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この花を君へ  作者: ことの
再会
9/13

9 蒼との出会い






蒼と出会ったのは、五歳の時だった。

『躑躅家』と『連翹家』は昔から深い交流があり、歳が同じだった僕たちはよくお互いの家に行って遊んでいた。

お互い、初めて自分以外の子供に出会ったことが衝撃で、最初はどうやって喋りかければいいのか迷った。でも、長い時間一緒に過ごしていくうちに、自然と喋れるようになっていった。



「とうりん!今度一緒に俺の家の庭に行こう!あそこは日がよく当って気持ちいいんだ」


「いきたい!お母様に聞いてみるよ!」



やがて、お互い自分たちの屋敷に招待するようになり、ますます交流が深くなっていった。

毎日のように会って喋って遊び、もう初めて会った時の戸惑いや気まずさは感じ無くなっていた。



だが_________







「お母様!今日は蒼の家のお庭に行く!」


「.....燈琳、ごめんなさいね。もう蒼とは遊べないの」




「........え?」



突然の連絡を聞き、理由を聞いてみると僕は初めて蒼と会った時以上の衝撃を受け、絶句した。




『蒼は『躑躅家』なのに力が"小さすぎる"』




たった、"たった"これだけの理由だった。




僕は初めてお母様に怒った。お父様にも怒った。怒り狂って使用人にも怒った。僕は利益の為に蒼と会っていたんじゃない。それだけの理由で会えなくなる理由が理解できない。そう叫んで叫んで力を、能力を暴走させた。




_______そして気づいた時


大きな大きな屋敷......僕たちの家の一部分が壊れ、周りにあった小さな建物も壊れていた。綺麗に咲いていた庭の花も何故か枯れていて、家も壊されているというより溶かされているような跡をしていた。



父と母はそんな僕を見て、慌てて蒼に会わせてくれた。





「あおい!!」


「とうりん....僕のために怒ってくれたんだろう?ありがとう.....」


蒼は悲しそうな顔と嬉しそうな顔を交互に浮かべながら言った。



「でも......このまま『躑躅家の恥』である俺と会っていると、燈琳にまで変な噂がたつ。だから.......」


「そんなの、関係ない」


僕は蒼が言おうとしている言葉の続きを遮り、代わりにそう言った。だって、そんな噂なんて、本当に興味なんか無いんだ。関係ないんだ。ただ、蒼とずっと友達でいたいだけ。


「もし、それが蒼の足枷になっているなら.....僕が取り除いてあげる!」


「え......?」



僕はポケットから小さな桜のような形の紋章を取り出し、それを右手で握りしめ、左手を蒼の頭の上に置いた。そして歌うように詠唱を初める。しばらくすると淡い金色の光が僕を包み込み、周りを光り輝かせた。


『連翹の名のもとに命ずる、我が求めたものをこの者に______表せ』


そう命じるとともに、蒼の周りを金色の光が包み込んだ。それが蒼の中にゆっくりと吸い込まれていき、やがてその光は消えた。そして周りにいた『連翹家』と『躑躅家』の頭首とその妻.....つまり僕と蒼の両親は息を飲んでその光景を見つめていた。


「と、とうりん....?一体、何を.....」


僕は戸惑いを隠せていない蒼を見て、いたずらっ子のように笑った。


「蒼、君の中の力....大きくなってるのわかる?」


「.......え、?.....まっ、まさか燈琳!嘘だ.....、本当に力が大きくなってる、なんで...」


周りにいた両家の両親も驚きを隠せなかったのか、声をあげて驚いていた。


「とっ、燈琳....あなた、いつの間に力の扱いを覚えたの?私はまだ教えていないはず......。それに力はとっても危険なものなのよ」


「そうだぞ燈琳、少しでも扱いを間違えたら死んでしまうんだ。」


両親は心配するように僕を見て言ったが、僕は2人を無視して蒼の元へ駆け寄った。



「蒼、これで僕とまた遊べるよ!明日....蒼の家の庭に行くから、待っててね!」





その時の蒼は、何を思ったのだろうか。


目をぱちぱちさせて、眩しいものを見るかのように僕を見た。そして少し恥ずかしそうに、


「........う、あ....えっと.....うん、うん!待ってるよ!絶対来て!」


そう言った。




きっと、そこから蒼の僕への依存が始まったんだと思う。どこへ行っても着いてくるし、何かする時も必ず報告。正直どうしてこんな事をしているのか分からなかったけど、毎日一緒にいられるようになって嬉しかった。


僕の能力は<世の理を変える、または操作する>

力が小さいなら、元から大きいものとして"作り替えればいい"。欲しい能力があれば元から使えるように"作り替えればいい"。ひとつしか能力を使えないなら、元からそれ以上使えるように"作り替えればいい"。単純な事だ。


『躑躅家』の人達からは、あの後頭を下げられ感謝された。今後、なにか困ったことがあったら出せる力を出し尽くしてでも助けてくれるそうだ。


『連翹家』の人達からは、沢山褒められた。よくやった、とお父様とお母様から言われた。そして、もう誰かの前で能力を使うことを禁じられた。理由は沢山あるが、ひとつは"なんでも出来てしまうからだ"。能力を使えば出来ない事が無い僕は、誰かにとって危険な存在になるかもしれない。

そして『桔梗家』に狙われるかもしれないからだ。ただでさえ戦争が始まるかもしれないというのに、バレてしまったら戦争は避けられない。僕を巡って争いが起こる。そう父が言っていた。



蒼はそれを聞いて、僕の能力がバレないよう力を尽くしてくれた。花神学院でも僕が間違った行動をしないように見てくれているし、助けてくれる。蒼は自分の事をなんでも教えてくれて、僕に隠し事なんてない。そう言ってくれている。











なのに_________







僕は、君に隠し事がある。言えない事がある。ごめんなさい。本当にごめんなさい。


言いたいけど、言えないんだ。言ったら....もうあとには引けなくなる。全てが終わったあとに君は真実を知るかもしれない。

けど、それでも.......きみは........















僕と、友達でいて欲しい




わがままなのはわかってる。そして本当に君に依存してるのは僕だってことも分かってる。


君だけじゃない。僕も君に依存してるんだ。蒼。




そして僕は、きっと一生 蒼に依存し続けるだろう。

でも、でも君だけは.........














僕なんかに依存しないで、幸せに生きて......そして、





















僕を、忘れてくれ























・連翹家

母が連翹の血を引いている。父はその母と結婚し、頭首となった。恋愛結婚。


・躑躅家

蒼の父が躑躅の血を引いている。蒼の母がその父と結婚した。恋愛結婚。


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