体育祭が近くなってきた!
やばい!後半眠くなってきました!許してちょんまげ!
『私たちは、私たちの付き合い方を見つけていくべきなの!分かる?』
一年前、といってもまぁ、大体半年ぐらい前か……。日が沈んでいき、オレンジ色に染まった教室で、滴は俺に言った。夕日のせいもあってか、謎に神々しさがあった。
救世主。当時俺は、大げさにもそんなことを思った。
「うい~……。今日は来たぞ」
「あら。どーも、休みの日に美代と二人で会ってた、約束破りの犯罪者さん」
「……」
なんでそれを知ってやがる!何?お前ストーカーなの?なんて恐怖と怒りを感じながら、視線を少し落としてみると、そこには小林と美代がいた。
「……美代?言ったの?」
「いや……」
「この前言ってたじゃん、二人用事があるって」
小林が弾んだ口調で言った。
てかそうだった。小林に言い訳するときに言ったんだった……。
「……てか、小林は上手くいったのか?」
「見て分からない?」
そう言って、凛とした笑みをこちらに向けてくる。
「そうか……、うまく行ったんだな」「そう、上手く行かなかった……」
はぁ……。なんだ、やっぱりやればできるじゃないか!……て、え?
「今なんて?」
「……う、上手く……、グス……、行かなかったの!」
えぇ……。じゃあなんで笑ってたの?
「もう、笑うしかない……」
なるほど……。
「ご愁傷様……」
「しんどらんわ!」
「でも安心しろ、お前だったらもっといいひと見つかるから……」
「ちょっと?私の弟を馬鹿にしてるように聞こえるんですけど?」
「いや……、そういう事じゃなくてだな?ほら、なんツーの?こういう時の常套句的な奴?」
そう言うと、小林がすっと立ち上がり、俺に一発腹パンを決める。しかし、俺も(元)軍人の息子。そして、母さんの謎の猛特訓を受けてきたのだ、全然喰らわない。余裕余裕。残念だったな!
余裕の笑みを浮かべていると、小林が一言……。
「キっモ!」
「ぐはぁぁ!」
女子からのシンプルなキモは一番喰らう……。胸のあたりが痛いよ……。
「ごめんて……。てか、俺が言いたいのは、大誠君以外にもいっぱい男子はいるってことだ」
「まぁ、そうかもしんないけどさ……」
正直、小林の気持ちもわからんでもない。折角舞い降りてきたチャンスが、失敗に終わったのだ……。それは悲しいだろう。
「……てか、さっきの笑顔は大分よかったと思うぞ?」
「はいはい。可愛いって言いたいんでしょ?分かってるって、後輩として可愛い的な意味でしょ?参考になんないんだってそう言うの!」
「……いや、別にそんな事ねえぞ。普通に可愛いと思うけど……。つーか、それはお前に限らず、他の女子にも言える。マジで女子の笑顔は最強」
「ふ~ん……」
尚もジトっと疑いの目をこちらに向けてくる。
「なんだよ、いやなの?」
「いや、別に嫌とかではないけどさ。なんか口説いてんの?みたいな」
「……俺は別に好きな人が居んだよ。わざわざ口説かねえよ」
「じゃあ、いなかったら?」
「……う~ん。ちょっと考えてもいい?」
俺が一言断りを入れると、滴の方からは「はぁ……」と呆れ気味のため息。美代は静かに小林を見つめていた。
「……いや、やっぱ無理かな。少なくともこの高校じゃ無理だな。うん。というか、もしかしたら今生は無理かもしんない」
自分で言ってて泣けてくるよ……。
「そこまで自信無くさなくてよくない!?……ほら、悟は悟で、なんやかんや気は使えるんだし……、ほら」
歯切れ悪いな!無理しなくてもいいよ!と、つっこんでやりたかったが、出来なかった。これだからモテねえんだよ!と、心のどこかに住み着く「俺アンチ」が言った。
「お、おう……。ありがと」
「……あ、てか、そろそろ体育祭じゃん!完全に忘れてた!」
急な話題転換に若干戸惑いながらも、何とかその話題にしがみつく。
「そういえばそうだったな……。俺らの大会も近いから、すっかり忘れてた」
「は!?」
美代が急に席を立つ。口を手で抑え、なにやら妙な汗をかいている。
「もうすぐ大会だった!」
「「「え……」」」
美代以外の俺たち三人は、一様にボソッと言い洩らした。
「……美代?もしかして忘れてた?」
「忘れてた……」
いや、衝撃の真実!みたいな感じで言われても……。
「……練習行く?」
「いや、今日は……、いや、やっぱり行ってくる!」
「……」
美代は、電光石火の速度で部室を出て行った。
「あなたは良いの?」
滴が尋ねてくる。
「まぁ、俺は一位とかになりたくないし……」
「……そう。もったいない……」
滴が棘のある言い方をした。本当にもったいないと思ってくれてはいるのだろう。だが、俺は一位を取りたくない。
「そうでもない。変に一位を取っちまうと練習が厳しくなったりするからな。俺はそこら辺の調整に手を抜いたりしない」
「そんなのに調整なんていらないわよ!」
「……なんでそんなに口挟むんだよ」
「別に挟んでないわよ!突き刺してんのよ!」
もっとひでぇじゃねぇか!しかも別に突き刺さるほど切れ味ねえよ!小林のキモが一番切れ味あったわ!
「ちょー……、結局何の話だったっけ?体育祭だっけ?オカルト部はどうするの?リレー、出るの?」
「「出ない!」」
「そこは息ピッタリなんだ……」
出るメリットがない。というか、人数が少ない。だから絶対に二周走る人が出てくる。そして、この中で一番足が速いのは俺!俺が二周走らないといけない。だから絶対にでたくない。
だが、滴が走りたくない理由が思い当たらない。
「めんどい」
みじか!てか、心読んだの?ってぐらい完璧なタイミングだったけど……。
「そっか。まぁ、あたしとしてもあんまり走りたくなかったからいいんだけど……」
と、ひとしきり会話も終わり、あとは謎の時間を過ごすだけとなるはずだったのだが……。なーんか忘れてるような……。
ガラっと勢いよく扉を開く音がした。
「悟君!クラブ対抗リレーの順番最後でいい?」
「……忘れてた。……いいぞ」
健康祈願!