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村の選択と『祝いの歌』 1

 少女が出てきた穴の中は、地下へと降りる階段になっていた。動物の骨でつくった格子に布をかけ、中に砂が入らないように、見ただけではそこに入口があると分からないようにしていたらしい。


「ここは、古代の遺跡らしいのです。私たちの先祖が、砂嵐による被害を防ぐために村の近くで見つかったこの遺跡に村を移したのだと聞いています」


 急な階段をゆっくり降りるカロンを見守りながら少女は話す。壁に手をつきながら納得したようにカロンは相槌を打った。ミズトドメの藪や畑のようなものはあったのに、地上に村としての生活感が無かったのはそのためか。


 少し歩きますが、と申し訳なさそうに言う少女に案内され、遺跡の中を移動する。走り回っていた5,6歳の子供たちが、テアたちを物珍しげに眺める。あまり旅人を受け入れる村ではないのだろう。


 ひんやりとした地下空間はかなりしっかりした造りをしていて、倒壊の心配はなさそうだ。村ごとに建物のようすや文化は異なるが、この形態の村は初めてで、カロンは中をキョロキョロと見回しながら歩いた。テアさえも好奇心を隠しきれていない。


 しかし、普段使われているのはこの広い地下遺跡のうちのほんの一部のようだ。中を歩くだけで、住民の少ない村であることが旅人であるテアやカロンには分かった。


「奥の間は、怖がって子供たちがあまり立ち入らないのです。だから、大人たちの話し合いの場にしているんですよ」


 遺跡の奥へ奥へと進みながら、少女は教えてくれた。日の光は届かず、中は手探りで歩かないといけないほど暗い。しかし彼女は慣れたようすで進んでいく。昔の名残から長老会と呼んでいるが、実際には少女自身も大人として話し合いに参加していること。話し合いをしていると思われないように、奥の間は石化が始まった老人たちがゆっくり仕事をする場だということになっていること。


 角を曲がると、ぼんやりと通路の先が明るくなった。奥の間に着いたのだろう。入口に取り付けられたツタのカーテンの合間から、炎の明かりがもれる。少女は静かにツタを持ち上げると、カロンたちを中へと促した。




 奥の間では数人の老人が布を編んだり籠を作ったりしていた。顔を上げた彼らは、連れられて入ってきたテアとカロン──主にテアを見ると、皆一様にざわめいた。


「フキ。なぜ“送り”の方たちが、ここに…」


 老人たちは戸惑いを露わに、テアたちを連れてきた少女──フキに問い掛ける。フキは外での出来事を手短に説明した。


「この子たちを放っておけなかったの。村の事情は、私から説明するより、ジイ様たちにしてもらった方がいいと思って、ここに来てもらったの」


 フキの説明を受け、老人たちはそれぞれため息をついたり、目を伏せたりした。何かしら思うことがあるのだろう。それまで黙っていた、一際高齢の男性が労うようにフキに声をかけた。


「フキ。ご苦労だったね。助け合いは、この砂の大地の鉄則だ。お前の行動は正しいよ。二人とも、疲れたろう、中に入りなさい。村のことは私から説明しよう」


「しかし、ヌシャ…」


 何かを言おうとした村人に、ヌシャと呼ばれた老人はニコリと笑いかけた。その笑みに村人は静かに頷き、もうそれ以上何も言わなかった。他の者も、彼に任せる、とでもいうように各々の作業を続けた。


 促されるままに、テアとカロンは部屋の奥に座るヌシャの近くに招かれた。楽にしなさい、と優しく二人に笑いかけ、ヌシャ自身も穏やかに、ゆっくりと、植物から得られる繊維を依り合わせて糸を紡ぐ。ほどなくして、彼は静かにこの村のことを語り出した。

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