4・開けた茂み
遅くなってすみません…
視界すべてが枝だらけ。
身体を動かせばガサガサという五月蝿い音が、たくさんの葉や枝と共にまとわりついてくる。
様々な物が、紗介の動きを妨げている。
(あ~こんちくしょ~…邪魔くせぇ…)
内心そう零している紗介の右腕は、もう何度腰の刀に伸びたことか。
視界すべての枝を一気に薙ぎ払いたい。スッキリと。
しかし、澪那とどれほど離れているかわからないこの状態でそんなことをすれば、
下手したら澪那さえ真っ二つだ。
「くそっ、腹の立つ枝だな……おい澪那ぁ~、何処いやがんだよ~…」
「呼んだ?」
「あぁ…って、うおおぉぉうっ??!」
いきなり目の前に現れたのは、深い海のような色合いの青い瞳。
澪那だ。
未だドキドキとなっている己の心臓を叱咤するかのように胸に手を当て、思わず刀へ
伸びた手をなんとか止めると、ヘナヘナとその場にへたり込んだ。
心の底から、身体の言う通りに刀を抜き放ち斬りかからなかった自分を誉めたいと
思った紗介である。
「……ったく・・」
心臓に悪いぜ…とまでは言わなかったものの、それはどうやら澪那に伝わったようだった。
ペロ、と小さく舌を出し、苦笑いして紗介に謝る。
「あは、ごめん。
紗介ったら遅いんだもの、戻って来ちゃったわ。」
「そらスイマセンでしたね…
…ってちょっと待て!あのチビ蛙はどうした?!」
今のところ唯一の手掛かり(となるだろうもの)を、自分の所為で
逃がしたとなってはもの凄く後味が悪い。
紗介は慌てるかのように澪那に尋ねれば、澪那はにこっと笑って
「嘗めないでって言ったじゃない」と得意気に言った。
紗介はその訳がわからず、「大丈夫なのか?」と再び尋ねると…。
「『澄霞』に後を追わせてる。」
と言った。
しかし、そのあと少し顔を顰めて「でも、そろそろ急いだ方が良いかも」と
更に続けたのだった。
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「こっちよ。今度はちゃんと付いてきて。」
「おう!
……ってオイコラ!帯掴むな引っ張るな!!走りにくいだろうが!!」
「五月蝿いわね!さっき遅れてきたのはどこの誰?!」
……仲良く喧嘩をしながら草を掻き分けて進む2人であった。
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ガサッと言って、いきなり視界が開けた。
かなり広い場所で、そのまわりを生い茂った木々や草が取り囲んでいる。
風がどこからか通っているらしく、さわさわと心地よい梢の音が聞こえてきた。
「………すごい、良い所ね・・・。」
「………あぁ。」
二人の口からそれぞれ感嘆の声が上がった時だった。
“誰ぞ……”
どこからか、低くくぐもった声が響いたのだ。
瞬間的に2人は各々の武器に手をかける。
紗介は腰の刀の柄に。
澪那は懐へ。
低い声はまた、言葉を紡いだ。
“誰ぞや……我が領域に踏み込みし者は……”
「…私の名前は観音。
ただ、珍しい蛙の後を追ってきただけよ。」
澪那が偽名を使って答え、名乗る。
術者は己の名前を簡単には教えないとされている。
なぜなら、名前は己の術の要のようなものだからである。
名を知られれば、簡単に術が解かれてしまうし、逆に返されやすくなってしまうのだ。
“……名を教えると言うことは…何かの術者ではないのかや…?”
低い声が、なにやら考えているのかそう呟いた。
ピリピリと、空気や木々がざわめいていた。
大体のお話は組んであるんですがね……
もうどうやって書いていこうか、悩みまくってます……