森で迷子になりました
闇雲に走ったパンネは迷子になって、森を彷徨っていました。
普段パンネの入っている森と同じはずが、どこか暗く、空気も重く湿ったように感じます。何故でしょうか、ニオイが違っておりました。
パンネは立ち止まりました。冷静になったというよりは、体力が尽きたのです。
息を整えて辺りを見渡します。自分が何処にいるのかさっぱり分からなくなってしまいました。
耳をすませると木々の騒めきの中に、生き物の息づかいを感じます。
パンネは怖くなってぶるりと体を震わせました。
無意識にいつの間にか冷えていたトウネのお守りを握りしめます。
どこからか、きぃあぁあぁという鳴き声がしました。手にギュッと力を入れると、今度はお守りがじんわり温かくなりました。そして背後からガブリと頭を飲み込まれてしまいました。
青年はビヨーンビヨーンと跳ぶティコの後や前を着いて行きました。
「こらティコ。ちゃんと進んで!」
青年はハタキを振り上げて怒ります。
「どーこかハッキリしないんだよー」
それでも『なんとなくこっちかな』という方に向かってティコは進みます。
すると突然ティコが何かに反応しました。
「コッチだ! コッチだ! ゲ、ゲ、ゲ!」
ティコは大きく大きく跳ねて、一気に距離を稼ぎます。青年も木の枝をハタキで薙ぎ払いながら、ティコの後を追いました。
二人の前に森蛇の姿が現れました。口から足が生えています。
「ティコ!」
「グエェエエエ」
ティコは叫びながら飛ぶと、バカンと口を開きました。自分よりも大きな森蛇の頭をバクっと咥えるとグングン飲み込み、今度はティコの口から足と尻尾が生えているように見えました。
青年のハタキがティコの頭に振り下ろされました。
グエっと吐き出された蛇の頭の殆どは溶け、女の子の体が出てきました。ベッシャリとしていますが、無事のようです。
イタイ! イタイ! と跳びはねるティコと気を失っている女の子を見比べた青年は『まあ無事だったからいいか』と思いました。