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上手な愛し方ってないだろう


 肌に爪を立てて引っ掻いたような痛みが、体内を充満している。

 オレは力なく一人掛けのソファに蹲った。頭が上手く回転しない。何が起こったのか理解出来ない。このイカれた頭を現実に引き戻す鍵は、雑誌やらゲームソフトやらで散らかったテーブルに載っている。

 見たくない。出来るならば、夢であって欲しい。

『バイバイ』

 いつもと同じ笑顔に言葉。なのに、違う意味合いを持つ。

 大切だったはず、何よりも、大切にしていたはずの想い。でも、それは彼女に全く届いていなかった。いくら心の中で慕っていても、届くわけない。

 テーブルに置かれた揃いのネックレスだけが、オレが彼女に示した想いだった。

「何やってるんだろ、オレ」

 自己を責める言葉で自己を慰める。

 彼女と付き合い始めてからはやめていた薬が詰まった箱を開けた。なりふり構わずそれを口にし、水を煽れば、ゆっくりと侵蝕していく快楽。しばらくの間、濁った目で天井を凝視していた。狂気じみて来た脳内は暗転し、思考を止める。


 ――上手に愛せる方法があるならば、誰か教えてくれ。


 願いを叶えてくれる神様など、信じてもいない。きっと、上手に愛せる方法なんてもの、ないんだろう。

 深く深く、澱んで行くのは心か、体か。




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