寝不足と昼夜と戦い 後編
いつも通りバランスが悪い
横にいた人物が変わった。先程まで私たちと対峙していたので困惑した様子で周りを見渡す。私は別に何となく分かっていたので特に気にしてはいないが。
「どうも、こんにちは」
男の肩を叩き挨拶をすれば引きつったような悲鳴が聞こえる。失礼ではないかとも思うがこの際無視を決め込もう。
「それより、良いのか? 光の精れい」
子どもにするように顔と顔を近付けて晴麻たちの方を指し示す。晴麻は催眠のようなものを掛けているようだった。恐らく上書きみたいな事をするつもりなのであろう。両手を左手一つで握り込み、額に右手を当て何事かを呟いている。
「なっ! でもあんな奴にどうこう出来る訳ないだろ!」
男が自らに言い聞かせるように怒鳴る。そこはどうでも良いが、その言い方は頂けない。
「あいつの方がお前より強い。何があんな奴だ? 誰に口聞いてると思ってる?」
そのまま手を握り込めば、変な音が鳴った。肩が外れていようと折れていようと自業自得なのでこっちの知った事ではないが。
「晴麻お兄ちゃん、ありがとう」
「別にええよ。それより男の子も助けたらんとな」
どうやらあいつらからの洗脳を解き終わったようで、晴麻が息を吐きながら少女の頭を撫でた。
「あたしと夜也は相性が良くて悪いから、あたしに任せてくれない?」
少女が瞳にいっぱい自信を詰め込んで言う。特に拒む理由もないし、仲間は多い方が良い。
晴麻がこちらに目配せを寄越したので、頷けば少女は任せてと少年の方を向いた。
「目を閉じて!」
言う通りにすれば直ぐに眩い光に包まれる。瞼の裏ですら眩しい。
それと同時にどうでも良くなったので手を開けば何かが地面にぶつかる音がした。
「目晦ましか!」
目を開けられずにいると、影が差したように暗くなる。何が起こったのだろうか。
「真人兄ちゃん、目開けて良いよ」
少年の声、だろうか。それに言われた通り目を開ければ、普通に教室内が見て取れた。それはもう、目を抑えて蹲っている大人たちが滑稽に見える程度には。
光の力を闇の力で一部だけ相殺でもしたのだろう。何とも器用な使い方だ。
教室から素早く抜け出して校門に向かう。どうやら眩しかったのは教室の中だけだったようで少年がホッと息を吐いた。
外は夕闇。正常に戻ったようだ。
「二人はなんて名前なん?」
「名前? あたしが晶」
「僕が夜也。ありがとね、真人兄ちゃんと晴麻兄ちゃん」
校門を抜けて漸く私たちは大きく息を吐けた。晴麻は夜也の前で指を二回鳴らしている。もしかしたら私が知らないだけで催眠の解き方なんて何でも良いのだろうか?
相思相愛(友愛的な意味で)
次回話が大きくラストに向かいます
乞うご期待です




