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98/153

四星(5)

誤字報告ありがとうございました

 鍛冶師三人組が敢えて魔族、そしてハーフのペトロに武具を渡さないのは、基礎能力が違い過ぎて武具としての性能なのか、使用している人物の能力なのか判別がつきづらいからだ。


 当然最後の一体に対処するための筒も人族が使用する必要があるので、ここは代表としてミハイルが使う事にした。


「取り敢えず、俺が最初に手本を見せるぜ。地中にコソコソ隠れて居やがるピオン一体を仕留めるから、良く見ていてくれ!」


 そう言いながら、筒を地中に軽く差し込んで魔力を通すミハイル。


 直後、周囲が激しく縦に揺れた。


 あまりの大きな揺れに巨大な魔獣であるスピナですらよろけていたほどで、門に対しての侵攻を止め、周囲を警戒している。


「こいつは、音の武具だ。地中に巨大な音を出して振動させて、体の内部を破壊する……っと、上手く行ったみてーだな」


 ミハイルの視線の先には、地中からまるで浮かび上がるかのように姿を見せたピオン。


 もちろん一目見ただけで生きていない事は分かる状態だ。


「そんで、シルバは炎、カスミは風、マスターは重力だ。それぞれ獲物が被らないように狙いをつけて、魔力を通してくれ!」


 一連の流れ作業のように指示を受け、取り敢えず三人共に目標が被らない様に軽く相談したうえで、ミハイルの指示通りに狙いをつけて筒のような武具に魔力を通す。


 その結果は予想通りと言えば予想通りであり、ルーカスの全力でも小さな傷しか与える事が出来なかったスピナの首を、風の武具で奇麗に切断したカスミ。


 強固な外殻に守られているピオンを重力で軽くペシャンコにして見せた、重力の武具を使ったシア。


 最後は、巨大なスピナからそれ以上の巨大な火柱が立ち上がり、暴れる暇も与えない程の時間で黒焦げにして見せた、炎の武具を使用したシルバだ。


「ミハイルさん……あんな威力、【勇者の館】の奴らが群がっている時に使ったら大惨事じゃないか!」


 討伐完了を喜ぶのではなく少々違った方向に話しが行くのもお約束だが、想定通りに迫りくる魔獣を奇麗に始末した【癒しの雫】。


 【勇者の館】は前回と同じ様に全員が気絶し、ルーカスは毒に侵され泡を吹いている。


 唯一異なる点と言えば、今回はその醜態をかなりの人が目撃している事であり、公爵令嬢のリリア、そして護衛騎士であるゴルダも見ている。


 リリアは【癒しの雫】の非常識さを以前から肌で感じているおかげかあまり驚いていないが、ゴルダは違う。


 ピオンが現れた段階で自らも決死の覚悟で向かわざるを得ないと思っていたのだが、結果はご覧の通り圧勝。


 何の危なげもなく、そもそも遠距離で軽く始末してしまっていた【癒しの雫】。


 彼らが使っていた武具、フレナブルが時折お忍びで仕留めて来るS+の魔獣を素材にしているので、いくらAランクに支援魔術で強化されている個体であったとしても難なく始末する事が出来る程の優れものであり、ミハイル達の高い技術も相まっての結果だ。


 その素材を加工できる喜びから気合が入りまくっていた魔道具三人組は、その成果を試したくて仕方がなかったのだ。


 結果、彼らは満足する結果を得られて幸せそうな顔をしているのだが、その表情を見て、ゴルダは自分の常識が崩れて行くのを感じていた。


 こうして【癒しの雫】はあっさりと前回以上の脅威を始末してしまった。


ブグマ、評価頂けると嬉しいですです

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― 新着の感想 ―
[一言] >ルーカスは毒に侵され泡を吹いている。 まあ頑張れ、誰かが気づくまでたえるんだ
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