④ 交流
帝がカグヤ邸を去った後、彼女の義父の使者から、一通の手紙が届けられました。
それは、カグヤから帝に宛てられたモノでした。
手紙の内容はこうでした。
「陛下がこれ以上、強引に私を、宮中に召し抱えようとなさるなら、私は自ら命を絶ちます。」
そこで帝は良く考えました。そしてカグヤに宛てて、以下のような手紙の返事を書きました。
「先日は、そなたの美しさについ夢中になり、そなたの気持ちも汲まずに、強引なことをして済まなかった。今後は手紙のやり取りで、歌の交換などをして、そなたと心の交流を深めたいが、それで如何だろうか?」
帝の使者から、手紙の返事を受け取ったカグヤは、少し考えた後、また手紙を書きました。
「早速のご返答、ありがとうございます。文通による歌の交換。イイですね。是非お願い致します。」
こうして、帝とカグヤの、歌のやり取りによる交流が、スタートしたのでした。
その一部を以下に紹介します。
帝の歌。
「かえるさの 行幸物憂く 思ほえて 背きてとまる かくや姫ゆゑ」
(行幸からの帰り道は とても寂しく思えて 振り返っては立ち止まってしまう 私の命令に背いて そこにとどまる カグヤ姫ゆえに)
カグヤの歌。
「葎はふ 下にも 年は経ぬる身の 何かは玉の 台をも見む」
(わびしい葎が 生える様な所で 過ごしてきた私が どうして たま光り輝やく 御殿を見ることができましょう)
こうして二人は、少しずつ互いに、心を通わせて行ったのでした。
カグヤはチカラを持った異端者として、帝は孤高の権力者として、それぞれが胸に孤独感を抱えており、次第にお互いにシンパシーを抱くようになりました。そして最後には、お互い心から、憎からず思える間柄になって行きました。
それからあっと言う間に、三年の月日が流れました。
今日も自室で、カグヤが帝への手紙を書いていると、突然目の前に、青白い人の姿が現れました。
それはかつての、彼女の故郷の同胞が送ってきた、立体ホログラム映像でした。
その映像には、以下のような音声も、付けられていました。
「カグヤよ。帰還の時は来た。三日後の十五夜の深い晩に、我々とともに、月の裏側の前線基地に集合し、そこから同胞たちの待つ、ケプラー星系に旅立つのだ。」
メッセージを伝え終わると、その映像はフッと消えてしまったのでした。
カグヤは急いで、書いていた帝へ手紙に、今知った件について、書き足しました。
そして、もしも月に行く事になれば、ここでの生活の記憶は、すっかり失ってしまうことになる旨も、付け加えておきました。
彼女としては実のところ、故郷の星に戻るよりも、地上に留まって、お世話なった義父母の老後を見守りたい…というのが本音でした。
手紙を受け取った帝は、早速強力な弓矢を放てる、多くの優秀な兵を集め、カグヤ邸の回りの警備を固めたのでした。
そして瞬く間に、それから三日後の、夜がやって来ました。




