③ 行幸
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最後の求婚者は、中納言石上麻呂でした。
カグヤから彼に要求されたモノは、"燕の産んだ子安貝"でした。
中納言は、大炊寮の大八洲という名の、大釜が据えてある小屋の屋根に上って、その子安貝らしきものを掴みました。しかし次の瞬間、脚を滑らせて転落し、腰を打ちました。しかも掴んだのは燕の古い糞であり、貝は無かったのです。
彼はそのまま、体調が良好になる事は無く、もちろんその後カグヤの前に、姿を見せる事も叶いませんでした。病床の彼の事を不憫に思い、カグヤが短歌を送ったとか、送らなかったとか…。
このように、カグヤの出した無理難題を、こなせる者は一人もおらず、絶世の美女との評判はそのままに、彼女は相変わらず、独り身のままなのでした。
そんな或る日、時の帝…つまり天皇の耳にも、美しいカグヤの評判が届いたのです。
帝は、ひと目カグヤの姿を見たいと所望し、使いの者を、田舎の老夫婦の元に送り出しました。
しかし、何度入内するよう促しても、カグヤは一向に、首を縦に振らないのです。
ある使いの者は、老夫婦に対して、カグヤを差し出すのと引き換えに、官位を与えるとまで言って、誘いをかけました。
それでも、カグヤ本人の意思を尊重する老夫婦は、彼女の入内の誘いを、断り続けたのでした。
そうこうするうちに、シビレを切らした帝は"田舎に鷹狩りに出かける"という名目で、供の者を引き連れて、とうとうカグヤの自宅前までやって来たのです。
庭先からカグヤをひと目覗き見た帝は、すぐに連れて帰りたくなり、二人の従者を迎えに行かせました。
老夫婦の制止を振り切って、突然、自室に乗り込んで来た帝の従者たちに、カグヤは大層驚きました。しかし相手が相手だけに、むげな扱いもできません。
二人の従者に両の手を掴まれたカグヤは、とっさに、掌から衝撃波を出しました。二人はナニが起こったのか理解不能のままに、開け放たれた障子の向こうの庭先まで、すっ飛んで行きました。
庭の向こう側では、その一部始終を帝がご覧になっていました。そんなことがあったにも関わらず、寛大な御心を持った帝は、一旦は引き下げられました。
何と摩訶不思議なチカラを持っているお方なのだ。例え彼女が魑魅魍魎だとしても、ますます側に置いておきたいことよ。帝は益々、そうお考えになるようになりました。




