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「……。」
「お、千円で当たりかよ。良いなぁ。」
「いやいや、前に座ってた奴が何か良いラインで止めてくれてさ。マジ楽勝だよ。素人って、止め時も適当だし、ちゃんとした知識も無いのによ。良いカモだ良いカモ。」
俺が座っていた台は無情にも、他人が座って当たっていた。
俺よりも若いであろう青年達が、笑っている光景に当たり所の無い憤りを覚えるも、退いた時点で俺の台では無いし何も言えなかった。
「…チッ。ガキが、ふざけてんじゃ──」
「ん?」
恨めしそうに睨む視線に気が付いたのか、打っていた青年の一人が俺を睨み返してきた。
無意識に視線を逸らしていた。
さっきまで悪口を紡ぐ俺とは対照的に、視線から逃れる様にその場を後にした。
「何だよ、あの馬鹿が。俺が金を使ったから当たったんだってんだ!糞ッ!」
客観的に見れば、自業自得、賭け事のデメリットを認め切れずに苛立ち、騒いでいるダメな人間。
頭に血が上った状態で俺は更に軍資金を手に入れるべく、近くのコンビニATMに向かった。
──残高不足。
──利用限度額を超過しています。
──利用になれません。
「──…え?あれ。なんだよ、それ。いや、マジかよ。」
厳しい現実。
当たり前の現実。
キャッシングカードは魔法のカードじゃない。
限界はあるし、必ず返さなければならない。
ただ今の事態は絶望的。
支払い前に所持金は八百円。
──…どーしよ。