アジトでの戦闘
這い上がってきた男たちをバッタバッタと倒していく悟。一人の男の胸倉を掴むと、アジトにつながる穴に、自分ごと男を頬り投げ、下で機をうかがっていた男が下敷きになり、当然胸倉を掴まれた男も、「うぅ~……」と、声にならないような唸り声をあげ気を失った。
悟の周囲は、当然のことながらざわめき、悟のことを一点に見ていた。悟はそんな動揺するアギトのメンバーを一瞥すると、いつまでも上にのったままだとかわいそうとでも思ったのか、ゆっくりのんびりと下敷きになった二人から降りる。
「何もんだごらぁぁ!!」
「はぁ……、元気だな……」
ヤクザのような剣幕で突っ込んでくる男。それを見てようやっと戦闘態勢に入ると、何人ものメンバーの攻撃をのらりくらりとよけながら、刀の柄で軽く腹のあたりを突いていく。
周囲に居た奴らを全員気絶させると、梯子の方に近付き、地上に向かって呼びかけた。
「オッケー!終わったよー!」
「はーい!了解でーす!」
元気満々、有り余る体力をふんだんに使用したような返事で、副団長が地上から飛び降り、ステラは恐る恐る梯子を使って降りてきた。
「大丈夫か?ステラ。俺の後ろにいてくれ」
「はい。……足手まといにならないようにします!」
「頼りにしてる」
「……イチャイチャしてないで行きますよ!」
「してねぇよ……」
そして、三人はアジトの奥へとだんだん進んでいく。その間も十数人のメンバーが待ち構えていたが、副団長と悟の猛攻、ステラによる手厚い支援によって、楽々進んでいく。
ただ、悟は一抹の疑問を抱いていた。というのも、妙に近代的な基地なのだ。まるでSFの世界というか、ひどくこの世界とミスマッチした内装に、若干の戸惑いを感じていたし、ワクワクも感じていた。
二人は疑問に思ってはいないのだろうか?
ふと気になり、二人の様子をうかがうも、このアジトについて触れるような様子もなく、ただ前へ前へと進んでいくだけだった。
「……結構進んだけど、あれで全員だったのだろうか?」
「どうでしょう……。また扉ですよ?」
「しかも……」
三人の前には、三つの扉があった。その扉というのも、近代的で、俺達の世界にもまだ存在してないような扉だ。
恐る恐る扉に近付いて、扉の横についている看板を確認すると、左の扉は研究室と書かれており、真ん中の扉には会議室と書かれており、右の扉には、居住区と書かれた看板があった。
「居住区……。いや、研究室とか言うのも不思議だが、これはちょっと異質な感じだな……。地下で居住区か……」
「ホントですね……。どこに行きましょうか?」
「じゃあ、適当に居住区で。ちょっと気になる」
「では、私たちは会議室に行きますね!」
二手に分かれて、調査を開始した三人。
悟は扉が開くと唖然としてしまった。なぜなら、特に何もなかったからだ。あるのは奥の方に扉があるだけで特に何もなかった。とはいえ、扉があるなら進む。それがルールみたいなところある。
そう思って、改めて気を引き締め、恐る恐る足を進めると、天井から偉くごつい人が現れて身を退いてしまった。
「ナニモノだ?なにやら上が騒がしいと思って見てきたら、妙な奴がいるじゃねえか」
声は低く、スキンヘッドのその男は、すでに臨戦態勢で、俺に対する質問も、形式的なものでしかないという事が感じられた。
「……まぁ、ちょっと用事があったんだ。今回の一件について聞きたいことが……」
悟がそう言いながら一歩スキンヘッドの男に近付くと、男は急接近し、アッパーをお見舞い。すんでのところで避けた悟は、「ふへぇ……、結構鋭いな。折角なら、もうちょっと実力が見たいな」。
悟は指をくいくいっと曲げ、挑発した。これは、男と完全な肉弾戦に持ち込むためだ。なぜなら、先ほど天井から男やってきたというのに、天井には通気口どころか、穴一つないのだ。
それを奇妙に思った悟は、少しでも能力以外の先頭に持ち込み、自分の能力を隠し通すつもりでいるのだ。
「ふん。まともにやっても勝てないのは、見たらわかる。魔力強化をしても、勝てるか勝てないか……。だが、魔術を使えば別だ。俺に与えられた魔術があればな」
スキンヘッドの男がそう言うと、悟の前からパッと姿を消した。
「……姿を消す能力?」
だが、それなら天井から現れた理由が分からない。見たところぶら下がるようなものもない。
悟が行動できないでいると、突然足元からスキンヘッドの男が現れ、それと同時にストレートを喰らわせた。
「!?」
よろけた悟が前を向きなおすと、またも姿が無い。また足元や天井から現れると思った悟は、上下に視線を動かすが、見当たらない。
戸惑っていると、今度は右から拳が飛んできた。
「……っツ!イッテェな!どこに居やがる!?」
悟はその場にとどまることを危険と思ったのか、がむしゃらに動き始める。
分かっていることは、どこからやってくるのかは、何とか出現する前に確認できる点だ。反射神経でなんとか避けられる範囲で理解できる。そして、攻撃の時には姿が現れることだ。
だが、避けられるといっても、それはある程度攻撃の方角が分かる場合だけだ。
そうこう考えていると、今度は脚で首をからめとられてしまう。そして、スキンヘッドの男が、体重を後ろにのけぞり、悟を自分ごと倒そうとするも、ビクともしない。
「嘘だろ!?」
「捕まえた!」
悟は、片手で絡めている足を掴み、もう片方の腕で、足に一発お見舞いした。
スキンヘッドの男の足の骨は粉々に砕けてしまい、たまらず男が絡めていた足を解いた。
「……ちょっとだけ分かってきたぞ」
ミステリーだと思ったら、アクションになってました。が、安心してください、ミステリーも進行中です!