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異世恋は、夢の中で……  作者: おうないがー!
過去と体育祭と
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平等など

 副団長と共に、街の外を調査するも、特段変化はなく。俺とステラが植物を見つけて時にあった場所に、少しだけ群生しているだけだった。


「……結構咲いちゃってますね。何か魔力が発生したのでしょうか」

「どうだろ……。でも、ここってあんまり動物とか来ないはずだし、そもそもどうしてこんな場所に咲いたんだろう。アギトのメンバーが言うには、あの森と深く関係しているみたいだけど、それなりに遠いぞ?」

「確かに、不思議ですね……」


 疑問に思いつつも、花の群生している場所に炎を纏わせて花を燃やそうとするが、意外にも副団長が俺の服を引っ張り制止した。


「……ちょっと待ってください!」

「ん?どうした?まさかあの騎士団の団長みたいなこと言うわけではないよな?」

「……少し似たようなことなんですけど」

「何?」


 マジか。絶対言わなそうなランキング第一位の副団長が、奇しくもあの男と同じようなことを口にするつもりとは……。


「……悟さんの能力って、魔力が関係ないんですよ」

「お、おう……。何かそうらしいな」


 あのアギトのリーダーもそんな風なことを口にしていたのを思い出しながらうなずいた。


「なら、地面はまずいです。街のように他の地面とは完全に別のものであれば問題はないかもしれませんが、こういう草原とかを燃やすと、大変なことになるかもしれません……」

「え……」

「悟さんの能力。実は地味じゃないかもしれませんね」

「……魔力が関係ないから、限りが無いってこと?」

「そう言う事です」


 なるほど?え、つまり俺ってこの星ごと炎を纏わせられる可能性があるってこと!?何それめっちゃしゅごい!!


「でも、別に世界滅ぼしたいわけじゃないしな……」

「そうですね」


 笑い混じりに副団長が同意する。


 結局能力を使う事はせずに、大人しくハサミで伐採を開始する。そんなときに、ふと一つの疑問が浮かんだ。


「能力と言えばなんだが、おんなじ能力を持つ奴はいないのか?」

「……ん?あぁ!いますよ!私の能力とか結構人多いですよ!団長の能力とかは珍しいんですけどね」

「へぇ……」

「ホント、不平等ですよね」


 副団長が花を慎重に切りながら、ぶっきらぼうに言った。


「平等がいいか?」

「…………さぁ、どうでしょう。私は分かりません」


 分かりませんか……。どういう事だろうか。俺のした質問の回答としては不適格というか……。


「悟さんはどうですか?」

「……俺は別に興味ない。そもそも、人間が平等に生きるなんて不可能なんだよ」

「なんでですか?」

「そりゃあ、人間は生まれ持って『個性』という名の『不平等』を抱えて生まれてくるもんだ。俺の顔が犯罪者って呼ばれるのもその一つだ。それにだ、平等ってみんなが思ってるより汚いもんだと思うし」


 そこまで言うと、また別の花に手を伸ばす。すると、団長がこちらに詰め寄ってきて、「どうしてですか?」と顔をのぞかせた。


「……これは俺の世界のことだけどな。平等……というか、差をなくそうとしてるんだよな。かけっこの順位をなくしたりとか……、ゲームでわざとらしく不細工のキャラを出したり……。それってさ、別に平等でも何でもないんだよね。ただ形式上見えなくしてるだけで、結局その不平等は解消できてない。どころか、そんな風に平等を目指せば、逆に自分たちがいかに自分を差別していたかが分かってしまう。別に足並みそろえる必要もないはずだ。空いた差を自分の力で埋めていくか、他の何かで補おうと思えばいい。それなのにだ……」

「そっちの世界も大変なんですね……。ま、私たちの方もそう言うのあるけど……」

「そもそも、平等なんて手を伸ばして得るようなものじゃねぇんだよ」

「……でも、それだと馬鹿にされちゃったりする人もいますよね……」


 副団長が物憂げに花を見つめながら言った。


「……それでいいんだよ」

「え?」

「そうやって、馬鹿にしあって、ののしり合って、時に認め合って……。俺はさ、肩を並べて歩くなんて難しいことは望まない。そんな事より」


 パチン。


 花がゆっくりと落下していく。俺は副団長が渡してくれた袋で花をキャッチする。


「泥のぶつけ合うような関係が望ましい。ほら、人って自分が思うより汚いんだし。馬鹿にされて悔しかったら、馬鹿にしてきたやつを馬鹿にして……。そうやって泥投げ合ってると、人の違いなんか小さなものだって思える気がするんだ」

「…………そうですね。でも、それって子供っぽくないですか?」

「それでいいじゃん。いちいち気にするから辛くなるんだよ。馬鹿にしあうのが当たり前って思っとけば、そんな傷つかないでしょ。限度はあるけど」

「じゃあ、うちの団長と騎士団長の会話が良いってことですね!」

「違うわ!あんな排他的な会話絶対いやだわ!限度があるって言ったろ!」

「えっへへ!」


 そんなこんな会話をしていると、いつの間にか花は全て切り終えることができた。特に感染することもなかったため、本当に虫に頼り切った繁殖なんだなと実感した。そして、袋の中に入った花を見て、ふと思った。


 こんなきれいな見た目で、やばい毒があって、しかも名前が『ハートクエイク』……。何かすげぇな。その辺に生えてる雑草がうらやましそうにハートクエイクを見ている気さえした。植物さえ不平等なんだし、人間なんてそりゃあ不平等だろうと、やはり思うのだった。

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