真っ黒なシッポに、水色のリボンを巻いて
キーホルダーを動かして彼は黒猫を釣り込む。
艶々した毛並みの美猫で、水色のリボンが可愛い。
乗って来たが運悪く爪が指に引っかかり、バリッ。
上がった悲鳴に驚き、目の前を横切って逃げられる。
試供品で貰った藤色の絆創膏を貼って顔を上げると、突風が通りがかりの女子高生のスカートを捲り上げた。
ノックアウトされて掴んだ包装紙に、黒猫が目の前を横切ってからの使用で風を吹かせることができる、と書いてあった。
ナニソレ!
手を洗う水が少し赤くなった。
肩が落ちる。
史郎くんの指を引っ掻いちゃうなんて。
史郎くんは犬や猫が好き。
私は喘息だから、いつも獣の毛が付いた史郎くんには近付けない。
棚には透明の吸入薬。
食前に使用する事で猫になる副作用がある。
其の注意書きに気付いたのは、最初に猫になった後。
水色のリボンで髪を纏め直し、マスクをつけコロコロで真っ黒な猫の毛を掃除する。
次こそは史郎くんと仲良くなるんだ、とキュッと拳を握った。