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異世恋は、夢の中で……  作者: おうないがー!
夏休み編!
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星と勇者の物語。四

「血管を出来るだけ多く斬ってください!!」


 必死の様そうで叫ぶ青年は、どうやらこのモンスターの倒し方を教えてくれているらしい。


「なるほど。それなら簡単だ」


 俺は腰に下げた刀を抜き、その刀身に、紅く揺らめく烈火を纏わせる。火が本能的に怖いのか、シュリィルレックスもわずかながらに後退する。だが、より一層俺を警戒したのか、大きく咆哮する。


 斬りかかると、先ほどよりも苛烈な攻撃が襲来する。だが、いなし、身躱し、大きな体に傷をつけていく。斬りつけるたび、攻撃は苛烈さを増し、ついには体全体を地面に打ち付けようとしてくる。


「すまんな。お前は殺す」


 攻撃をかわした俺は、地面に打ち付けられた体に一閃。太刀を入れ、やっとの思いで倒すことができた。想像以上に強かった……。


「た、倒した……?」

「なんとか……って、ん?」


 青年が構えを辞め、こちらに駆け寄ってくる。


「どうしたんだ?」

「これ見ろ」

「ん?……これは、なんだ?」


 異様な物体が、腹のあたりに出現していた。さっき殴った時はこんなものなかったのに……。


 そう思って、恐る恐るその物体を凝視すると、微かに光っているのが分かった。


「…………なにこれ」

「……位置的には、心臓でしょうか。さっきの一瞬で、さらに筋肉が成長し、心臓が押し出されたのかもしれません」

「……こわ」


 よくよく見てみたら、その物体の周辺には、かなり大きな血管がつながっていた。


 もうこれが災害で良くない?かなり強かったよ?


「それにしても、どうしてこんなところにシュリィルレックスが……。何か、生態系そのものに何か変化が?だとすれば、調査をする価値がぐんと上がりますね」

「そうだな。お前は物分かりが良くて助かるよ……」


 一方の騎士団長はというと……。


「お前!!お前お前お前!!!」

「なんだよ。お前お前詐欺でも始めたの?」

「やかましい!!何を勝手に討伐している!?最悪逮捕されるんだぞ!?お前たちも、撤退と指示を出したはずだ!!」

「団長……」


 呆れたように団長を見つめる青年。彼らも、団長には手を焼いているようだ。大変だねぇ……。


「ええい!私の命令を聞かないなど言語道断だ!!出ろ!!調査から出ろ!!」

「黙れカス!!」

「黙らん!!」


 なんだこいつは!?モンスターより厄介だ!!もうコイツが災害でいいんじゃね?かなりウザいよ?


「ま、まぁ、とにかく。今回は良しとしましょう。下手すれば、団が壊滅だってこともあったんですし……」

「…………ガルルルル!」


 犬かお前は!!いや、犬だ!国家権力の、ルールの犬だ!!


 俺がジトっとした目で睨みつけていると、ふん!と、大きく鼻息を荒らすと、どの顔引っ提げてか、団の先頭に立った。そして、それを見届けたと同時に、眠気がやってきた。


「あ……、すまん。俺、寝る」

「あ」


 ステラがいち早く反応し、倒れてしまいそうな俺の体を支えると、ゆっくり地面につかせた。体力を使ったからだろうか、本当に今回は眠りにつくのが早かった。



 目覚めると、見慣れた天井。だが、いつもとは何かが違う。何か……。


「……んー!んんーー!!」


 あれ?体が起きない?どころか、指を動かすことすらできないんだが……。ナニコレ?てか、なんかしんどいし……。


 戸惑っていると、執事が言った、ある言葉が脳によみがえってきた。


 ―――精神に直接ダメージが行きます。


 一言一句違わずというわけでもないだろうが、そういうことを言っていたな……。なるほど。あのモンスターにやられたから……。


 精神ってことは、病気でもないってことだよな?どう説明しようか。今日も部活あるのに……。母さんにどう説明しようかな……。生まれてこの方、こういう病気とは無縁だったから、果たして母さんは休むのを許してくれるだろうか……。




「悟ぅぅぅぅ!!!うえええええん!!ごめんよぉ!特訓しすぎたよね!ゆっくり休んでえええええ!!」


 母さんは号泣していた。想像以上の泣きっぷりに、こっちが申し訳なくなってくる。というか、特訓のせいじゃないし、何なら特訓は俺が最初に言い出したことだし……。


「う、うん。わかった」

「うえええええん!!でも、なんか子供の頃みたいでかわいいいいい!!」


 子供の頃って……。


 俺の頭の中に、自分の子供の頃が思い浮かんだ。今からじゃ想像できないほどに純粋な目をしたそいつは、普段から縮こまって、可愛らしくおねだりや甘えたりしたものだ。思い返すと恥ずかしい……。ただ、そういう子供っぽいところをあらわにしてしまうほど、俺は精神的にやられているという事か……。


 って、おい。なんか撮ってるぞ……。


「きゃああ!かわいい!」

「…………」


 恥ずかしくて布団を顔まで掛けるも、それすらかわいいらしく、ずっと動画を取っていた。自分の母が、こんなに親ばかだったのかと、新たな発見があった。


「もうとるな」

「覇気がないわ!かわいいわ!!」


 もうなんでも可愛いやん……。


「でも、早く治さないと……、治さないと?……治さなくていいかもね」

「おい」

もう。ジャンルアクションにした方が良いか?いや!後半からはミステリーとラブコメ一色なんだ!!大丈夫だ!アクションではない!

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