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四星(4)

 少々遠くで戦闘は継続されているのだが、やはり予想通りに【勇者の館】は押され始めて、戦場は門に近づいてきている。


 ある一定の距離以上近づかれた場合には、例え【勇者の館】が戦闘を継続していたとしても即座に【癒しの雫】が攻撃を仕掛けると決めている。


 町の安全が第一であり、この行為は獲物の横取りにならないと言質を取っている。


「予想通りになりそうだな。一発目は……遠距離のこれだ。そうだな、今回はシルバにお願いできるか?」


 徐に座り込んで、収納袋から一つの試作品を取り出すミハイル。


 彼らの中では【勇者の館】が敗戦するのは最早確定事項であり、【癒しの雫】として試作品のテストを行う行動を始めていた。


「えっ?一発目が俺……で良いのかな?」


「ハハハ、気にすんな。一発ドカンとかましてやれ!」


 豪快な笑い声と共に、半ば強引にミハイルから小さい杖を持たされたシルバだ。


 ルーカスを始めとした【勇者の館】の冒険者は、必死で目の前のスピナに攻撃を仕掛けている。


 防御は他の冒険者の魔術に依存して、攻撃だけに意識を割いて猛攻撃を仕掛けている。


 防壁内部にある【勇者の館】からは継続して武具や冒険者が送り込まれているのだが、今を持って尚、目の前の二体の巨大な蛇型魔獣であるスピナは大きなダメージを受けた様子が見受けられない。


 流石にここまで攻撃に集中している上に武具も非常に高価な物を惜しげもなく使っているので、前回のように傷もつけられないと言う事はないが、討伐するには程遠い。


 攻撃を仕掛けている冒険者、防御の魔術を行使している冒険者とも、スピナの攻撃によって吹き飛ばされているが、後から来る追加要員のおかげで何とか戦線は維持できている。


 しかし、後から来る冒険者は徐々にランクが低い冒険者になるので、徐々にではあるがスピナ二体が門に近づいている。


「このままでは……いや、絶対に俺達【勇者の館】で処理する以外にはあり得ない!」


 気合と共に、スピナの首を跳ねようと飛ぶために足に力を込めるルーカスだが、その直後に激痛が走る。


「え?ぐぁ~~~~~~」


 あまりの声に、戦闘中の轟音が鳴り響く中でも良く聞こえている。

 その注目の的になったルーカスの足元には、サソリ型の魔獣であるピオンが見えている。


「前回と同じだけでも【勇者の館】には対処する事は無理なのに、追加でピオンかよ。どうせあいつも支援魔術で強化されているんだろ?バーミル」


「……そうだね。ミハイル、正解だ」


 驚くべき事実であるはずなのだが、規格外が味方にいるせいか、感覚がマヒしている【癒しの雫】のメンバーに驚きはない。


「良し、それじゃあ……と言っても今シルバがそいつを使うと、無駄に纏わりついていやがる【勇者の館】の奴らも始末しちまいそうだぜ。チッ、立場を弁えて、大人しくギルドの中で怯えていりゃ~良いモノを!クソ雑魚が!!」


「まぁ、ミハイルさん。完全に同意します。もうここは思い切って、ゴミ掃除と割り切るのは如何でしょうか?」


「えっ?いやいや、フレナブルさん。術を発動するの、俺ですよ?ちょっと嫌なんですけど?」


「アハハハ、そうねシルバ。私も嫌だわ。愛する主人が人族殺しだなんて。ごめんなさいね、フレナブルさん!」


 全く緊張感のかけらもないメンバー達。


「そうですね。これは失礼しました。カスミさんの仰る通りです。多分に私情が入ってしまいました。ですが現実的に困りましたね。このままこちらに来るようであれば、私の方で処理せざるを得ませんね」


「まっ、まってくれ、フレナブルさん。この試作品を実戦で使えるチャンスなんだ。何卒俺達にチャンスを!!」


 本来の目的をすっかりはき違えているのだが、結局はこちらに向かっている魔獣を始末する事には変わらないので、取り敢えずシアは魔道具三人組とフレナブルのやり取りを黙って見ている。


 そうこうしている内に【勇者の館】の冒険者は吹き飛ばされており、追加で戦闘に参加しようとしていた新たな冒険者は、ルーカスですら倒れているその惨状を見て恐れおののき、門付近から動けずにいた。


「おっ、これで大丈夫だな。フレナブルさん、ピオンがいるとなると、地中に他の個体がいるかもしれねー。正確な数は分かるか?」


「……見えているスピナ二体、ピオン一体、地中にもピオン一体ですね」


 あっさりと看破するフレナブルの実力は良く分かっているので、このまま話は進む。


「よっしゃ!四回も試せるぜ!」


「おぉ!じゃあ、俺はこれだ。カスミさん、この俺が錬成したこいつを使ってくれ!」


 シルバが持っている武具と見た目は同じである小さい筒をロレアルから渡されるカスミ。


「じゃあ俺はこれだ。マスター、これで試してみてくれ!」


 鍛冶士三人組の最後の一人であるバーミルも、全く同じ見た目の筒をシアに渡す。


もう一つの投稿作、まもなく完結になります。


https://syosetu.com/usernovelmanage/top/ncode/1747739/

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