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006 没落令嬢の最初の決心

今回、ちょいグロです!

苦手な人は注意してね。

「ウォルクに銀貨を上納させている山賊の討伐、ね。本当にあんなやつと交渉してよかったのか。あの場で殺しても良かったんだぞ」

「それはそうかもしれないけど……でも、街の人を放ってはおけないわ」


 街ひとつを丸ごと詐欺に沈めていた男、ウォルクと話をした数時間後。

 街道から外れた森の中を切り拓きながら進みながら問うソルドに、その後ろをついていくステラは少し言いよどみながら応えた。


「ウォルクを懲らしめても投資した銀貨が戻らなかったら街の人たちは幸せにならない。ムカつくけどあいつの言い分にも一理くらいはある」

「拷問すれば銀貨の在処を吐いたかもしれん」

「……とにかく、やると決めたんだから。それに街の人にとって山賊が脅威なのも事実。あなたはわたくしを守ってよね。契約通り」

「はいはい。お嬢様の仰せのままに」


 頑なな没落令嬢に背中を小突かれたサイボーグは (貴族の責務(ノブレスオブリージュ)ってやつか? 現に没落してるんだから気にするだけ損じゃないのか)などと心中で呆れつつ、ぴたり、と脚を止めた。


「ど、どうしたの?」

「荷馬車の跡だ。このボロいブーツの足跡から察するに、ウォルクを脅しているとかいう例の山賊だな。商人でも襲ったか、あるいはヤツから上納される銀貨を運んだのかも」

「この暗がりでよく見えるわね……」

電子義眼(サイバーアイ)の輝度を調整しただけだ。あんたには見えていないんだったら、ウロウロして痕跡を踏み潰すような真似はするなよ」

「分かってるわ。バカにしないで」


 とか言いつつ、ソルドはだんだんと背中に近づいてくるステラの気配を察してため息をついた。


 本来、彼女には街に居てもらう予定だった。

 今からならず者の居城に乗り込もうという時に、ロクに自分の身を守れもしないステラの存在は邪魔でしかないからだ。


(まあ、妙な依頼人(クライアント)を相手にするのは今回が初めてじゃないしな……多少なりとも対策はしてあるのだし)


 自分に言い聞かせつつ、ソルドは薄暗い森をどんどん進む。


 人間は活動しているだけで多くの痕跡を残す。

 その点において二二九九年の義体化した人類とこの妙な世界の山賊の間にさしたる差は無い。

 サイボーグは足跡、木々の折れた痕跡、獣道、あちこちに残された血液や汗の成分、人間の運動能力から逆算したルート予測などを駆使し、山賊のアジトまでの道のりを辿っていく。


「ねえ本当にそこを登るの?」「そこの段差、わたくしでもちゃんと跳べるんでしょうね」「ひっ、あんなところに鹿の死体が……」

「オーケー、俺が悪かったよ」


 途中からはあれこれ騒がしい没落令嬢の手を握ってやりつつ、気がつけば一時間ほど森を進んだ時だ。


「止まれ」

「こ、今度は何?」

「人間だ。連中の拠点を見つけた」


 最初にソルドの電子鼓膜が人間の会話らしき波長をキャッチした。


 慎重に進むと森の中に少し開けた場所があり、キャンプ場で貸し出しているような二階建てのコテージが建っているのが見えた。

 茂みの陰から電子義眼の望遠機能で観察した結果、見張りはあまりおらず、動物の皮をなめしていたり、戦利品の分別を行っていたりする下っ端山賊がコテージ周辺で各々活動しているようだった。

 ソルドは電子義眼を熱探知(サーモセンサー)モードに切り替え、それぞれの山賊にタグ付けをして視界にハイライト表示させていく。


 数分後、山賊拠点のおおよその人数や構造を理解したソルドは背後でずっと押し黙っていたステラの方へ振り向いた。


「……さて、大体の状況は把握できたがどうする」

「どうする、って……?」

「山賊を討伐して来いとのご用命だが、何も馬鹿正直に言うことを聞く必要はない。討伐の証拠だけでっち上げて、あの山賊どもは生かしておく手もある。そうすればウォルクに一杯喰らわせてやることもできると思うが。でなければ、最初の手筈通りだ。あの山賊たちを討伐する」

「っ……」


 その言葉で、ステラはソルドが何を最終確認しているのかを察した。


(つまり、この悪魔はわたくしの号令一つで殺戮(さつりく)を行うと言っているのです)


 山賊と言っても元から悪人だったものばかりではない。

 それこそ自分のように落ちぶれて没落した結果、悪人としての道を選ばざるを得なかった者もいるはず。


(……いいえ、わたくしは復讐を行うと決めたのです。しっかりしなさいステラ・ホライソニア・ウォルムハルト!)


