなわち光覚の有無がある。 ちなみに俺は光覚無しだ。
この障害は生まれつきもっていたものだから、俺は「光」というものがどういうものか知らないのだ。 ついでに眩しいという感覚も知らない。 こんちくしょう。
そして、盲目であれば、盲目の子供達が通う、盲学校に行くこが多い。
けれど、最近は「ノーマライゼーション」という考え方がある。
ノーマライゼーションとは視覚障害者に限らず、障害を持つ人も、持たない人と同じように生活できるようにするべきだという考え方のことだ。 これのおかげで、盲学校ではなく、地域の学校に行くことが推奨されているのだ。
だからこそ、同級生とともに通い、友達と馬鹿話しし、勉強し、教えあいし、遊び、恋愛し、喧嘩し、青春できるのである。
盲学校でそれができないとは言わないけれど、盲目の同級生など、一都道府県に10人と居ないだろう。
なぜなら、盲学校とは、公立の学校であり、一都道府県にだいたい一校しか無いからだ。
そこで同級生という括りや、幼稚部から高等部まで通ったとしても、12年間に同じ学校でかかわれる人数など、普通校と比べれば、答えは言うまでもないだろう。
だからこそ、俺の両親は俺を盲学校ではなく、普通校に入れたのだ。
…話がかなり反れてしまったが、言いたかったことは、俺は全盲であるということだ。
だから佐川さんに振られたんだよきっと。 いや絶対そうだ。 どうせ俺はめくらで根暗で一人じゃなにもできない奴ですよーだ。
おっと、これ以上言っていれば余計に落ち込みそうだからやめておこう。 そんな落ち込んでいる暇はない。 告白を終えたら友達と帰る約束していたのだ。 あいつらはもう下足で待っているだろう。 早く行かないと。
そう思い、俺は白杖を片手に教室を後にした。
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