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第1話 財力

 この世界に来てから10日。

 なんとなく生活には慣れてきて、私はリージナル家の屋敷に籠って考え事をしていた。


「国家転覆を狙うならまずは財力‥‥‥商家の娘に生まれたことが吉と出たな」

「急に何言いだすかと思いきや、国家転覆!?犯罪だぞ!?」


 もちろん、幼馴染のキレンと共に。

 

 彼は男爵の長男らしい。

 つまり、本来ならば平民の私が会うこともできないはずの存在。

 それなのに、何故か「リセア・リージナル」は平然と彼と遊んでいた。

 何かしら理由でもあるのだろう。

 

 ま、それは何でも良い。

 そんなものに興味は無い。


「財力を身に付け、次第に王国の権力を掌握していく。地道だが、悪くない作戦だ」

「あと最近、口調変わったな!?」

「何を言っている?私の口調は元からこんな感じだ」

「嘘つけ―!そんな訳無いだろ!」


 この男は、私の口調が気に食わないのだろうか。

 とてもじゃないが、少し傷ついた。


 なので、思いっきりの可愛いボイス?とでも言うのだろうか?を披露してみた。


「じゃあ、こうしゃべろとでも言うのかしら?」


 キレンは赤面して遠のいた。


「なんだよ急に!?気持ち悪い!」


 私は彼が移動した位置まで膝を進める。

 そして顔を近づけて言った。


「君が私の口調を嫌いだと言ったから変えたまでだ。君のせいだ」

「‥‥‥」


 彼は固まったままだ。

 話を進めるにはちょうど良い状態なので、私は早速、財力を手に入れるための作戦を語りだした。


「財力には商品開発が重要だ。よって、今から紙を作る!私は商家の娘だからな!」


 見たところ、この世界に紙はまだない。

 羊皮紙を使っているのだ。


 高価な羊皮紙に比べ、植物の繊維からできた紙は安い。

 つまり、紙が完成すれば表記手段の革命だ。

 大儲け確定ではないか!


「君も協力するのだ、キレン!収益の一部は渡す!」

「なんでえ!?」


◇◇◇◇


「‥‥‥想像の数百倍簡単にできてしまったな」

「オレ、必要だったか?」


 流石は商家、というべきか、必要な機材はすぐに揃った。

 作り方は覚えていたので、ほんの数日で上質な紙が完成してしまったのだ。


「お父様に見せてみるか。販売先をどこにするかの議論なども兼ねて」

「そういや、なんでしれっと10歳の子供が商売しようとしてるんだよ!?」

「うるさい、そんな事どうでも良かろう」


 私がいるカデミア王国は、人口200万人ほどの小国だ。

 国内の需要だけでは足りないが、外国との貿易ネットワークを構築することによって、確実に儲けがでる。

 私はその金でさらに多くの商品を開発し、財力を身に付け、国の政治に干渉する!

 そしていずれは国王を退ける!


 夢の民主政実現への道だ!


「あと、国家転覆とかマジの話じゃないよな‥‥‥?」


 突然、キレンがとんちんかんな事を言ったので、私はため息を吐いて答えた。


「大真面目に決まっておるだろう?」

「嘘だろー!?」


 今まで私の計画に協力してくれていたのに、急に何を言い出すのか。

 この男 ー キレンとは、10歳にしてはまともだが、情報の整理が苦手のようだ。


「さて、さっさと行くぞ」

「だからなんでオレもー!?」


 キレンはいつも驚いているが、私の行動原理はごく単純だ。


「だって使いやすいじゃないか。一番話しやすいし」


 キレンは呆れた顔で返す。


「使いやすい‥‥‥ってオレ、一応男爵家の長男だけど‥‥‥?」

「それがどうかしたのか?」

「どうかしかしていないが!?」


 使える人が近くにいるのなら使うだろう?

 キレンという男は、やや変わった考え方をするようだ。


「‥‥‥まあ、もう止めようがないな‥‥‥行くか、おやじのところに」


 私は少し戸惑った。

「おやじのところに」‥‥‥だと?私のお父様だぞ?

 

 いや、待て。

 なるほどな。

 キレン、さすがは貴族、と言ったところか。


「ーーなるほど、”お義父様”と書くほうか!つまりこの私と戦略結婚してくれる訳だな!確かに、今後のリージナル家はさらに豊かになる。私と結婚すればーー」


 キレンは多額の資産を手にし、私は貴族の地位を手に入れる ー つまり、国家転覆へ一気に近づく!

 Win-WInの、素晴らしい案じゃないか!


「何言ってんだお前はー!!?」


 あろうことか、赤面したキレンが私の口を塞いだ。

 なぜ恥ずかしがる?


「人の発言を深く考察しすぎだ!け、けっこん!?そ、そんなこと考えてねえよ!」


 そう言い残すと、キレンは猛スピードで部屋を飛び出していった。


 本当にどういう人物なのだ、彼は?

 不思議ではある。


 しかし今の私には仕事があり、彼のことを考えている暇などない。


「お父様、新しい商品を開発しました」

「おお、流石は我が娘‥‥‥!?」


 父は目を丸くした。

 10歳の娘が新商品を開発してきて、何がおかしい?

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