最強と無力と終わり
部誌も無事発行されたので最終話掲載です
犯行声明。今まで隠れるように存在してきた世界神教が犯行声明とも言えるものを発表した。それと同時に精れいという存在も世界に知れ渡る事となる。
「とうとう出て来たねぇ……」
作戦会議と称して私たちが集まったのは、本格的に始まりを迎える事となった件の図書館。何だかあれから時間は経っていないのに少しだけ懐かしさが込み上げて来た。
一様に難しそうな顔をする面々、そんな彼らの姿は見えていない。傍から見れば私と晴麻が二人して悩んでいるように見えるだろう。
犯行声明からも精れい狩りみたいな事が行われる訳でもなく、今の所は何の支障があるでもない。それでも表舞台に出て来たと言う事は本格的に動き出すつもりだからだろう、それが私たちの今現在の共通認識である。
「何だっけ?」
「どうしましたか、サラさん」
「いや、彼らの言葉だよ。どんなのだったかなってネ」
そう言えばどんなのでしたっけ、サラさんと冷華さんが頭を捻る。すると思わぬ所から答えが寄越された。
「我々は世界神教、この世界を神とする者たち哉。我々は精れいと呼ばれる自然の力を使い世界を神と崇め奉らん。我々に楯突く者は世界の異分子と排除する所存。だったかと思う」
焔が言えば、そうかと納得する声が上がる。確かそう、そんな感じだったと私も思った。
「うん、そう。そうだったネ」
「それにしても、僕たちの力を使うとかどう言う事なのでしょうか」
「そうなのだよな……。実際、使役らしい使役なんてレイカとヒカリ、ヨルヤくらいしかされてないからな」
尚も話は続く。私と晴麻は無駄に茶々を入れるよりはと先程から黙っていた。晶ちゃんと夜也くんも同様に黙々と本を読んでいる。
空気は緊張を孕んで今にも切り裂かれそうなんて妄想が出来る程にピリピリと意識を突き刺してきていた。
「一体、何が目的なのでしょうね。僕たちをどうするつもりなのでしょうか」
元々世界神教が出て来るだろう事は予想していた。それが引っ張り出されるか自ら出て来るかは置いておくにしても。
私たちと言っても実質他の精れいたちだが、彼らが議題としているのは何が目的かというものだ。目的が分からないのであれば動きようもない。
「ちょっと、ええですか……?」
私と共に黙していた晴麻が、声と共に手を挙げる。
「遠慮しなくて良いよ。どうしたの? ハルくん」
「おおきに、数樹さん。いや、もしかしたらマコっちゃんが目的とか思うんですけど」
私が、目的? 嫌で有り得ないとは思いたいが、それが的を射ている事は分かる。
事実、聞いていた他の精れいたちも成程と晴麻の話に耳を傾けている。
「当たり、でええんですよね?」
問うように言う。
何処に。
「何時カラ気付いていた?」
何処からか聞こえてくる声。男のものとも女のものとも分からない不気味な声だ。
「な、何だ? まさかいるのか! ハル」
焔の切羽詰ったような叫び、新たな気配を感じた。この中で唯一害意を持っているような。
「はい」
瞬間、世界が揺らぐ。
変な気配が増える。暗いのに暗くない、何もない空間の中。
「何だよ、ここ」
返事はない。今まで周りにいた筈の人たちがいなくなっているように感じる。
「コンニチワ、水の精れいさん?」
「知って……!」
「だって、アナタ水の魔法使ってたじゃないデスカ」
そんな事で分かる訳がない、そう思ってはいるが言えなかった。姿が見えない恐怖、正体を知られている恐怖。
「後は、オマエの力だけなんだ」
「まさか、力って精れいの」
そう言えば、空気全体がニヤリと笑った気がした。纏わり付く気持ち悪さ。
「当たり」
真人が消えた。それと同時に先程まであった気配も消えている。恐らく連れて行かれたのだろう。
「クソが!」
いつもなら楽に気配を追えるはずである。それなのに一切が分からない。干渉を受けない所にでもいるのだろうか。
真人が死ぬとは露程も思っていない。他の精れいたちは分からないが、少なくとも俺は。
それでも、信じて待つなんて馬鹿馬鹿しいことはしたくなかった。出来ない事はない筈なのだ。
衝撃が襲う。冷たいそれは、何だか冷華さんの存在に似ている。
次いで、嵐が吹き荒れる。肌が引き裂かれる感覚と何かが体を打つ感覚が同時に起こるそれは、まさに砂嵐だ。
そして、目を焼くような光と身を焦がすような灼熱、神経を焼き切るような電撃。息を吐く暇もなく襲い来る。
細い何かが体を駆け上って、首を絞め上げた。
知っている。この力全てを。
本当に世界神教はこの世界を神にでもするつもりだったのか。私の力で最後。
「成程な……」
痛みに霞がかった脳内で、言われていた事を思い出す。
『マコくんは魔法を使わない方が良いと思うよ』
確か、木の精れいである数樹さんの言葉であったか。それでも使うなら、今しかない。
「分かった分かった」
どうすれば良いのか、分かった。
「お前らが力を奪えないくらいにめちゃくちゃに、使えば良いんだろ?」
魔法のイメージをせずに、ただただ魔力を開放していく。
『日向真人さんは魔力を使えるようになりたいですか?』
私の前世が言った言葉。何となく分かる、あの人の名前はアクさんだ。何だか繋がったような気がした。
その彼女の始まりの言葉。私はそれに何と返したのだったか。
「助けられるのなら」
今なら、もっとしっかり言える気がした。
「皆を、助けられるのなら!」
真人の魔力を感じた。だが、それは直ぐに消えてしまったが。
その唐突さに嫌な汗が背中を滑る。まさか、そんな筈はない。ある訳がない。
「おい、マジかよ……」
「……ハルくん」
俺はあいつを信じている。長年一緒にいたのだから。
どうやら、世界神教は謎の壊滅を果たしたらしい。
知り合いにそれとなく訪ねてみたが、世界神教とは何かと逆に聞かれてしまった。その人だけではなく他の人もそうだったので、恐らくは記憶操作でもあったのだろう。
無様な歴史を残したくなかったとかそんな所なのだろうか。今となっては世界神教等と言う気の狂った連中の事なんてどうでも良いけれども。
「結局、何やったんやろ」
精れいとは普通に今でも連絡を取り合っている。真人が万が一見つかったら連絡をすると。
改めて、友達は真人くらいしかいなかったのだなと感じる。
「何処行ったんだよ、真人」
「ここ」
ここか、後ろから声が聞こえた。
溜め息を吐いて、漸く気が付く。違和感。
「只今、晴麻」
振り返れば、見知った顔。長年一緒にいた親友が何食わぬ顔で立っていた。
「は? どないなっとんねん」
俺の困惑する顔を見て面白いものを見たとでも言いたげにニヤリと笑う彼。
「精れいの力、捨てて来たんだよ。それと世話してきた」
何だか、話をするのが懐かしかった。実際はほんの少しの時間だった筈だけど。
「新しい水の精れいには悪いけどさ、任せて来たんだ。アクって名前にしたんだぜ」
その後、教室で話していた時と同じように二人で談笑した。お互い何があったか、今世界は落ち着いているとか。
世界は平和なのが一番良いのだ。
最近は不得手などないと声高に言えなくなって来ているが、それだけは命をかけて言える。
後、親友がいて良かったとも。
『有難うございました』
シリーズとしてまだまだ続くかもしれないのでその時はよろしくお願いします!




