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どらごん☆めいど ――ドラゴンとメイドと どらごんめいどへ――  作者: あてな
【第三章】ドラゴンと少女と村の人々
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湯気の中で ~脱衣編~

 キルトランスはお風呂屋と紹介された建物前に立った。

 石造りの建物は意外と大きく、大きさはアリアの家に近いものであった。そして入口からは懐かしい湿気の香りがしてきた。建物の後ろからは何やら煙が立ち上っている所をみると何か木を燃やしているのだろうか。

 この中はどんなふうになっているのかと想像しながらも、キルトランスは何か違和感を感じた。


 「じゃ、入ろうか。」

 そう言ってレッタがアリアの腕を引く。ジャルバとキルトランスも中に続く。

 「おお、お嬢ちゃんたち、久しぶり。なんだか…お?!団長さんもご一緒…うわぁ!!」

 扉を開けて中に入ると、中には番頭(ばんとう)さんがいて入ってきた順番通りに反応をした。

 そして当然のようにキルトランスを見て驚いて飛び上がる番頭。それを笑いながらジャルバは説明した。

 「大丈夫だっておっちゃん。こいつがアンタも噂を聞いているだろう、この村の新人。ドラゴンのキルトランス殿だ。」

 「おお…アンタが噂のドラゴンさんかね。いきなり入って来てびっくりしたよ。」

 台の陰から恐る恐る顔を(のぞ)かせる番頭のおじさんにキルトランスは丁寧に挨拶(あいさつ)をした。

 「私がキルトランスだ。驚かせてすまなかった。」

 そう言って少し頭を下げると、番頭は感心しながら椅子に座り直した。

 「なんだか礼儀正しいねえ。噂じゃ魔獣を倒してくれたんだって?ありがとよ。」

 「ん?ああ…そうだな。」

 「おうよ!なんてったって、我が自警団の期待の大型新人だからよ!」

 なぜか自分の事のように自慢するジャルバ団長。

 「でかいね~。」

 キルトランスを足の先から角の先までじっくり見ながら感心する番台だが、大型とはそういう意味ではない。実際に大きいのは事実だが。

 「ま、そういう訳だからよ。これからよろしく頼むぜ。こいつ一人で来ても入れてやってくれ。」

 そう言いながらジャルバは入って右手の入口に入っていく。

 「アタシ達も行こう。」

 アリアとレッタも動き出す。

 キルトランスは双方を見て、アリアの後ろに付いて行こうとした時にレッタが振り向いて指をジャルバの方に向けた。

 「キルトランスはあっちだ!このスケベ野郎!」

 「…?」

 言葉の意味がよく分からなかったキルトランスだが、どうやら入る方向が違うらしい。

 「ハッハッハッ!男はこっちだぜ。」

 男性入口から顔を出したジャルバが笑いながら手招きをする。

 「アンタ男かね。ドラゴンなんか見た事ないから、男か女か分からんかったよ。」

 そう言って番頭も笑う。

 キルトランスがアルビに来た当初、人間の男女の違いが見分けられなかったように、人間もまた魔世界の住人の性別は見分けられないのだ。

 実際にキルトランスも昨日初めて見た魔獣ガットユールの親子の性別は分からなかった。

 「男と女で入口が違うのか。覚えておこう。」

 そう言うとキルトランスは淡々とジャルバの後を追う。

 ドラゴン界では雄と雌で何かが違うというものが無かったので、そういう意識が全くなかったのだ。ただ、なぜ違うのかはキルトランスには分からなかったが、そこは後で聞いておこうとは思った。


 ジャルバの後に続いて部屋に入ると、そこは(かご)がたくさん置いてある部屋で、見渡すといくつかの籠には脱いだ服が入れてあった。

 ジャルバは服を脱ぎながら笑った。

 「そういやキルトランス殿は脱ぐ服がないな。」

 「ああ。服を着た事はない。」

 その間にも次々と服を脱ぎすてていくジャルバ。

 「まあ、確かに服を着たドラゴンなんて話は聞いたことないからな。」

 「そうだな。私もそんなドラゴン族は見た事がない。」

 そう答えながらもジャルバの裸体をしげしげと見るキルトランス。言われてみれば人間の本来の体を見るのは初めてであった。

 アルビに来てからみた人間は全て服を着ていたので、人間とはそういうものだと勝手に思い込んでいて、冷静に考えれば服の下がどうなっているのかすら気にしたことがなかった。

