無人の星
気がつくと1人だった。比喩ではなく文字通り1人だった。
人がいた形跡はある。建物はあるし、服もある。そして、いくつかの写真も残っている。
「なんでこうなったんだよ」
毎日のようにぼやく台詞。しかしこれを聞いてくれるものは誰ひとりとしていない。
最初は夢だと思った。誰もいない世界でさまようような夢。だが意識ははっきりしていて、頬をつねれば
「痛い」
次に、違う世界に来ているのではないかと考えた。パラレルワールドというべきか、異世界というべきかは分からなかったが、とりあえず違う場所なのだと考えた。しかしこれもまた違った。自分が立っていたのは、間違いなく自分の部屋であり、知った道を歩けばいつもの駅、通っている学校、見知った家があった。
「なんでこうなったんだよ」
またぼやく。
こんな状況になって一年ほど経つ
「一年か、一年前って何してたっけ」
この状況になる前の記憶が結構あやふやだ。
あれは確か新学期早々体力テストがあり持久走でカラカラに乾いた喉を潤すために最寄りのコンビニでポカリでも買おうとした。コンビニにはついたのか?思い出せない。気がついたら自宅のベッドの上だった。
「食べ物でも探しに行くか」
誰もいないとはいえ死ぬわけにはいかない
「今日はコンビニでいいかな」
一人になってから独り言が多くなった。いざという時何も喋れなくなると困りそうだら独という理由でり言を意識していたら癖になってしまった。
「到着」
当然自動ドアは自動ではなくなっているので
「えい」
投石。
中に入れば拾うものは大体決まっている。
「缶詰…水…ライターと…こんなもんか」
あまり長居はしたくない。丸々一年放置されたコンビニはひどい臭いがする。
…?
「ほほう」
思わす手にとってしまった本 。タイトル「上司に怒られてもポジティブになれるエリート社会人の考え方』
「俺もポジティブになれるんじゃないのか?」
心はなるべく正常でありたい
「まずは形からです。どんなに苦しくても『ラッキー』『ついてる』と言うように心がけましょう。」
ふむふむ
「ラッキー!俺ついてる!一人だけ生き残ったぞ!よっしゃー!!」
虚しい。
「帰ろ」
本は投げ捨て無事帰宅。
家に帰ってもすることは決まっている。図書館や本屋からかっぱらってきた本を読む。これくらいしかすることがない。しかし気づけば夜になっているので中々役にたっている。この時ばかりは独り言も少なくなる。親が死んだのにコメディ映画を観て女と寝たりしたのが決め手となり死刑になったみたいな内容の本を読んでいた。裏表紙にがっつりネタバレされていて萎えたのでろうそくを消して寝ようと思い、口に空気を大きく吸った。
コンコン
音がした。扉を叩く音だ。
コンコン
また音がする。玄関の扉を叩く音は鳴り止みそうにない。
空気を吸ったことなどすでに忘れていた。
誰だ?
困惑を表すような独り言は出てこなかった。
初投稿なので更新は不定期で文章もしょっちゅう変わってミスしまくりだと思いますがこれからも読んでいただくと幸いです。