一章 8
僕たちはその後の二日間、スパイの動向を探った。そこでわかったことがある。
「何もしないわねぇ。」
スパイはなにもしない。普通のサラリーマンのようにパソコンに向かい合い露天風呂に入り……。夕飯の時、いつも会うが普通な印象しか持っていない。
「パソコンに向かって何かを打ってるじゃないですか。あれがあれを狙う計画書という可能性は?」
カナディアさんが調べたところによるとスパイが狙っていそうな物を見つけた。それはある企業の情報が全て詰まっているUSBメモリである。
「とりあえずスパイがこの旅館を去ったら真っ先にこの企業へ連絡、警告をして学校と警察に連絡ね。」
カナディアさんは仕事の段取りをもう決めていた。
「カナディアさんって仕事はふざけないでちゃんとやるんですね。」
カナディアさんは仕事の最中はふざけることをしない。真面目に仕事に取り組んでいた。そこが普段とのギャップではあった。
「昔……ちょっとね。」
その時下の階から旅館の女将の声がした。
「このお客さんもいなくなったし上のお客がいなくなったら改装でもしようかしら。」
僕とカナディアさんは顔を見合わせると窓の外を見た。そこにはどこかへ向かうスパイの姿があった。
「急いで連絡ね。その後追うわよ。」
連絡をして急いで追いかけたがスパイを見失ってしまった。
「とりあえず連絡をして警備を強化してもらったからすぐに企業へ向かいましょう。」
タクシーを拾ったカナディアさんがそう言った。
*
とある企業へ到着した僕たちは警護をしていた。
「これがそのUSBメモリですか。」