魍魎風情
めっちゃ強いけど、なんか群がる奴ら蹴散らしてたら、周りから恐れられていたっていう設定が好きです。
強さに無自覚。気がついたら有名人みたいな。
あぁ、楽しい楽しい楽しい楽しい!! 人の“願い事”を叶えるのは楽しいなぁ!! 腕を引きちぎる感触も、助けを求めて泣き叫ぶ声も、どれも楽しくて仕方ない。もっと聞きたい!! お前の絶叫を。
目の前に広がるのは残忍な光景。魍魎風情に襲われた子供の腕は無惨にも引きちぎれ、溢れるばかりの血が吹き出していた。それを弄ぶように、歪な生き物は痛めつけている。
「そんなちんまい生き物と遊んでないでさぁ」
突如、その背後から声が聞こてきた。成熟した女の低い声。振り返るまでもなかった。何故ならそいつの首は、女の手によって拗られていたから。その魍魎の首はまるで梟のように一回転されていた。
「あたしとも遊ぼうや。なぁ?」
いつの間に。と思った。今の今まで気配一つも感じさせない。それは突如として現れた。
大きく見開かれた双眸。狂気さえ感じさせるギラギラしたそれは、相手を見て朝笑う。口に浮かんだ三日月は、今からでもその醜い生き物を食ってやろうと、赤い舌を出した。
「あー成程、馬鹿になると視覚も聴覚も、感覚さえに鈍んのか。参考にするよ。くそ雑魚」
「がっ..............」
頭上にめり込んだ爪が容赦なく頭蓋を鷲掴む。問答無用で頭蓋をかち割り、中にあるぐちょりとした物まで到達していた。しかし女はそんな事はお構い無しに、より深くまで指をめり込ませる。
「ねぇもっと聞かせてよ。どうすればそんな風に鈍くなれるの? ねぇ!!」
女の細い膝が魍魎の腹を蹴りあげた。サンドバッグのように幾度となくどつき回す。その目は依然と変わらず、寧ろ輝きを増していた。
不味い。殺される。こんな奴とまともにやり合ったら命なんか無い。魍魎は最期を悟り、自分の頭を犠牲にし、その場から逃げ出した。外された頭蓋から大切なものがぼろぼろと零れ落ちるが、あの恐怖の塊である物から逃げることが最優先事項でたった。
「あ、一個言い忘れてた」
逃げる魍魎を女は追いかける訳でもなく、ただ大声で言った。
「あんたが相手にしてんの、あたしだけじゃ無いからね?」
「だっ」
直後、心臓を矢が貫通した。穢らわしい体が土塊と化す。やがて見る影も無くなった砂の山を一瞥し、女は一人の男に声を掛ける。
「終わり。帰るよ、兄貴」
「もう少し柔い始末の方法を考えて欲しいかな?」
地に落ちた弓矢を拾い上げると彼は困ったような笑顔を浮かべた。惨劇を咎めるには余りにも甘く、生ぬるかった。端から咎めるつもりなど無いのだろう。
「あの子さ、手足千切られて、悲鳴を上げてたんだよ。それを弄ぶようにしてたから、仕返ししてやった」
元魍魎だった砂の山を足の甲で蹴りあげると、怒りさえ感じさせる双眸で男を見た。
「これはあたしのエゴ。だから誰の指図も受けない」
余りにも妹ちゃんが普通の振る舞いしてるので、書きました。
戦闘シーンはこうであって欲しい。