2 見失った友
・神力使い
神の力を自由に扱える一族、もしくは人間のこと。一族によって使える能力は違い、三大神力所有一族__略して『三大一族』の能力が桁違いに強いものとされている。
・力
神力を使うと、周りの重力が異常になる。特に三大一族の使う能力は桁違いに次元が違う。重力が消える者もいれば、重力が極限まで強くなる、または大きくなる者もいる。つまりは人それぞれなのだ。
・紋章
一族の一員と認められた者には、先祖代々受け継がれてきた紋章が渡される。その形は一族によって違い、杖のような形をした紋章もあれば、手で握れるほどの小ささのものもある。大きさは本人の力に呼応し、紋章が受け継がれる時、儀式を行うことで受け継がれる者の力はどれくらいか確かめることも可能。小さければ小さいほど力が大きいとされる。
普通はこの紋章がないと力を使うことは出来ないが、三大一族は例外である
(少し扱いやすくなる程度)
「郎.......?」
先程まで一緒に喋っていたのが嘘のように、彼は忽然と姿を消した。呆然としていると、蒼が僕の傍に近寄ってきた。
「あ、蒼、郎が急にいなくなった....一体何が、」
「燈琳」
少し混乱している僕の言葉を遮り、一瞬真剣な顔をした蒼は、すぐにいつもの笑顔に戻った。
「今までも、そうだった。だから心配する事なんてない。辛くないよ」
「.....うん」
僕と蒼は幼馴染だ。もちろんお互いの癖も知っている。蒼は嘘をつくとき、一瞬真剣な表情をした後に笑顔で笑う癖がある。そして.....考え事をする時、赤い髪を撫で付けるように触り、周りの声が聞こえなくなるほど集中する。
「........なぁ、蒼」
「.........」
......話しかけても反応無し。って事は何か考えてるってことだ。こいつはいつもお気楽そうに生きてる人間だけど、異常に頭の回転がはやい時がある。運動も出来るし、勉強もできる。
__________"力"の扱いも上手い。
赤い髪に赤い目の 美形で顔もスタイルもいいこいつは小さい頃から優遇されてきたのを僕は知っている。そしてそれが蒼は嫌だということも。
「........燈琳。」
どうやら考え事が終わったようだ。視線を向けると、蒼は首から下げていた、何かの花の形をしたネックレスを右手で掴んだ。
「これは僕の一族の紋章_____『躑躅家』の証だ。.....知っていると思うけど一応、ね。」
蒼は僕に目配せをして、にっこりと胡散臭い笑みを浮かべた。この表情は、きっと僕しか知らない。
そして僕は今からこいつがしようとしている事を想像できてしまい、少し嫌な顔をする。
「そう嫌な顔をするな。少し"借りるだけ"だ」
僕はため息を吐き、自分の家の紋章を蒼に渡す。この紋章は、"神の力"を自然に溜めてくれるものであり、一族の証となるものだ。『神の使い』の血を引くものは誰でもこの紋章で"力"を操ることが出来る。だが紋章1つにつき、1つの能力のみ。だからこそ、この紋章は無くしてはいけないし、信用出来ない"神力使い"に渡してはならない。悪用される危険があるからだ。
......まぁ、中にはそんな奴らも恐れる"例外"の一族もいるのだが。
蒼は僕の紋章を受け取ると、蒼自身の紋章と僕の紋章を右手でぎゅっと握った。そしてぶつぶつと何かを唱え始める。僕はまたまた深い溜め息を吐き、空を見つめた。
「はぁ......また怒られちゃうな」
本来、この"神力"はどこでも使用していいもの。だが、"例外"は別だ。
"神力使いの中でもトップに君臨する一族。"
『躑躅家』 『連翹家』『桔梗家』の三大神力所有一族、略して、【三大一族】は簡単に能力を使ってはいけないのだ。
それは何故か? 理由は単純
能力を使った後の被害が、"でかすぎる"からである
・主人公『花楽 燈琳』の見た目
白い髪に金色の瞳。スタイルも良く顔も整っているが、本人は気づいていない。顔がいい同士の幼馴染(蒼と燈琳)は、花神学院ではとても有名。