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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

実験の代償は…

作者: 黒助さん

駄文で申し訳ありません……。

 うす暗い部屋にベッドが一つ、その上にはライトが設置されている。部屋の端には机があり、その上では様々な紙(いや、ここでは資料と言うべきだろう)が積み上げられ、そのうちの数枚は地面に落ちていた。それ以外に注目すべきものといえば、周りに人よりも大きいカプセルみたいな容器があるということだ。病院の手術室を連想させるようなその部屋に、一人、椅子に座りながらうずうずしている男が居た。

 その男は、数ヶ月くらい、洗ったり、切ったりせずにいたような、ボサボサとした髪で、体は痩せ細っており、目……いや、顔全体に生気が無い。しかし、それでもうずうずと何かを待ち望んでいるようだった。というのも、彼は将来を期待された学者、研究者にしか着脱衣の権利がない、白衣を纏った科学者であるからだった。彼は何かの研究をし、実験し、調べた『結果』を待ち望んでいるのだ。しかし、彼の目の前にあるのはベッドに横たわった一人の少女だ。……いや、良く見ると少女の姿をしたロボットのようなモノ(・・・・・・・・・・)だった。

 機械の心臓の鼓動が、その男の心臓の鼓動とタイミングが一致するという、ありえないような偶然が起きた時、その機械少女は目を覚ました。目蓋を開け、カメラの仕組まれた眼球が露わになる。その瞬間、彼は今まで研究した日々を思い出し、目から頬を伝う心の汗を流した。



                 *



 私の娘が死んだ。

 いや、正確に言うと車に撥ねられ、その後死の淵を彷徨うという最悪な『結果』が生まれたというべきか?まあいい。しかし、「そろそろ死にます」と医者ロボットが言っていたのを覚えている。だから、最初に言った通り、娘は死ぬことになるだろう。現実(それ)は私を、私の精神(ココロ)を簡単に壊すよな地獄だった。しかし、それは肉体的な損傷であり、それに加えて脳はまだ無事である。その事実は私にとって、地獄に垂れる蜘蛛の糸のような救いだったが、それでも掴められるかもしれないという希望があった。

 今の時代はロボットが普及され、ロボットが人間と同じように学んだり稼いだりが日常的だとされる時代である。これを利用する私の研究がここから始まったのだ。

 まず、娘を私専用の研究施設へ持ち出し、脳だけを取り出す(・・・・・・・・)。この時代はとてつもなく便利だ。脳だけを(・・・・)生かせるカプセル(・・・・・・・・)が研究所で開発され、研究によく使われているからだ。そのカプセルにゆっくりと脳を入れると、元々入っていた赤く透明な色の液体が少し跳ねる。これが脳を生かす液体だ。

 その後、体をもう一つのカプセルに入れる。腐らせないためだ。娘の顔、髪、体、そのすべてを保存する。後にアンドロイドという人間に似たロボットを、娘の体の形にさせ、()を造るためだ。

 ここまでくれば分かるだろう。そう、娘の脳を、アンドロイドに移植させることにより生きながらえるようにするためだ!

 しかし、それには一つ、大きな問題があった。

 それは、脳自体の移植という研究の『結果』が全て【DEAD】という悲しい過去があるため、打ち切りになったということである。

 実績のない移植はとても危険で、脳自体を傷つける危険性がある。だからこそ、私の大きな研究が開始されたというべきなのだろう。私は脳の移植を動物を使って開始した。

 私の研究室の倉庫には役立たずのゴミ共(ロボット)が腐るほどある。それを組み立てなおし、いろんな考察をし、実験動物の脳を移植させる。が、ことごとく失敗した。なにがいけなかったかこれまた考察し、予測し、資料にまとめる。それの繰り返しが娘のためになると信じて…。

 動物を殺しに殺し、吐き、それでも研究を続けた。しかし、それも慣れてしまえば問題は無くなった。そして、こうも思い始めた…実験【動物】だからダメなのでは、と。……そうして百余人もの子を殺した。ここ最近では孤児の子が多く、私はその子らを研究の実験材料として使わせてもらったのだ。嫌になったさ。でも、娘がそれで生きれるならばと、私は子供たちの頭にメスを入れたのだ。研究所には実験動物とは比にならないような断末魔が響き、私は何日も何日も何日も何日も悩まされ続けてきた。

