【勇者の館】ルーカス(2)
誤字報告ありがとうございました
王城に呼ばれてしまった事に対して、若干の不安を隠しきれないミハイル。
「でもよ?普通本部の依頼とは言え、王城に呼ばれるとは……まぁ、悪い話じゃない事は分かるんだが、どうにも……な」
「大丈夫ですよ、ミハイルさん。どの道行くのは俺とマスターですから」
この呼び出しは同じように【勇者の館】にもかかっており、こちらでは【癒しの雫】とは真逆で再びSランクギルドに復活できるのではと言う期待から、ルーカスを含めて誰しもが過剰に良い方に反応していた。
「フハハ、今回の合同依頼は大成功だな。比較があれば、如何に【勇者の館】が優れているのか愚者共に理解させるのは容易い」
「まったくです、ルーカス様。その慧眼、恐れ入りました」
何故か【勇者の館】の宴会に、ギルド本部マスターであるツイマまで紛れ込んでいた。
直前まではルーカスについて行くか悩みぬいていたのだが、今回の依頼の成果によって、やはり【勇者の館】がジャロリア王国最強のギルドであると認識したのだ。
太鼓持ちの正しい姿勢を貫くツイマの態度に満足げに頷くルーカスは、非常に機嫌の良いまま眠りにつくまで騒ぎ続けた。
……翌日……
「【癒しの雫】と【勇者の館】の面々よ、面を上げよ!」
何故か王城の謁見の間に連れてこられて、渋い顔をしている【癒しの雫】ギルドマスターのシアと、事務職のクオウ。
王城に来たまでは良いのだが、そこで少々お偉いさんに何か言われる程度だろうと高を括っていたのだ。
一方の【勇者の館】は、これから起こる事、Sランク再昇格を言い渡される事を想像し、ギルドマスターのルーカス、同行しているAランク冒険者のドリアスとハンナも笑みを浮かべている。
非常に対照的な二つのギルドだが、ルーカス達は国王の発言の時点で気が付かなければならない事があった。
そう、呼ばれる順番だ。
王侯貴族はこの辺りの行動には非常に厳しい。
格上、格下を明確に区分するのは彼らの必須能力であり、今回の場合では格上が先に呼ばれる事になるのだ。
何故か喜びに満ち溢れているルーカスは、既に王侯貴族との謁見はシア達【癒しの雫】とは異なって経験しているのだが、再昇格に胸を膨らませているだけだったので、見逃してはならないその重大な事実には気が付かなかった。
国王、ホトム・ジャロリアの声によって顔を上げる五人のギルド所属の者達。
彼らの目に映った人物、階段の先の椅子に座っているのが国王だとは理解できるが、その横に立っている者が誰なのかは理解できない。
「此度の依頼、大儀であった。僅か一週間で街道が非常に安全になったと言えよう。だが、敢えて門から離れた位置を指定したのは何故だ?ルーカス」
本来は全ての場所の魔獣を始末する事が好ましいのだが、ルーカスが裏で【癒しの雫】を襲撃する計画を立てており、フレナブル達が助けに戻る事を少しでも遅らせるべく、町の近くの魔獣対策を除外した経緯がある。
そこまで知られているのか、冷や汗をかきながら必死で考えるルーカス。
そもそもこの依頼、自分と本部のマスターであるツイマしか知らない内容のはずなのだが、国王に自分が指示した事が明らかに漏れている。
正直に伝えられる内容ではないため、ツイマにしたように取り繕う。
「申し上げます。町近辺であれば我ら【勇者の館】が即座に対応できますし、普段から駆除しているために安全であると考えたのです」
その辺りの事実は知らない【勇者の館】の二人、ドリアスとハンナは黙ってルーカスの話を聞いているのだが、内容に違和感はないので、挙動不審にはなっていない。
「フム、理にはかなっておるな。その方達の仕留めた素材、余も見させてもらったぞ。特にSランクのジュラ。あれにはさすがの余も恐れ入ったわ。仕留めたのが、少し前までFランクギルドであったと言うのだから、二度の驚きである」
流石にジュラの名前を出されては文句を付ける事ができないルーカスは、内心の悔しさを表には出さずに笑顔を張り付けて黙って聞いている。
「それともう一つ。ゴスモンキもいた様だな。単体であれば十分な護衛で事足りるが、あれは群れを成す。相当数を始末した様で何よりだ」
何故かこの時の国王は、ルーカス達【勇者の館】を見ているのだ。
ルーカスは、自分達がゴスモンキの集団を倒したと言う報告はなく、何故見られているのかが分からなかったが、若干後方にいるドリアスとハンナは違う。
「して、その後方にいる二人はAランクだそうだな」
横にいる人物から書類を渡され、それを基に確認してくる国王。
「はい。我が【勇者の館】の多数のAランカーの中でも最も優秀な二人でございます」
まさか個人的にも二人Sランクに昇格させるのかと期待し、嬉しそうに言葉を返すルーカスだが、次の瞬間に真逆の事を言い渡された。
「そうか。そ奴らはAランクとしては相応しくない。よって今この場でAランクの資格を剥奪する。ホレ、ギルドカードを出せ」
言葉と共に、背後から騎士が二人近づき半ば強制的に二人のギルドカードを没収する。




