新魔王ゴクドの攻撃(3)
仕事を完遂するべく、慎重に調査を進めていた魔族の二人。
絡んできた冒険者の視線と、受付、周囲の冒険者の視線を感じつつも、ボードを見ているふりをしながら作戦を練っている。
「俺があいつと騒ぎを起こす。丁度良いだろう?あの物言いが気に入らねーからな。その間にお前が作業する。これでどうだ?」
「俺も一発ぶん殴りたかったが、わかったぜ、それで行こう」
構造物に対しての知識があるのか、重要な支柱がどれであるかをこの短時間で完全に見極めていた。
今回の依頼内容は建屋の破壊だと認識している事から、さほど戦闘力は高くなく、建築知識のある者が選定されている結果だ。
再び踵を返して受付方面の絡んできた冒険者に向かう二人。
「そう言えば、このギルド【勇者の館】は何故Aランクになったんだ?」
突然冒険者に聞こえるように受付に問いかける魔族。
「そ……それは、少々行き違いと言いますか何と言いますか……」
「テメーラには関係ねーだろ?余計な事を聞くもんじゃねーぜ?」
言い淀んでいる受付に被せるように、想定通り少し前に魔族の二人に絡んできた冒険者が再び大声を出しながら近づいてくる。
「だが、王国最強の冒険者が存在し、王国最強のギルドと名乗っている以上、他の連中はその辺りは気になる所だろう?」
「そうだな。俺も気になるぜ。なんであの程度のダンジョンの岩場にギルドマスターが無様に挟まって放置されていたのか……とかな」
あざ笑うかのような二人の魔族の態度にブチ切れる冒険者。
「テメー、吐いた唾、飲むんじゃねーぞ。ちょっと来い!」
「Sランカーであるルーカス様を馬鹿にしているのか?良い根性だ!」
予定通りに絡んできた為、魔族の一人が相手を煽りながら相手をする。
「お前程度、俺一人で充分だ」
ここの所依頼が上手く行かずにストレスが溜まっていた【勇者の館】所属の冒険者達、そして本部から書類について文句を言われて苛ついており、本来は同僚であるはずの受付エリザのストレス解消の捌け口になっている他受付も、誰もこの行動を止めるような事はしなかった。
鬱憤を晴らさんとばかりに、魔族の一人を除く全員がギルドの外に移動したのだ。
「ハッ、このギルドはどれだけユルユルなんだよ。楽勝じゃねーか」
残された魔族はさっさと受付側に侵入して、懐から取り出した魔道具を目的としていた柱と、もう一つの柱に取り付けて、同僚である魔族が暴れているであろうギルドの外に移動する。
「こっ、この野郎……」
冒険者は蹲って苦しんでおり、同僚の魔族は平然としている。
その様子を驚きながら見ている【勇者の館】所属の他の冒険者と受付連中と言った構図が出来ていた。
「終わったぜ!」
「おっ、予想以上に簡単な仕事だったな。こっちも楽勝だ。こんな雑魚が王国最強ギルドのBランカー様だとよ」
「何だと?テメーら、俺達に粉かけるのが仕事か?どこのモンだ?」
周囲を囲っている冒険者が、魔族が言い放った仕事と言う言葉に反応する。
「あぁ、俺達の仕事。そう、仕事な。粉かけると言えばそうだが、まっ、その目で見てくれや!」
……ズッ…ズズン……
直後魔道具を起動した魔族。
地響きのような音と共に【勇者の館】の一部が崩壊したのだ。
「ギャハハハハ、良いじゃねーか。予定通りの破壊っぷりだ」
「【勇者の館】の破壊が俺達の仕事だぜ。良かったな。これで建屋も心機一転、ランクダウンに相応しい……」
二人の言葉は続かなかった。
あまりにもあっけなく仕事が終わり、大きな油断があったのだ。
このギルドは【勇者の館】であり、一応Sランク冒険者でありギルドマスターであるルーカスが存在しているという事を一瞬でも忘れてしまったのだ。
どう考えても建て直しが必要になってしまう程に要の支柱を破壊されたギルド建屋からルーカスが飛び出し、二人の首を即座にはねた。
その手には神々しい剣、鍛冶士、錬金術士達の技術の粋を詰め込んだ剣が握られていた。
「このカス共が……魔族か。どうやら新魔王も俺達を本当の脅威と認めているようだな。フン、ここまで姑息な手を使わなければならない程恐れをなしているのか。程度が知れると言うものだ」
「ルーカス様……流石です」
色々ずれているが、レゼニアとしては任務を完了し、ルーカスとしては膨大な改修費用が必要になり、ギルドの貯蓄を大幅に減らす事になったのだ。
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