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時戻り  作者: 河埜和茂
一章「ハジマリ」
3/29

─1─2

──昨日。


「いやぁー…、今日は出る気がする。」



煙草をくわえて俺は意気揚々と、とあるパチンコ店に足を運んでいた。


家での居場所なんて無い。


恋人もいない。


友達だって多くない。



バイト代が入ったその日に、俺は勝負に出た。



「んー。どうしよっかね。どの台にしようか。」



財布に入った給料。


七万。


札が入ってるだけで、何の気無しに強気になれる。



そう、この七万が今日この場所で二倍三倍になっていくんだ。



──…一枚、二枚。


朝一で行った事もあり、みるみる内に札は溶けていく。


働いていた時間を、あの疲労や苦労は軽々と機械に吸い込まれていった。



「チッ。何なんだよ…っ!」



回しても回しても、当たらない。


右手から左手へ変えてみたり、


台の端を叩いてみても、


リールは無慈悲に当たりを呼ばず、金だけを連れ去っていく。



「糞台だ!糞台!やっぱ、パチスロはダメだな。ダメダメだ。パチンコパチンコ。」



財布の中を覗き込むと、まだ四枚ある。


四万。


パチンコで連荘(レンチャン)すれば良いだけだろ。


簡単だ。簡単。


この前だって、逆転で三万勝ちとかあったし。



「いざ、出陣!ってか。」



──…二時間。



「……!」



自分自身でも分かる。

今の俺は目を血走らせて画面に食い付いているであろう。


俺の財布の最後の一枚。


それが今消え去ろうとしていた。



(当たれ!当たれ!当たれッ!)



液晶の中の図柄は虚しくも揃わず、もうゲームオーバーと幾ら持ち手を捻っても玉は出なくなった。



「──…は?」



俺は首を傾げた。



給料日当日。


たかだか数時間で俺は給料を全て吹っ飛ばした。


財布の中を隅々まで見ても、もう何もない。


所持金、八百円。




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