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異世恋は、夢の中で……  作者: おうないがー!
過去と体育祭と
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美代は邪推する。

 オカルト部の部室に入ると、美代と滴が珍しく楽しそうに話していた。本当にここは奇妙な関係性だ。正直、なんの話で盛り上がっているのか全く分からないし、想像も出来ない。彼女たちの共通の話題を頑張って探してみても、全く見つけられない。


「あ、どうしたの?珍しいね!」


 先ほどまで楽しそうに話していたテンションのまま、こちらに向かって元気に話しかけた美代。対して、滴は手に持っていた何かを後ろに回し、もう片方の手で、小さく手を振った。


「あぁ、今日はオフになったからな。てか、美代もたまには来いよ……」

「あっはは……。いやぁ、なんか大会に向けて頑張りすぎたせいで、今はちょっとね……」

「まぁ、分からんでもない」

「そのうち行くね?」


 入ってすぐに置かれた椅子に座り、二つの飲み物を並べた。


「あれ?なんで二つも買ってるの?」

「ん?あぁ……、気分」

「気分か……。私も何か買ってこようかな」

「あ、じゃあどっちか……、お茶あげるわ」

「え?う、うん。ありがとう!」


 美代にお茶を渡して、レモンジュースをあける。


 プシュゥ……。


 しおれた音が鳴り、その音に反応を示した滴が「やけに炭酸が抜けてるのね」とどこか面白がるような、それでいていぶかしむように言った。


「あぁ、ちょっと途中で落としてしまってな。まぁ、別に……」


 そうは言いながらも、多少の不快感をあらわにしてしまった。炭酸抜けたらこんなに微妙になるのか……。


「……そういやさ、何話してたんだ?さっき」

「え?あ、あぁ……、ちょっとね!」


 お茶のペットボトルを両手で挟み、コロコロと回していた美代が、俺と滴に目線を行ったり来たりさせながらあいまいな答えを返してくる。


「ん?なんか隠してないか?」

「べ、別に何も隠してないわよ!」と、一番最初に何かを隠した滴がぶっきらぼうに言い放った。

「怪しいな……。後ろに隠したものを見せろ」

「は、はい?何のこと?」


 分かりやすく狼狽える滴に、所在ない手をやたらと動かす美代。確実に何かある。


 俺は席を立ち、シュバ!っと後ろに回り込む。驚いた滴は、身を固まらせてしまって、俺が回り込むのを許してしまった。


 その手に握られたものを半ば強引に奪いとると、「あ、ちょっと!」と、ようやっと反応をする滴。


 俺の手に握られたのはスマホだった。いざ画面を見てみると、俺が国語の答案を見て苦い顔をしているときの写真が現れた。


「おい。説明してもらおうか……」

「いや、だって、あまりに面白い反応だったから、ついつい……」

「そんなに変じゃないだろ……。てか、これ授業中だよな?」

「そうだけど?それが何?」


 滴は開き直ったようにない胸の前で腕を組み、足を組んだ。


「……はぁ。まぁいいけどさ。てか、他にも撮ってないだろうな……」

「ちょちょちょ!もういいでしょ!」


 そう言って、俺から強引に取り上げると、目を細め、顔を赤らめてスマホの画面を少しだけ眺めると、すぐに電源を消した。


「全く……、油断も隙も無いな。言っとくが、立派な盗撮。犯罪だからな?」

「分かってるわよ……」

「てか、別に必死乞いて隠すようなものでもなかっただろ……」


 そもそも、隠し事なんてけしからん!俺なんて清廉潔白でなに一つ裏表なんてないのに……。


 思いながら自分の席に戻ると、ガラッとドアが開いた。後ろを振り返ると、小林がいた。


「なんか、さっき海色先輩が女子と仲良く話してた……。あれ、さ……とるくん。なんかおひさ……」

「お、おう……」

「ちょっと待って?」

「ん?ドシター?」


 言ったのは滴。やけにしかめっ面なきがしたが、多分気のせいだ。なんせ、俺は裏表のない清廉潔白男。嘘もついたことのない純粋な男子だお!


「女子と仲良く話してた?誰と?」

「いや、それは分かんないっすけど……」

「分からないならつまりはそんなことなかったってことだ」

「……いいえ、そんなことは無いわ。状況証拠だけだけど、あなたが嘘を吐いたことが分かるわ」


 あっはは!俺が嘘なんてそんなまさか!そんなの、コーラを飲むとげっぷが出るぐらいのことだよ?


「まず、炭酸が抜けたジュース。これ、ここに来るまでに落としたみたいな言い草だったけど、本当にそうかしら?」

「……何が言いたい」

「つまり、その女子と長話をしていたから炭酸が抜けてしまったという事はあり得ないかしら?」

「……そんなに長く話してると思うか?それに、さっき始めて開けたとしたら、むしろ音が小さすぎるだろ……」

「そう。だから一度開けたのよ。だから代わりにお茶を買ったという事じゃないかしら?長話じゃなくても、楽しくじゃれ合っていたとしたら、ペットボトルを揺らしてしまい、結果的に炭酸が大量に抜けたということはないかしら?」

「じゃれ合って……」


 俺と滴の間にいた美代が小さく呟く。


 小林は困惑気味に俺達を見渡す。


「俺が嘘を吐く理由がないだろ」

「……やましいことをしていたから。というのが、定石じゃないかしら」

「やましい事ってなんだよ!?」

「ペットボトルが揺れるような……、それでいてじゃれ合っていたと考えると……。せ……」

「おい!!!大体、小林が話してたって言ってだろ!その線は絶対にない!てか、習いたての言葉を使いたがる中二かお前は!?」


 あらぬ疑いがかけられそうになって必死に弁解する。自分でも何を言っているか分からないぐらい咄嗟に反論した。正直、血の気が引きそうだった。


「じゃあ、なんなの!?」

「お前の推理滅茶苦茶すぎだろ!あのな……」


 結局本当のことを話してなんとか無事を得たわけだが、案の定というか、美代があまり快く思わなかったようで、帰り道は不機嫌気味だった。

美代さん……、それは無いですよ

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