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凱旋

3回目のワクチン、副反応が中々厳しいです。

明日仕事、大丈夫かなぁ

 普通の人族からしてみればありえない快挙であるはずが、まるでそのような素振りを見せずに、さっさと倒した獲物を収納してこの場から撤退してしまう。


 門の周辺では暫し静寂が訪れたが、漸くこの場に留まっている【勇者の館】の冒険者が仲間の救出、特に毒に侵されているルーカスの救出活動を始めた。


「何だ?あいつらは……いくら何でも、異常だぞ!」

「確かにな。だが、今はルーカス様達の救出が先だ」


 一気に騒がしくなる門の外と同様、門の中、ギルドに戻っている【癒しの雫】周辺も騒がしくなっている。


 少し前にミハイルが使用した武具によるとてつもない揺れ……ミハイルはなるべく獲物のいそうな方向にその攻撃を向けていたのだが、強力な力は周囲に少なからず影響を与えるので、門の内部もかなり揺れていた。


 その揺れが魔獣による攻撃だと勘違いしている町の人々は、悠々と歩いている【癒しの雫】に対して怪我がないかを心配していた。


「シアちゃん、大丈夫かい?怪我はないかい?どこか痛くないかい?」


「大丈夫です。ありがとうございます。皆さん!既に魔獣の脅威は去りました。もう安心です!」


 魔獣の状態よりも、何故か自分達の怪我を心配してくれている顔見知りの人々を安心させるように、笑顔でシアが勝利を宣言する。


「本当かい!流石は【癒しの雫】だ!」


「まさかミハイルさん、あの切れ味の良い包丁でたたき切ったんじゃないだろうね?」


 一瞬で人々にも明るい笑顔が戻り、冗談も言えるようになっている。


 危機的状況を打破してくれた【癒しの雫】に対して恩を返そうと、道中の人々は軽食やら飲み物やらを半ば強引に押し付けて来るので、中々ギルドに到着できない【癒しの雫】。


「どいてくれ!」


 そこに、ある程度応急処置がされたのであろう【勇者の館】所属の冒険者達が、門の外で戦闘していた仲間を抱えて町の中央方向、【勇者の館】のギルドがある方に向かってかなりの速度で走っていく。


 抱えられている人の中には非常に顔の売れているルーカスもいた。


「ありゃ?ルーカス様じゃないかい?前回は見事に町を救ってくださったけれど、今回はダメだったのかい?」


「えっと……そうみたいですね。私達が到着した時には前線は崩壊していましたので、町の安全を考えてこちらで対応させて頂きました」


 前回のスピナ討伐を行ったのは【勇者の館】になっていた事を思い出し、その部分はあいまいに返事をするシア。


 そんなこんなで漸くギルド【癒しの雫】に到着したのだが、そこに待っていたのはリリアの父であるサステナ・リビル公爵だ。


「皆さま、王都の危機を救って頂きありがとうございます。既にリリアより報告を受けておりますが、想像以上の成果に感激しています。恐らくあの程度であれば疲労もなさそうですし、宜しければこれから王城に同行頂けますか?」


 公爵からこう言われては、“はい”か“喜んで”しか選択肢がない【癒しの雫】。


 どう考えても良い話がされるだろうと考えながらも、やはり王城に入る事には若干の抵抗を持ちながら進む【癒しの雫】。


「クオウ様。これからどうなるのでしょうか?」


「大丈夫だよ、フレナブル。俺の経験から、何か褒賞を直接頂けるってとこだと思うけどね。何れにしても、悪い話じゃないよ」


 人族の動きを完全に理解している訳ではないフレナブルは少々心配そうにクオウに確認しているのだが、その不安を一蹴できるように、努めて優しく説明するクオウだ。


 アルフレドはあまりそう言った事に興味はないらしく、リアントと堂々と歩いているし、鍛冶士三人組は完全にこういった状況に慣れているのか、緊張すると言う気持ちを持ち合わせていないのか、ひょっとしたらうまい酒が出てくるかもしれないと、期待に胸を膨らませている。


カスミとシルバはシアとペトロと共に何も気にする事はなさそうに普段通りに談笑しながら歩いている。


 最後方でラトールを抱えながら、フレナブルと共に仲間の状況を見ながら進むクオウは、ひょっとしたらと言う思いはある。

 そう、ギルドランクの上昇だ。


 以前、同じように国王に呼び出された時に、突然ランクアップの宣言がなされた。


 今の【癒しの雫】はAランクであり、所属の冒険者はSランクとAランク。


 冒険者個人に対しては、今回の討伐対象がAランクの魔獣である為にSランク昇格への成果としては足りないはずだが、実際は少々異なるが、ある意味特殊個体と同じ程度、場合によってはそれ以上の脅威となっていたAランク四体をギルドとして対処したとなると、ギルドとしてSランク相当の実績と認められても良いのではないかと考えたのだ。


 その思いは自分の胸に留めているクオウ。

 余計な事を口にして、仲間をぬか喜びさせる事を防ぐ。


「まっ、行けば分かるでしょ」


 あれこれ悩んでも、そう時間はかからずに真実に辿り着くので仲間を視界に入れつつ王城に向かう。


「面を上げよ」


 いつも通りの一連の作業が行われ、国王ホトム・ジャロリアの前に並んでいる【癒しの雫】だ。


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