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得手不得手  作者: ゆう
結構と大変なようです
13/16

旅行と寒帯と湖

そろそろ物語も佳境に入ってまいります

まだまだお付き合いくださいませえええええええええ

「風邪引いたみたいなんだけど」

「俺もマコっちゃんに同じく」

異常発育事件以来、今度は気温の低下が続いており何処もかしこも風邪を引いた人で溢れていた。

 もう大体予想は出来ている。今度は恐らく氷の精れいとかそんなものだろう。いや、焔の衰退と言う可能性もないわけではないのか。

「マコっちゃんはどう見る?」

「どう見るって?」

「この気温」

 そう言ってニヤリと笑うのは百歩譲ってどうでも良いとして、直ぐに鼻をかむのはやめて欲しい。格好がつかないにも程がある。

「どうもこうも、百パーセント一連の事件の一つだろ。あのラフレシア事件、異界事件、気温砂漠化事件、無風鎌鼬事件、地盤沈下事件、植物異常発育事件の七つの事件の。プレ氷河期事件とでも呼んでおくか?」

「……マコっちゃんって」

 何か言おうとしていた晴麻を睨んで話を進める。何を言わんといていたかなんて手に取るように分かる。どうせネーミングセンスに対してだ。

「氷の精れいが暴走してると仮定して話を進めようか」

「せやね」

 議題はこの再三起こった異常気象について。今までとの相違点は気温の低下。情報は驚くほど少ない。

「マコっちゃん、魔力使ってへんやろ?」

「おう。少しも使ってない」

「それは俺も分かるんやけどな……。じゃあ、何が暴走を起こさせたんやろ?」

「焔みたいに突発的とか?」

 疑問は出るが、一向に解決されないまま。まるで二人で自問自答でもしているようだった。

「いっそ亜寒帯に行こう!」

 どっちからともなく言い出して、私たちはまた旅行することになった。登山用品を買って貰って暫く経たない内に雪山にでも行く気かと親に言われたら言い返せる自身は無に等しい。



 結論を言ってしまえばとても寒かった。亜寒帯ではなく既に寒帯と言っても良いくらいだ。空港から一歩出ただけで息が白いのを通り越して氷の粒になって落ちそうだと思う程に寒い。

 勿論予想済みなので防寒は確りしていたが、まさか用意し過ぎにならないとは思わなかった。

 気温は優にマイナスを超えており、僅かに出ている肌は終始針で刺されているかのようだ。

「おい晴麻。凄く金かかったけどここにいないとかだったら俺凍死するからな」

「投資額が高かっただけに?」

「生き埋めにするぞ」

 ガチガチと歯を鳴らして、ガタガタと体を震わせて会話をする。実際は相手が何を言っているのか聞き取るのは困難だけれど。

 今度も一際寒い所を探すと言うアナログな作戦を取るのだろうか。正直何処もかしこも寒すぎてよく分からない。

「今回も一番寒い所を探すのか?」

 そう問えば、晴麻は緩く首を振った。

「ちゃうちゃう。見とってよ」

 彼が胸の辺りまで上げた右手をパッと開けば一匙分くらいの水玉が現れる。氷点下の中でも固まらずにふよふよと浮き続けていた。

「取り敢えずここの気温を記憶させてその温度より低いとこで凍るようにしてみた」

 それはなんだと尋ねる前に完結に説明される。こいつはこう言うやつだと知っているので無闇矢鱈とツッコミを入れる気にもなれないが一言だけ言ってやりたかった。

「万能か」



 水は別に場所を教えてくれる程便利な訳ではなく地道に歩き回る。ただ、少しの気温の変化でも分かり易く反応を示すため、調査がそこまで難航する事はなかった。でも方向を示す機能くらいは付けて欲しかった。

「こっちの方で良いんだよな?」

「合ってる思うけど」

 あれから北西の方向らしいと言う事になり、それに従って進んでいる。北西は、北を向いて右手を前に真っ直ぐ左手を横に真っ直ぐ伸ばした丁度間くらいだ。ちなみに方位を覚えるには北東南西の順に一二三四を当て嵌めてそれで天気図を書くと良いと思う。

「それにしても、何か森に入ったみたいなんだけど」

「霜で真っ白やな……」

 何処も緑と白ばかりになっている森の中を進めば進む程水は中まで凍っていくのが見ていても分かった。徐々に白混じりから透明になっている。

「感覚共有せんかったら良かったな……。余計寒いわ」

「え、馬鹿だろ」

「……場所も何となく分かっとるし、これは消すで」

 若干応えたような声音で言う晴麻に一回頷いた。空気は何となく澄んでいっているような気がする。それと共に何となく空気が鋭くなっているような感じもする。

「……これって、湖?」

 そんな中、現れたのは湖だった。湖と言っても余り大きくなく、ヒッソリと寂しげに存在していたけれど。

 水は凍り付いていた。恐らく底の底まで。

 そして、そこには少女と男性の二人が既にいた。湖の向こう側に。

「あ? んだよこいつら。何とかしやがれ」

 私たちに気が付いた男が少女に向かって言う、否命令する。彼女は機械のようにコクリと頷いて私たちに視線を寄越した。

 来る。

 私たちは同時にそこから跳ぶ。漫画みたいに行く事はなかったがそれでも何とか避け切ったようで、先程まで私たちがいた所は凍り付き干からびていた。恐らく植物の中にある水分を凍らせたのだろう。

 どちらが先とかもなく同時に反対方向に走り出す。少しでも撹乱しようとしてだ。

 相手はどっちを的にするかと私たちを交互に見る。その間にも私たちの距離は着々と縮んでいく。

「動かんといてな」

 そう言って唇を舐める晴麻は宛ら悪人のようであった。二人は言葉に縛られるようにそこに縫い止められたまま。

「あ、あとそこの男は眠っといて」

 晴麻が距離を詰めながら言えば、やはり男は意識を失った。それでも体は硬直したままだったが。言霊の恐ろしさを見た気がする。

「なんや、自分の事や思うたんか。自意識過剰やな」

無事に湖の反対側に着いてから晴麻がそう言った。少女は命令する人が気絶してしまったからか何なのか、特に何もしてこない。私は晴麻の言霊のせいだと思うが。

「あ、動いてええで」

 晴麻が少女に向かって言った。すると少女の体を拘束していた何かがフッとなくなるのを感じて、彼女が居住まいを正した。

「取り敢えず、大丈夫ですか?」

「あ、はい」

 命令を聞いていた時の無機質さはなかった。変わらずに無機質のような印象はあるが、何処か氷に似た冷ややかさと言うだけである。

 ペコリと頭を下げるのを見て、礼儀正しいと思った。まあ普通にやる事だとも思うが。

「えと、もしかして操られてたとか……ですか?」

「話が早くて助かります。ありがとうございます」

 彼女が語るには、訳の分からない術式をぶつけられてそうなったと言うのだ。また、あいつらだろう。

「真人さん、晴麻さん。本当に助かりました。感謝してもしきれないです」

 この気温については後で焔さんに何とかしてもらいます、そう言う彼女の笑顔はとても怖かった。何とかしてもらうで合っているのだろうか。

「そこまで言われる程の事はしてませんし、そもそもやったのは殆ど晴麻なんで」

「いえ、感謝しています。私は氷の精れい。ですがそう呼ばれるのは不快ですので冷華と呼んでください」

前置きはどっちかと言うと次回以降の事ですね

そう言えば晴麻が早々にチートじゃなくなったのは私も予想外でした


次回!溶けていく謎、歩みを止めない締切!

この締切は、加速するなああああああああああああああああああああああ!

……乞うご期待です(真顔

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