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異世恋は、夢の中で……  作者: おうないがー!
過去と体育祭と
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放任主義

「それで、野生の時代ってどういうこと?」

「ああ。ふぉっふぉ待ってくらはい……」


 一言断りを入れると、口に入れたパスタを急いで飲み込んだ。


「……う、うぅん。実は、今でこそこんな立派な国家というものができていますが、元々人はそんなに群れる生き物じゃなかったんです」

「へぇ~……」


 俺達とは全然違うな……。俺たちはむしろ、最初っから群れないと何もできない生き物だっただろうし……。


「でも、そうだとしたらどうやって生き延びてきたんだ?」

「そちらの世界ではどうか知りませんが、私たちには魔術がありますから」


 あ、そっか……。いいなぁ……。いやまぁ俺も能力使えるけれども……。


「でも、災害やら何やらを越えるには、どうしても国なんかが必要でした。そこから細かい変化はありましたが、一番安定しているのがこの資本主義というわけです!」

「なるほどね?でも、反対とかもあったのでは?」

「えぇ、もちろんです。そう言った方から国や民を守るのが、私たちの仕事です」


 副団長は綺麗な敬礼をして、にっこりと微笑んだ。


「……副団長って、団の中でもモテますよね?」

「え?……残念ですが、交際したこととかなくて」


 嘘だ!絶対嘘だ!あり得ない!この世界の男性は皆奥手なのか?


「というか、交際にはあんまり興味が無いって言った方が良いですかね」


 あー……。そう言う事ね?その可愛い声で、何度も男の心を切り刻んできたんですね?


「……なるほど。……ん、なんか……、めっちゃ眠くなってきた」

「大丈夫ですか!?」


 あー……、これは時間切れだ。多分もう目が覚める。


「ごめんなさい。もう目が覚めるみたいです……。さようなら……」

「うえぇ……。私どうしたら……」




 声が徐々に小さくなり、ついに消えてしまった。


「悟ぅ!地獄の特訓するー?」

「……う、ううん……。嫌」

「じゃあ起きなさい!」

「ふぁぁ……」


 大きなあくびをしながら重くなった体を起こす。


 おぼつかない不安定な足取りで階段を降りる。ただ、この一階に降りる時は嫌でも目が覚めるから割といい。しっかり手すりにはつかまろうね。俺、一回転落して死にかけたからね!


 朝食を食べ、制服に着替え、靴を履く。ごく当たり前の日常がまたやってきた。でも、こういう日常があるからこそ、夢が楽しいのかね?そう思うと、ありがたくはあるけれども……。もうちょっとマシになってくれませんかね?


 暑いし……。マジで夏は制服を呪ってしまう。上半身はいいけど、下半身がマジで暑すぎる。なんで長ズボン?マジで嫌い。黒なのももうイジメだろ!


 学校に着き、正門の前で少し足を止めてしまう。理由はないが、何故か周りを見渡し誰かを探してしまう。多分、去年のことを想い出してしまったせいだろう。そして、夢の中で調子を崩されたからだろう。おのれ副団長……!


 少しの間見渡していると、滴が見つかった。


 少し早歩きで滴の方へと向かう。


「……滴」


 小さな声で声をかけ、肩をトンっと軽く叩く。


「ん?なに?」

「……いや、ちょっと話しかけただけだ」

「なにそれ!きもいんだけど!」

「……ちょっと調子崩されてな。今日はちょっと気持ち悪いかもしれないが、耐えてくれ」

「はぁ!?」


 暑さにもやられてしまったかもな……。ちょっと頭が回らない……。急に気温変わんなよー……。

 

 その後は、ダラダラとしながらもなんとかしのぎ、ついに部活の時間。今日は流石に剣道には行けないので、オカルト部にやってきた。今日は小林が楽しそうに携帯を見てる。


「おお……。こばこば……」

「殺していい?」

「うへぇ~……」

「……なんなの?いつにもましてきもいんだけど……」


 眉間に皺をよせ、明らかに迷惑そうに滴に話を振る。


「なんか、調子悪いみたいね。夢の中で何かあったか、単純に暑さでやられたか……」

「まぁ、急に暑くなったからなぁ……。わからんでもないけど……。にしても……」


 俺は、はたから見たらどんな状態になっているのだろうか?とりあえず力が全然入らない。


「ダリの時計みたいね……」

「いや、ダリい時計の間違いでしょ」

「上手いこと言ってんじゃないわよ!」

「上手かったらいいじゃん!」


 お?どうしたんだ?


「……迷惑か?」

「迷惑って程ではないけど……。なに、次はメンヘラ化?」

「もう、一旦寝なさいよ……。見てられないわ」

「ひっでぇいいようだな……。でも、ねむくはないんだよ……。というか、寝たらまた調子崩す気がする……。あ、滴」


 俺が力のない声で呼ぶと、ちょっとイラっとしたような口調で「ん?なによ」と聞いてくる。


「……いつもありがとうな」

「…………は?」

「いやー、なんか昨日、昔のこと想い出してさー……。お前はいい奴だよ」

「…………本当に気持ち悪いんだけど……」

「そうかもな……。でも、このままグダグダ行って、言う機会逃すの嫌だからな……。マジ感謝。……じゃ!もう帰るなー……」


 やべぇな俺。めっちゃ脳が回ってないわ……。これ以上喋って変なこと喋らないようにしよう、という謎の危機感が働き、何とか帰る決断を下せた。


「……もっとちゃんと言いなさいよ」


 俺が部室を出る時何かボソッと滴が言ったが、俺の耳には届かなかった。そして、酔ったようになりながらも、家へと帰っていき、自分の部屋でゴロンと倒れこんでしまった。


 悟が去った後の部室では―――。


「……なんか、えげつなかったですね」

「…………え、えぇ、そうね」

「……照れてます?」

「は、はぁ!?ないないない。いやでも、逆に考えて見なさいよ、急に友達に感謝を伝えられて、照らない人いる?」

「照れてんじゃん……」


 などと、むず痒い会話が繰り広げられていた。

 

 だが、小林もこれ以上この話題はちょっとやめておこうと思ったのか、別の話題を想い出したように切り出した。


「そういえばなんすけど。悟って、私が友達になった時、二人目って言ってたけど、美代さんは含まれてないんですか?」

「ああ……。美代は悟にとって親友だから……」

「え……。そうなんですか。まぁでも、話では滴先輩より付き合い長いっすもんね……」


 小林は得心を得たようにうなずきながらも、半分信じていなかった。なぜならこの小林、男女の友情を基本的に信じていないからだ。


悟君は結構脳がやられてますね……。心配です。まぁ、すぐになれるんですけどね!

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