 見ればドラゴンニュート族に近い肉体の形はしている。それに人間と似たような手足のある魔世界の住人は多い。

 細かい違いは多いが決定的な違いを見つけるのなら、翼と尻尾が無いくらいであろうか。

 あっという間に裸になってタオルを一枚だけ持ったジャルバは「じゃ、行こうぜ。」と言うとキルトランスを誘ってさらに奥の木戸を開いた。

 「団長&ドラゴン、入るぜ!」



 さて、一方のアリアとレッタの方はと言えば、まず脱衣所に入ると先客が一人いた。

 風呂上りに涼んでいる様子の下着の女性は、二人を見つけると目を輝かせて寄ってきた。キルトランスもさることながら、今はアリアとレッタも村の噂の的になってしまっていたからだ。

 そしてその妙齢の女性は小声で

 「もしかして、噂のドラゴンが来てるの?!」

 と問い詰めてくると、その説明から村の噂の真相までアリアとレッタは話をしなければならなかった。

 しかし、話ながらもレッタは服を脱いでいく。しかし残念ながらその脱ぐ様子に色気は微塵(みじん)もなく、その脱ぎっぷりはジャルバといい勝負であった。


 だがそれはレッタが粗野(そや)な性格だからではない。

 小さな時からレッタは服を脱ぐときは自分が先に脱ぎ、服を着る時は先にアリアに着せるようにしていた。

 それはアリアが裸でいる時間を少しでも減らしてあげたい、という彼女の優しさ以外の何物でもない。

 人間と言うのは裸になると心理的に不安を感じる傾向がある。ましてそれはアリアならなおの事だ。

 それを分かっているからこそ、レッタは自分を捨て置いてまでアリアを優先したいのだ。

 もちろんアリアとて、レッタになすがままにされるのを待つ甘えてはいない。自分で脱げるものは脱いで、時間のかかるものは自力では困難な服の時だけレッタに手伝ってもらうように心掛けてはいる。

 それでもアリアが自分で出来る範囲を脱ぎ終わる頃には、レッタは彼女の服を脱ぐのを手伝ってくれる状態にはなっているのだが。

 一応彼女の名誉のために言っておくが、レッタが本当に粗野な性格でない事が分かるのは、彼女が脱いだ服は素早くしっかりと畳まれて籠に入れられており、その丁寧さは先客の女性の服よりは綺麗に畳まれているのを見れば明白であろう。

 ともかく先客の女性と噂話をしながらも、少女たちは入浴の準備を整えた。

 レッタの手際の良さをもってしても、奥の木戸に向かう頃には十分以上が経っていて、一分で奥に進んだジャルバたちとはすでに大きな差になってしまっていた。

 半裸の女性を背に、アリアをかばいつつ奥の洗い場に向かうレッタは、少し浮かない顔をしていた。


 実を言うとレッタは先日の一件以来、村人に対して少し不信を感じるようになっていた。

 今まで普通にアリアに接してくれていると思っていた村人たちが、心の中では彼女を軽んじている節がある事に気が付いてしまったからだ。

 それ故に、以前ほど素直な気持ちで村人たちに接することが出来なくなったのを心苦しく感じつつも、隠して平静を努めていた。

 今ならキルトランスの方がよっぽど信頼していると言えるだろう。なぜなら彼はアリアもレッタも見た目で判断する事をしないし、アリアの目についても特に深くは言わずに普通に接してくれているからだ。

 それを今思い出してしまったのも、レッタが裸になり少し不安を感じているからなのかもしれない。


 そんな少女たちの不安を真っ白な湯気と暗い部屋が呑みこんでいく。

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