1章 2
お互いに動かない。ただひたすら相手の出方を疑っている。
この静寂の戦いで先に動いたのはカナディアさんだ。先生の目の前へ一気に走り込むと手から炎を出して先生の溝内あたりに叩き込んだ。もしかして全身赤なのはそれが理由か?
「くっ……。」
これを食らうのはまずいと思ったのか先生は体を最大限に捻りこれをかわした。そしてまたお互いに見つめあった。
「さすがにかわしますよね。ここからは少し本気を出すけどいいよね?」
軽い感じにそう言った。声を始めて聞けたな。カナディアさんは世界ランキング17位。先生は一番最初のテストなので能力の使用を封じられてる。自分より強い相手に本気を出せないからなのか冷や汗が見えた。
すると空気が変わった。一瞬にして。カナディアさんの回りの雰囲気がとてつもないものになっていた。
先生が目に入りそうな汗を拭こうとした瞬間カナディアさんが動いた。瞬間にして先生の後ろに回り込むと先程の50倍ほどの炎を手に纏った。先生はビックリしたのかこれをかわそうとしたのかジャンプをした。カナディアさんはこれを読んでいたのか先生の首に手刀をいれた。
「そこまで。」
スーツの審判役の男が戦いを止めた。なんと先生を気絶させた。だが観客である在校生や新入生が驚いていたのはそのスピードであろう。先生の後ろに回り込む時、動きが見えなかった。カナディアさんは戦いが終わったと知るとすぐ退場していった。入れ違いで救護班らしき人たちが入ってきた。いま問題なのは残りの生徒のテストをどうするか、である。
「私が相手をしよう。」
その人の顔を新入生はみんな知っていた。それは世界ランキング2位というつまりはこの世界で二番目に強くてこの学園の校長でもある『煉獄使い』の異名を持つ男であるからだ。その校長が相手役を名乗り出たのだ。勿論、他の先生たちがザワザワしていた。
「大丈夫だ。分身体でやる。」
校長先生、つまりは『煉獄使い』の本名を知るものは数少ない。それと同時に能力を知るものもほとんどいない。だがどういう原理か分身ができるらしい。回りの先生方は納得したようだ。だが、分身体で能力を使わないとはいえランキング2位だ。新入生の瞳に恐怖の色が見え隠れした。
校長先生が相手になったとたん生徒たちはばったばったと倒れていく。
「次、下原真太さん。」
僕が呼ばれた。すると今日一番のざわめきが聞こえた。いつも通りの光景だ。
「違うのであれば申し訳ないが君の苗字、『あの下原』と関係があるのかね?」
「一言でいうと血縁者です。」
一層ざわめきが強くなった。ほとんどの人が恐怖に怯える目をしている。
「ならこの分身体を粉々にする気で来なさい。」
どうするか?ここで能力を使うべきか?下原真太は悩んでいた。すると校長先生が動いた。あ、終わったな。だが攻撃は届かず目の前で手を止めていた。
「何を躊躇している?これはテストだし私は分身体だ。本気できなさい。」
僕はその一言で決心した。能力を使おうと。
「で、では始め。」
審判役の男がすぐ逃げられる位置へ行くと戦いの開始を告げた。在校生や先生方は息を飲んでいる。僕は胃の中にいる黒い穴のような物、通称『ブラックホール』を吐き出した。僕の胃から出たそれは一直線に校長の元へと飛んでいった。それに気がついた校長はバックステップで交わそうとする。だが『ブラックホール』はそれを許さなかった。
「捕らえた。」
僕の言葉のとおり校長は『ブラックホール』に吸い込まれ始めた。もう一度捕らえられたら逃げられない。どんどん分身体の体が吸い込まれていく。とうとう体の全てを覆い隠した。そしてその黒い穴を僕はもとあった場所へと戻した。
「や、止め!」
そこには何もなかったようにたたずむ僕しかいない。校長の分身体はこの世から消えたのだ。在校生や先生たちが恐怖の眼差しを向けてくる。僕はカナディアさんと同じように退場していった。今回は救護班は要らないだろう。