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ルーカスの依頼(7)

 突然大量のゴスモンキに襲われたドリアスとハンナ。


「なっ、ゴスモンキか!」


「これ程の集団、どうして突然?」


 魔獣ランクはBであるが、集団行動をとると知られている魔獣の為に一応二人は警戒を怠ってはいなかった。


 ここにいるゴスモンキは、アルフレドに良いように仲間をやられ、そしていつの間にか逃げられてしまったので興奮状態に陥っている。


 興奮状態故に視界に入る敵である二人に一気に襲い掛かられたので、流石に全方位から多数の魔獣に襲われては対処しきれず、すかさずハンナが防御魔術を行使する。


 本来彼女に防御魔術を行使する力はないが、魔道具()に魔力を込めて発動している。


 媒介を介した術の発動であり、本来の術に必要な魔力よりも余分な魔力を込める必要がある事から、長くは持たないと分かっている二人。


「これでは、こちらからは攻撃できませんね」


「……これだけ近接状態で囲まれては、確かに無理だ。このまま移動できるか?」


 杖を中心として術が発動されており、移動する事は可能だが、もちろん防御術によって形成された膜に興奮状態のゴスモンキは攻撃をし続けており、その攻撃を押し返しつつ進む必要がある。


 過剰な魔力供給と、物理的に押し返しつつ進むこの状況……街道に辿り着くのがギリギリではないかと、術を行使しているハンナは計算する。


「このままでは、精々持って街道までで術は……」


「誰か!!」


 ハンナが事実を説明しようとした時、街道方面から叫び声が聞こえて来た。


 声は聞こえるのだが、周囲はゴスモンキに囲われており一切姿は見えない二人。


 声がする方向が街道の方向で間違いなさそうなので取り敢えず進む二人だが、近づくにつれて明らかに戦闘の音が聞こえてくる。


 と同時に、自分達を囲うように攻撃していたゴスモンキが加速度的に少なくなっているのだ。


 そのおかげで視界が開けた二人は、辛うじて見える街道にある倒れた馬車、そして護衛の者達がゴスモンキと戦闘しているのが見えた。


 興奮状態のゴスモンキは、一切反撃をしてこず自分達の攻撃も通じない相手より、目に見えて攻撃を受けてダメージを負う相手をする方に吸い寄せられていた。


「助かりましたね」


 二人の周囲にはゴスモンキは一体もおらず、先の街道近辺で護衛と思われる者達四人と激しい戦闘を繰り広げている。


 見た感じ今の所辛うじて均衡を保っているが、自分達の周囲にいたゴスモンキが向かっている以上、劣勢になるのは目に見えている中で二人は安堵する。


「正直、魔力はもう限界です。これ以上は魔力を使った攻撃も防御もできません。今の私では、正直Fランクの魔獣でも危険ですね」


「俺も少々疲れたけど、ハンナの護衛位は辛うじて出来そうだ。このまま本体と合流しよう」


 必死で応戦している護衛が見えているはずなのに、加勢せずこの場を後にしようとするAランカー二人に対して救援を求める声が響く。


「そこの二人!加勢してくれ。早く!!」


 森の奥から現れたゴスモンキを見つけていた護衛は、同時にドリアスとハンナも見えていたのだ。


「だとさ、ハンナ。でも現実は厳しいか?」


「そうですね。既に魔力は空ですし、逆に彼らにご迷惑をおかけするかと思いますので、ここは撤退致しましょうか」


 奇麗事を言っているが、戦闘せずに見捨てて逃げると言っている【勇者の館】の二人。


「確かにそれが一番だ。俺達が【勇者の館】のAランカーだとバレると後が面倒ではあるけど、仕方が無いだろうな」


「大丈夫ですよ。彼らはどう見ても生き残れませんから」


 <勇者>としてSランクに上り詰め、国家からも一目置かれている男がマスターになっているギルドの高ランク冒険者とは思えない言い草で、戦闘状態の街道付近から距離を取り始める二人に罵声が浴びせられる。


「おい!逃げるのかよ!!」


「申し訳ありません。既に数々の魔獣と戦闘しており魔力が空なのです。足手纏いになってしまうので、失礼しますね」


 丁寧な物言いだが、はっきりと見捨てると言われた護衛達は、更に距離を取り始める二人に対して意識を向ける余裕が無くなってきた。


「隊長、これでは持って数分。俺達でここを少しでも抑え、残りの二人でお嬢様を逃がしましょう」


「……それしか無いだろうな。お前には貧乏くじを引かせたようで申しわけないが、その心意気、受け取った。おい!聞いたな。俺達が一気に攻撃をする。その隙にお嬢様を連れて街道を走れ!!」


 覚悟を決めた護衛四人は、護衛対象だけ(・・)が生き残るために最善を尽くす事を誓って行動を始める。


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