1 未来の貴方へ
・花神学院
「神の使い」である両親から生まれた子供のみ通うことが許される場所。白いレンガと美しい模様が浮かび上がる建物は見栄えがとても良い。だが、その建物の姿は大理石のような壁に阻まれ外部からは見ることが出来ない。
・舞台
国などの区別はない。全ての世界を1人の王が統治している。着るものや住宅は日本の文化関係なく洋風。白いレンガがよく使われている。木は白く、葉っぱは緑や青などの色をよく見かける。
ここは、地球が生まれる何千年も前の世界。そんな世界の始まりは戦争だった。殺すか殺されるかの地獄のような日々。最初は5億人以上の人間が生きていたのにも関わらず、"力"の奪い合いで3億以下にまで減少した。"力"とは、選ばれた一族にだけ発現する「神の力」のことで、歴史の教科書には『神から奪った力』と記されている。そしてある一族は、人類滅亡の危機を感じ、姿を消した。
その一族とは_______『連翹家』
「....ん、....さん、!.....花楽 燈琳さん!!」
大きな声がした。まだウトウトとして眠気が覚めないまま、僕はゆっくりと上半身を起こした。
「......はい。なんですか?」
「はい、なんですか?....じゃないよ!!今授業中!先生話してる間はちゃんと聞く!」
相変わらず大きな声でそう言うこの先生は、この学院の教師だ。そしてそんな会話をしている僕たちを見て、周りの生徒はくすくすと笑っている。
「まーた怒られてる」
「いつもいつも飽きないで、よく先生もあんなに叱れるよね」
こそこそと会話をしている女子は、この花神学院の生徒だ。もちろん僕もだけれど。
「燈琳!今日は寄り道して帰ろう!近くにアイスを売っている場所を見つけたんだ!」
そして、空気を読むのが下手なこの男は、僕の幼馴染の「橘 蒼」。
元気で明るく、誰に対しても平等な蒼はみんなからとても親しまれている。
「俺が見つけたんだ!!、いかにもお前が見つけたっぽく言うな!アホ!」
そしてそして、この少し毒舌なこの男は、花神学院で友達になった「鮫百合 郎 (さめゆり ろう)」
僕と背格好が似ていて、よく間違えられることをきっかけにお互い興味を持ち、仲良くなった。
「……お前ほんと空気読めないよなぁ、そんで郎は朝から大変だったんだな....でもアイスに罪はない。行く」
「やった!!」
「もう少し労わってくれ」
「やった!!とか、もう少し労わってくれ.....じゃないよ!3人とも今授業中!!」
先生はそう叫んで、3人を大きな声で叱った
「燈琳、郎、早く行こう!アイスが売り切れてしまうかもしれない!」
「はいはい」
「あぁ。」
蒼に急かされ、僕たちは少し早歩きで学院を出た。
白い大理石のようなものが学院全体を囲っており、出入り口は1つしかない。教室はその出入口から遠いため、出るのに時間がかかってしまうのだ。
「燈琳ー!郎ー!こっち!はやくー!」
「わかったって!、急かすな」
先程から何回も名前を呼ばれて急かされるこの状況に、少し不満を覚える。
「燈琳!こっち!」
「あーもー!うるさいなぁ!分かってるよ!」
「郎!歩くの遅い!」
「やかましい奴だな ほんと」
1番前を歩く蒼は、元気よく歩いている。2番目が僕で、郎は_________
「ほんとにね、......って、郎?」
ふと後ろを振り返ると、そこには誰もいなかった。
あるのは木から落ちてくる落ち葉だけ。
「郎........?」