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得手不得手  作者: ゆう
何やら進展があったようです
9/16

残暑と登山と疎外感 後編

やっぱり今年の夏は暑いと思います

怖い話が読みたいです

 風に思い切り目を瞑る。まさか風が吹くなんて思わなかった。意外だ。

 そこで、真人やサラさんたちの呻き声が聞こえてくる。何が起こっているのか知ろうと耳を欹てようとしたが、その前に腕に僅かに痛みが走った。

 ヒリヒリとする腕から想像するに、鎌鼬(かまいたち)か何かだろうか。鎌鼬とはあの有名な妖怪だ。確か構え太刀が訛ったものだと言う説があった筈だ。

 それはどうでも良いとして、何故突風が吹いたのか。

 風の精れいは衰退したのではないのか?

「どないなっとんや」

「分からないけど、でもリンちゃんが心配だよ……」

 サラさんが眉尻を下げて言っているのを、冷めた気持ちで見ている自分がいる。だって俺は風の精れいと知り合いでも何でもないのだから。

 冷静な判断をしなければいけないと周りを見渡した時、明らかに俺たちに対して敵意を持って見詰める奴がいたような気がした。

「倒されたフリ、してもろてもええか?」

 三人だけにしか聞こえない程度で言えば、釈然としないような面持ちではあったが分かったとばかりに三者三様の頷きが返ってきた。



 晴麻の指示は正直なところ意味が分からなかったが、あまりに彼が必死に見えた為取り敢えず従う事にした。

 頭を守るようにして徐々にしゃがめばそれだけで何となく辛いように見えるだろう。思いながらそうすると晴麻が心配したように私の名前を呼び近付いて来る。これも演技だ。

 私は声を出さずに手だけでそれを制し、唇を噛みながら視線は地面へ向けた。

 そんな中、ドサリと何が重いものが落ちる音がする。見ればサラさんを抱き締めながら焔が倒れ込んでいたのだ。これも、演技。

「サラさん……っ」

 苦しさを出しながらサラさんの名を呼べば、彼女と焔の指が僅かに動いた。恐らく問題はないと言う合図だと思う。

 未だに止みそうもない風が肌を傷付けるのに合わせて噛み殺しきれなかったような悲鳴を上げつつ段々と倒れ込んでいく。

 まさか自分にこんな才能があるとは思わなかった。将来役者にでもなってみようか。

 完全に地面に頬が付いたところで晴麻も膝を付いてから地に伏した。私たちの完全敗北、に見える。

 すると、不思議な事に完全に風が止んだのだ。晴麻が息を吐くようにやっぱりかと呟いたのが聞こえ、彼が何かの策として私たちに指示を出した事が分かった。

「精れいが二体いるとは言え、凡人二匹のお守りしてちゃこんなもんだな」

 何処からともなく声が聞こえる。顔を動かさないように薄目で周囲を伺えば、茂みの奥から女性が姿を現した。

 彼女が突風を作り出したのだろうか。だとしたら、一体何の為に?

「うわ。こいつら抱き合ってるよ……。気持ち悪いなー」

 彼女は不摂生な見た目をしていた。髪は途中から千切れたかのようにバサバサで、目の下の隈が酷い。それに、肌も青白く華奢を通り越して病的なまでであった。

 そんな彼女に続いてもう一人、女性らしき姿がある。それを見て、サラさんと焔の二人とも息を飲んだのが分かった。

「どーせ風の精れいの為に来た、とかなんだろーな。友情とか意味分からないっての」

 吐き捨てるように女性が言う。友達がいなかった奴の僻みか何かなのだろうか。醜いと思った。

「気持ち悪いくらい長生きしやがってよ」

 それを受けた二人が悲しみに顔を歪めたのを見て、立ち上がった。図らずも晴麻と同時に。

「それは聞き捨てならんな」

「お前に何が分かるんだよ」

 作戦はおじゃんになってしまったかもしれないが、それでも無視していられなかった。

「うえ。生きてたのかよ……。いや、てか分かる訳ないじゃん? だってお前にも分からないだろ?」

「それは、俺にもまだ分からないけど。お前みたいには思わない」

 目の前の女性に対して湧いた負の感情を全部詰め込んで睨んでやれば、彼女は狼狽えるように視線を逸らした。

「ちょっと聞いてもええかな? お姉さん」

 有無も言わさずニコリと笑って晴麻が問うた。そして、女性が何か言うのも待たずに続ける。

「風の精れい知らん?」

 女性は絶句して一歩後ろに下がった。



 精れいたちがいくら俺の事を真人のオマケだと思っていたとしても俺にとっては仲間らしい、と言う事がよく分かった。

 あの女が蔑んだ瞬間自分で立てた作戦も何もかも無視して立ち上がってしまったのだ。それは真人も一緒だったみたいで、申し訳なさそうにこちらを一瞥していた。

 お返しに罵ることも出来るし言ってやりたい事もあるが、こんな奴に時間を割くのさえ今は惜しい。

 とっとと済ませてしまおうと風の精れいについて尋ねれば分かり易いくらいに動揺して後退した。

「もしかして、そちらさんが風の精れいだったりして?」

 女の後ろに付いて来ていた人物に向けて言えば分からないくらい小さく頷いた。

 と言う事はもしかしたら精れいの暴走や衰退と今回の自然現象は関係が無かったのだろうか。

「だ、としたら、どうするんだよ!」

 聞いてもいない方向から返事が来る。女は開き直ったようにヒステリックに叫びだす。

「あの方に捧げるんだよ! お前ら如きが口出ししてどーなるか分かってんのか!」

 五月蝿い。あまりの剣幕に溜め息しか出ない。

 その態度が気に入らなかったのか、女が風の精れいに命令する。

「ボケっとするな! 早く何とかしやがれ!」

「……はい」

 無理矢理聞かされでもしているのだろうか。だが、その命令が完遂させることはない。

「ボケっとしてるのは、お前だよ」

 真人が女に向かって伸ばした右手、その指が鳴った。パチンと言う音は弾ける泡を連想させる。

 瞬間、女が現れた水の球に吸い込まれた。彼女は訳が分からずに藻掻くが出られない。

 暫く険しい顔をしていた真人がもう一度指を鳴らすと、水は何処かに消え意識を失った女がドサリと落ちてきた。

「これで、良いんだよな? 俺は変な事してないよな? 迂闊な事とかでもないよな?」

 真人がそう言い終わる頃には疲労ではない汗をかいているようだった。心配しなくても恐らく真人が使っていたのがただの魔法か精れいの力か判断出来る程この女は魔法に長けていない筈だ。

「恐らく大丈夫や思うで」

 真人は安心したように息を吐いた。

「取り敢えず、助けて貰った事はお礼を言っておくよ。ありがと」

 男の声が聞こえて振り向く。男なんて助けた覚えがないのだが。

「僕は風の精れい。まあ、風鈴(かざすず)って呼んでよ」

 失礼ながらも女性だと思っていた。そんな事を呟けば、もう一つ別の声が重なった。

 こうして、どんどん俺たちの周りに否真人の周りに精れいが増えていくのか。

ハルも精れいだったら寂しくないのにね……ってふと思いました

気が付いたんですけど

マコっちゃん:科学的な知識と進展

ハル:魔法的な知識と補足

みたいに分かれてる気がします

ちなみにそのつもりは一切ないです


次回、またまた事件が?!

いい加減にしろと嘆くマコっちゃんとハル

乞うご期待です(一行上は多分嘘です

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