プロローグ
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太陽がさんさんと照りつけて、平均気温が20度台後半という日が続いている。
日に日に高まっていく気温に、反比例するように人々の服装は薄くなっていく七月の上旬。
例に埋もれず、中学校や高校でも、制服が夏服になってしばらく経っていた。
男子は女子の短いそでから覗く肌や、髪をあげているために見えるうなじなどに目をとられることが多くなっているだろう。
そして町に出ても、露出度の高い服装をする女性が増え始め、目のやり場に困ることが多くなるのも、この時期の特徴だ。
けれど、そんな世の男性諸君が目のやり場で困ることのできる時期に、それに困ることのできない少年が一人、静林中学校に在籍していた。
彼の名は田村叶夢。 静林中学校三年一組。
外見には、これと言った特徴はない少年である。 一つ言えるとするのなら、彼の髪が短く、丸坊主であるということくらいだろうか。
けれど、叶夢には外見にではないが、叶夢ならではの特徴を一つ持っていた。
それは、叶夢が視覚障害を持っているということだ。
視覚障害。 日常生活を営むうえで必要な五感の一つである、視覚に障害がある事をいう。
視野が局地的に狭かったり、強制視力でも視力が一定以上上がらなかったり。
または、視力そもそもが〇であったり。
視覚障害とはそのような障害だ。
そして、その視覚障害を持つ人のことを、視覚障害者という。
叶夢は、その視覚障害を持っている。 そして視力〇であり、言葉表すのなら、全盲である。
そんな叶夢だけれど、障害のある中学生として校区内にある地域の中学校に、友人達とともに通っている。
そして叶夢は、中学二年のクラス替えのとき、一人の少女に一目惚れした。
見えないのだから一目惚れでは無いだろう? ……それはひゆ表現というものだ。
彼女の名は、佐川咲希と言う。 身長160cm弱の、黒髪の真面目そうな少女だ。
鼻筋が通った、眼がぱっちりとした二重の、十人中六人は可愛いというであろう、整った顔立ちをしている。
胸もある程度膨らんでおり、中学生としてはかなり大きめな方だろう。 将来が楽しみなほどである。
そして叶夢は、一年に一度、織姫と彦星が天野川の上で会うことを許された日、すなわち七夕の日である今日。
彼女に告白するべく、昼休みである現在、放課後に人が居なくなるまで教室で待ってほしいと話をつけている最中なのである。
「うん、わかった。 放課後ね? ここの教室で大丈夫なんだよね?」
「うん、ここで大丈夫! わざわざ悪いな、助かるよ」
「ううん、気にしないで。 じゃあまた放課後にね」
「おう」
放課後だね、と再度の確認を終えた彼女は、友人の元へと行ってしまった。
叶夢はもう少し咲希と話していたかったなと寂しく感じたけれど、放課後に告白するというのだから、今話していれば挙動不信な行動を取りかねないだろうと、流行る気持ちを抑える。
そして後昼休みが五分くらいであろうから、次の授業の準備をすべく、そのまま自分の机と戻ったのであった。
放課後の告白にわずかな期待と、少しの不安と、そして、一つのある覚悟を持って、叶夢は残りの授業に挑むこととなる。
この日が、二人の運命の始まりの日であることも知らずに。
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