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第三話 彼らの実力

すみません。いろいろ忙しくて投稿が遅れました。お読みいただきありがとうございます。


 それから程なくして、時夜と木村くんは帰ってきた。

 二人の手にはなにやらたくさんの機材?が持たれてる様子。


 「よいしょっと。フー、結構重かったな」


 「ねぇねぇ。これなに?」


 「ん?それはアンプだな。ギターに繋いで音出すやつ」


 「え?ギターってそのままじゃ音ならないの?」


 「はははっ。それはアコギのことだね」


 突然木村くんがニコニコで乱入してきた。

 あのー。目がちょっと怖いんですけど。


 「アコギ?」


 「そう。アコスティックギターの略。アコスティックギターっていうのは東洋の中でも中近東のアラビアの商人がヨーロッパやスペインにギターの祖先を持ち込んで、様々に進化を遂げていったと考えられペラペラペラペラペラペラペラペラ」


 「はい涼汰。ストップ」


 「どう?少しはわかった?」


 「ひゃっ、ひゃい」


 「ほら見ろ涼汰。那由が怖がって隠れちゃった」


 「また僕は……話したいことの一割にもいってないのに!」


 あそこまで話してまだ九割以上も残っているの!?

 はぁ。どうして私の周りには頭のおかしいオタクがこんなにも集まってくるのか。

 そういう運命なのかなぁ?

 私は本日何度目かもわからないため息をついた。

 

 そんなやり取りをしていた間にも、なにやら準備はしていたらしく、時夜が最後のケーブルのようなものをギターに繋げると私の方を見た。


 「よし。準備完了。それじゃあ始めるか涼汰」


 「そうだね。楽器の魅力は直に聞いてみることでも伝わるものだからね。もちろん弾いてみるのもだけど」


 うっ、うわー。まだ木村くん根に持ってるよー。私が試奏しなかったこと。

 オタクは怖いなー。

 

 そう思いながら私は時夜たちが持っている楽器に目を向ける。

 時夜が手にしていたのは黒いボディのギターだった。メーカーなんかには詳しくないけど、一番上の弦が止められている部分に「Gibson」と書いてある。

 なんかさっき私が見ていた赤いギターよりも高そうだ。


 続いて木村くんの楽器。こっちはギターに似ているんだけどなぜか弦が四本しかない。しかもそれがギターよりもすべて太い。人の指であんなの弾けるのかな?ていうかなんていいう楽器なんだろ?


 「木村くん。そのg……はっ!」


 「?」


 危ない危ない。また同じ過ちを冒すところだった。

 若干木村くんの目が輝き始めていたが大丈夫だ。その前に抑えたから。

 とはいえ楽器の名前がやっぱり気になる。だけど木村くんに聞くわけには…………


 「ゴッホん!ゴッホん!チラッ」


 「………那由。この楽器はベースという楽器だ。ギターよりも低い音が出る」


 「へー。(グッドサイン)」


 「それじゃあ今度こそ始めるぞ。曲は何にする?」


 「今期の『アレ』でいんじゃないか?」


 「いいな。それでいこう」


 う、うん。弾くのはいいんだけど『アレ』って言って通じるのすごいな。

 オタクって『アレ』って言えば伝わるのかな?


 「曲名は『スター☆for・WISH』。ワン、ツー、ワンツースリー」


 カウントと共にイントロへと入る。

 次の瞬間。私は、目の前にいるのが時夜だとわからなくなった。

 いや違う。わからなくなったんじゃない。時夜が変わってしまったんだ(・・・・・・・・・・)


 普段私に見せるヘラっとした態度はそこにない。

 あるのは、真剣な眼差しで楽器を弾き続ける時夜の姿だけ。


 曲がサビへと入った。

 私の景色が変わる。

 時夜たちの演奏に引き込まれる。

 ここで私は気づいた。木村くんとの会話で言っていた『軽音部って言っても、所詮はその程度』という言葉の真意を。

 もう一度、演奏する二人の姿を見る。

 

 そこには愛があった。

 楽器に対する愛。曲に対する愛。そして、その曲を主題歌とするアニメに対しての圧倒的なまでの愛。

 だから、あんな言葉を言ったのだ。

 だから、『絶対に勝てる』と言ったのだ。


 私は自然と自分でも気づかない内に拳を握りしめていた。

 こんなにも楽しそうに演奏する時夜たちが、あんな奴らに負けるわけがないじゃないか。

 

 アウトロが終わり、二人の初めて聞く演奏は終わった。


 「よっしゃ。止まらないで弾ききった〜」


 「途中で何回もミスはあったけどね。でも初めて合わせた曲だし上々じゃない?」


 「そうだな。那由どうだった。俺達の演奏は………那由!?」


 「? どうしたの時夜………え?」


 二人の驚いたような顔を見て初めて気づいた。

 頬を伝わるこの感覚。

 私は泣いていた。

 涙を止めようと、目をこすりながら口早に言葉を紡ぐ。

 

 「いっ、いや!これはっ……あれっ!どうしてだろ。時夜たちの演奏見てたらなんか胸が熱くなっちゃって!」


 必死に涙を止めようと目をこするけど、それは止まらない。

 そんな私の様子を見てアワアワし始める二人。

 私は二人を止めるように大声で言う。


 「と、とにかく!めっちゃいい演奏だった!」


 「そうか」


 一瞬目を丸くしたあと、なんだか安堵したような様子で時夜は微笑んだ。

 



 

投稿は不定期になります。申し訳ありません。おもしろい・続きが気になるといった方は評価とブクマのほうよろしくおねがいします。

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