ルーカスの依頼(9)
ジャロリア王国のみならず、周辺国家にもお伽噺のように話が広がって恐れられている闇ギルド【闇夜の月】。
曰く、報酬が合えばどのような汚れ仕事でも請け負う。
曰く、今迄受けた依頼は失敗した事が無い。
曰く、魔王を討伐する実力も持っているが、先代魔王討伐時には報酬が合わずに依頼できなかった。
曰く、ギルドマスターに目をつけられると、たとえ王族であろうが死は免れない。
どこまでが事実か分からない噂が噂を呼び、更に誇大妄想によって余計な情報も追加されている。
だが、王侯貴族の一部の者達は【闇夜の月】が実在する事を知っており、実際に依頼を出していた。
もちろんその中に【勇者の館】のギルドマスターであるルーカスも含まれる。
そのルーカスから依頼を受けた謎の人物、ペトロシアと呼ばれた人物は、そのままの服装で【癒しの雫】に悠々と正面から侵入していた。
「こんにちは!ご依頼ですか?それとも加入希望の方ですか?」
受付にいるシアが、笑顔でペトロシアを迎え入れる。
例えフードで顔が見えなくとも人にはそれぞれの事情があるので、魔族すら仲間になっているシアにとってみれば怪しげな風貌も気にはならなかった。
そのシアの問いかけに対して周囲を一瞥してこの場には誰もいない事を確認したペトロシアは、相変わらず変声されたであろう声でこう告げる。
「貴方に用がある。【癒しの雫】ギルドマスターのシア」
「私ですか?はい。加入ですかね?フフフ、承ります!」
嬉しそうに、態々受付から立ち上がりペトロシアのいる方に向かって行くシア。
「今日はどう言ったご用件でしょうか?」
「ここに優秀な鍛冶士、元【鉱石の彩】の三人がいると聞いている」
「はい。武具のご依頼ですか?ですが本部通しの依頼になってしまうので、かなりお待ちいただいている状況です。それでも宜しいでしょうか?」
「……いま三人はいる?」
「はい。奥の作業場で仕事をしております!」
「そう。他には誰がいる?」
不思議そうにしながらも、正直に答えるシア。
「他のメンバーはギルド本部の依頼で町の外に、事務職のクオウさんは周辺住民の方々の依頼処理を行っているために不在です」
絶えず笑顔で説明しているシアの周囲に突然防御魔術が展開されると同時に、以前と同様に怪我をしていないのに相変わらず回復魔術、そして念話魔術が起動される。
その念話先は【癒しの雫】全員になっており、奥で作業をしている鍛冶三人組はものすごい勢いでギルド受付まで駆け込んできた。
「「「マスター!」」」
既に三人共武器を持って、ペトロシアとシアの間に割り込む。
「丁度良い。お前ら三人はここで死ね!」
「舐めんなコラ!こちとら毎日女神に鍛えられているんだよ!」
「お前程度には遅れは取らない」
「マスター、下がって」
ミハイルの言う通り、以前の襲撃を受けた後に三人共にフレナブルから厳しい修業を受けており、冒険者ではないのだが無駄に強くなっている。
その上に自分達でフレナブルが狩って来る超高レベルの素材をふんだんに使って作成した高性能の武具まで持っているのだから、かなり強くなっている。
しかし伝説とも言えるペトロシアの敵ではないようで、徐々に押され、三人共に傷を負っていく。
「クッ、何のこれしき!」
「まだまだ行くぞ!勝った気でいるなよ!」
「負けるか!!」
劣勢が続き再びミハイルが大きく切りつけられたのを見て、シアは持たされている短剣に封入されている雷魔術を行使する事を決断する。
恐らくギルドは木っ端みじんになるだろうが、三人がこれ以上の大怪我をするよりはましだと考えたのだ。
「ミハイルさん!三人共すこし下がって……クオウさん!」
当然念話魔術でシアが攻撃されている事を知った【癒しの雫】のメンバー。
一番近くにいるクオウが到着し、残りのメンバーには問題ないので依頼を続けるように指示を出す。
実はこの時点でフレナブルとアルフレドはシルバとカスミを抱えて全力で移動し、既に門の入り口付近まで到着していたりする。
シルバとカスミはクオウが魔族である事は知っているが元魔王で最強の存在とは知らないので、クオウの指示にあっさり従う姿勢を見せたフレナブルとアルフレドを不安そうに見てこう告げる。