 その中でも、娘と同じ歳の女の子を実験台に寝かせメスを入れる時、どれほど苦悩したことか。まるで娘を実験材料として使っているように思えて手が震えたのだ。それでも、本物の娘は後ろにあるカプセルの中(・・・・・・)にいる。娘を救いたければ更に研究に励むのだ。そう自分に言い聞かせ、メスを入れた。

 …気付いたら、この研究室は鉄の臭いと赤黒い壁と床で、空気も、雰囲気も、服も、何もかも汚れてしまっていた。私の手さえも…。

 だが、それも今日で終わりだ。

 百余番の子の脳移植に成功したのだ。その資料を基に、私の娘をあのアンドロイドに移植させる。神経を繋ぎ合せ、手足を動かせるようにし、娘をアンドロイドに変える。それは少し辛いものがあるが、娘が生きるのならば…と、私は移植させた。



                  *



 そして、彼は待ちに待った瞬間に歓喜し、感動した。頬を伝う涙はとめどなく流れ続け、手では拭いきれなかった。少女は目をあちこちへ移し、現状を把握しようとする。その時、ふっと眼に映った男の姿に少女は、驚き、安心した。ああ、お父さんだ、と。


「お……父………さ……ん?」


 か弱く、機械的ではない少女の声が、男の鼓膜に音の波となって響く。


「……っ! ……ああ……お父さんだよ……?」


 息を呑み、優しい顔で自分の娘に微笑んだ。その顔には、いつの間にか生気が戻り、父親の顔のそれになっていた。しかし、長いことこの研究室にいたせいか、声がガラガラにもなっている。


「ふふ……お父さん、変な声」


 そう言って、少女も微笑み、少し笑った。男は少し戸惑いながらも、頬を人差し指で掻いて笑い、溜息を吐くように呟いた。


「え? ……あはは、少し、頑張ったからね…。」


 こうして、彼、織巻(おりまき)博士の研究の『結果』は成功したということだ。後の医学等に大きな影響を与えたのは、言うまでもない。

























 ――――――――――その時だった。

 一つの光が一瞬で動き、光の道を残しながらその男の腹へと消えたのだ。織巻博士は何事か分からず、その異変にただただ驚く。が、その顔が苦しくゆがんだ顔になると、腹を押さえ、床に倒れた。その光は光源ではなく、反射によるもので、それは織巻博士の腹に深々と、そして抉るように突き刺さっていた。織巻博士は呼吸を必死でしつつ、それを刺した犯人を見る。その顔は、光で半分しか見れないが、光が見えない様な暗い目を見開き、口元は歪んで、笑っているように見える。彼女は、あの実験の最後の犠牲者だったのだ。博士は汗が一気に噴き出て、額に張り付いた髪の毛が邪魔で見えないが、それでも娘の顔を見たいと思い、目だけを動かす。そこにいたのは、とても美しく、愛しい愛しい、しかし、顔を歪めて泣く娘の姿だった。


 とある町の大通りには、たくさんのロボットやアンドロイド、そして人が歩き、先を急いでいた。というのも、今は早朝の通勤ラッシュの時間帯であるからだ。そんな大通りには、大きなテレビで有名な通称テレビビルがある。そのニュースを見て行く学生やサラリーマンが多く、一応需要はあるビルだ。それにより、客足も手に入れている。しかし、そこではなくそのビルに映し出されたニュースに注目してもらいたい。見出しはこうである。


   『織巻(おりまき)博士、死亡』


 内容は、

 織巻氏は昨晩、自身の研究所前にて何者かにナイフで腹部を刺され、搬送先の病院で亡くなりました。えー、犯人は未だ見つかっておらず、ロボ警察は警戒レベルを3に上げることにしました。しかし、警察の調べによると、研究所の中には夥しい数の死体が放置されており、織巻氏と関係があるとみて詳しい調査が行われています。

 というものだった。


 結果を追い求め、殺人を犯したこの科学者の末路はたった一本のナイフにより殺されたのだった。果たして、これはハッピーエンドなのか、それとも、バッドエンドなのか。それを知るもの、考える者はいない。

誤字脱字誤文等の指摘も待っています。

読んで下さり、ありがとうございました。

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― 新着の感想 ―
[一言] 救われない話ですね…。 しかし、このようなバッドエンドは個人的に好きです。 動物や罪のない子供達も手にかけてしまった博士が殺されてしまったのは果たして必然なのでしょうか。 良作を拝読させて…
2011/12/11 15:18 退会済み
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