② 挑戦者
カグヤは石作皇子に大層失望しました。
彼女が怒りに震えて俯いていると、皇子が自らのミスを執り成そうとして、その肩にそっと触れました。
しかし次の瞬間、カグヤは右手の人差し指一本で、彼を跳ね飛ばしました。
もんどり打って、奥の襖とともにグシャグシャになった彼に向かって、カグヤは言いました。
「印度にある、世界に一つだけのモノを約束したのに。抜け抜けとニセモノを持って来おって。この無能な輩め。二度とわらわの前に、顔を見せるでないぞ!」
石作皇子は、まるで鬼のような、カグヤの剣幕に恐れおののき、這々の体で逃げ帰って行ったのでした。
次にやって来たのは、車持皇子でした。
カグヤが彼に要求したのは、蓬莱山という中国にある幻の島に行かなくては手に入らない、銀の根・金の茎・白玉の実をもった枝、その名も"蓬菜の玉の枝"でした。
車持皇子は一計を案じ、工匠らと共に、コッソリと偽の玉の枝を完成させました。
彼はソレを持ってカグヤの前に現れると、幻の島での苦労話を、マコトしやかに捲し立てました。
その話しぶりは真に迫っており、カグヤも、コレはホンモノかと、観念するほどでした。
しかし、そんな会見の場に、ニセモノを製作した工匠らが、未払いの給料の支払いを求めて押し寄せ、不正の全てが露見したのでした。
「何より私は、ウソやニセモノが大嫌いなのです。」
そう言うとカグヤは、またも裏切られた事に憤慨し、車持皇子を左脚のつま先だけで、遥か彼方まで蹴り飛ばしました。
三番目にカグヤの前に現れたのは、右大臣阿倍御主人でした。
彼には、カグヤから"火鼠の皮衣"が要求されました。
そして彼もまた、ズルい手を使う事を考えました。
彼は唐の商人から"火鼠の皮衣"を購入したのです。この衣は本来燃えないはずでしたが、受け取ったカグヤが、試しに火をつけてみると、ソレは見る見るウチに燃えて、灰となったのでした。
「アナタは浅はかなことに、自分自身での努力を怠り、商人からニセモノを掴まされたのですね?」
そう言うと、呆れたカグヤは、右大臣を追い帰しました。
彼は前の二人が、怒った彼女に突き飛ばされたり、蹴り飛ばされたりしたことを聞いていたので、何も弁解せず、そそくさと素直に帰ったのでした。
四番目にやって来たのは、大納言大伴御行でした。
彼には、"龍の首の玉"がリクエストされました。
大納言は、まず龍を探すために、真面目に船で出かけました。しかし途中で嵐に遭い、更に重病にかかったせいで、両目は二つの李のようになってしまいました。
そして結局、玉を手に入れる事は敵わず、泣く泣く帰国の途に着いたのでした。
もちろん彼も、その後カグヤの前に現れる事は、叶わなかったのです。