 濡れ衣で処刑された父と母の名誉を回復するため。

 ウォルムハルト家を陥れた犯人を突き止めるため。

 そのためなら、何でもすると決めた。


(わたくしは悪魔に魂を売ったのです。既にこの手は汚れている……!)


 言うなればこの号令が、その最初の一手となる。

 息を吸って、吐き、ステラは決心した。


「……言ったでしょう。山賊は街の人に迷惑をかけている。ウォルムハルト家の名の下、これを討伐することはお父様とお母様の名誉回復にもつながるはず」

「なら」

「ええ。悪魔ソルドよ、山賊の討伐を命じますわ」

「了解」


 少女の決意の重さとは対照的に、サイボーグはあっさりと命令を受け入れて立ち上がった。


「じゃ、あんたはここに居ろ。心細いかもしれないが、下手に前に出たら余計に危険だ。全ての山賊を討伐し終わったと確認したら戻ってくるから、例え虫にたかられてもそこを動くんじゃないぞ」

「め、滅多なことを言わないでよ! 言葉にして、本当に虫がいっぱい来たらどうするの!」

「それもそうだな、すまん。じゃあ行ってくる」


 ふぅ、と短く息を吐いたソルドは端的に宣言し、茂みの中を移動し始めた。

 念のため、侵入位置からステラの居場所を察知されないようにするためだ。


(コテージの裏手……ここから始めるか)


 侵入位置を定め、作戦開始。


 まずはコテージの横で動物の皮をなめしていた一人の背後に近づき、その首を手折った。

 義体化済みの腕力をもってすれば、素手で人間を絶命させることなど容易い。


 続いてその奥で薪を割っている山賊。

 これも首を絞め折り、落ちていた斧を拾い上げる。


(とりあえず二人排除、あとは……)


 ソルドがちら、と背後を見ると、地面に戦利品を広げて整理していた山賊のうちの一人が違和感に気づいたようで、怪訝な顔をしているのが見えた。

 広げた戦利品の中には、よく見れば、人間の女の死体が寝かせてあった。

 ひどく殴られたようで顔が潰れている。小奇麗な身なりから察するにどこかの商人の娘ってところだろうか。年齢はおそらく、ステラと同じ十六歳程度。

 こだわっているわけじゃないが、と自分に言い訳しつつ、サイボーグは少し笑った。


「お前らが分かりやすい下衆で助かった。俺の依頼人(クライアント)も、これなら枕を高くして眠れるだろうさ」

「おい! お前やっぱりよそ者だな!? そこでなにをし」


 ズドッ、という音が言葉を中断する。

 騒ぎ出した山賊の脳天を、ソルドが投擲した薪割り用の斧がかち割ったのだ。


「なっ!? て、敵だ! 敵が来た!」

「そうだ。仲間を呼べ。全部だ」


 サイボーグは近くに居たもう一人の山賊が騒ぎ出すのを待ってから、義体化(エンハンス)済みの脚力による跳躍を交えて一気にその懐まで接近し、暴力のリミッターを外したアッパーカットで顎ごと中枢神経を破壊する。


「テメエ! 何してるか分かってんだろうな!?」


 騒ぎを聞きつけ、コテージの中から数名の山賊が姿を現して吠えた。


「は、え? テメエ、一体、何をぶっ」


 直後、その中の一人は死の間際に信じられないものを見た。

 素手で死体を悠々と持ち上げる男。

 そして首を折られて死んだ仲間の死体が、高速で自分に向かって飛んでくる光景を。


「ひっ、ひいいいいいい!?」

「自分が何をしているか、もちろん理解している。だから拠点内の仲間は全て呼んだ方がいい」


 ソルドは仲間に訪れた突然の死に怯える山賊にもちゃんと聞こえるように言いつつ、足元の死体の脳天に刺さりっぱなしの手斧を引き抜いて、付着していた血液と脳組織をわざとらしく払った。


「俺はお前たちを皆殺しにするよう命じられている。俺を殺さなければ、死ぬだけだぞ」

電子記憶(ローカルライブラリ)

ソルドの頭の中にある、電子的な記憶領域。要するに人体に搭載されたUSBメモリみたいな感じ。いろんな資料が記録されていて、検索もできる。もちろん動画とかも入るし、見れるし、他の人からはバレない。便利だね。


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読んでいただきありがとうございます!

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