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アルフレドの加入(4)

 酔っ払い共の犠牲になっているのは蟻型魔獣のリアントなのだが、大好きな肉をくれるので、喜んで対応していた。


「あ~、ミハイルさん、シルバ。ずるーい。私も触るのー」


 そこに、こちらも完全に出来上がっているカスミが乱入すると言う、訳の分からない状態になっている。


 少し離れた位置から、すっかりリアントが【癒しの雫】のメンバーに受け入れられており、リアントも彼らを受け入れたのを見て安心しているアルフレドは、時折ギルドカードを見てはニヨニヨしている。


 少し前までは、真剣にロレアルとバーミルと今後について話をしていたのだが、今は状況が少し異なる。


「アルフレド、お前さんの武具は何が良い?本来はミハイルが軽く聞くべきだが、あの様だからな。ウハハハハ、まぁ、飲め!」


「【癒しの雫】の武具は全て俺達が責任を持って作っているから、何でも遠慮なく言ってくれよ。俺達に任せておけば、何でもこーいってことだ。カンパーイ」


 辛うじてまともな事を言える程度に酔っているロレアルとバーミルが、アルフレドの隣の椅子に向かって真剣に話しかけている。


「フフ、クオウ様、シア様、本当に楽しいですね。アルフレドも食べていますか?」


 流石は魔族。


 お酒は飲んでいるがあまり酔ってはいないフレナブルが、クオウとシアと共に笑顔でアルフレドの元にやってきた。


「はい。フレナブル様、クオウ様、マスター!俺、こんなに楽しい思いをしたのは初めてです。リアントも喜んでいますし、ありがとうございます!」


 アルフレドは、正式に【癒しの雫】に入った事をきっかけに、魔族の二人は様、シアはマスターと呼ぶ事、他の同格の人々は“さん”と言う敬称で呼ぶ事にしていたのだ。


「これからは、【癒しの雫】の一員として皆さんの助けになってくださいね。私達も期待していますよ」


「任せて下さい!」


 止むを得ず引きこもりの様な生活をしてきたアルフレドにとって、これからの生活は正に求めていた素晴らしい生活だ。


 一方で【癒しの雫】を出たルーカスは、【勇者の館】に戻る途中にギルド本部に立ち寄っている。


「ツイマはいるな?」


 ルーカスが【癒しの雫】を襲撃させ、その被害をせせら笑ってやろうと向かった先にはアルフレドがいた挙句、襲撃の痕跡すらないほどに復旧されていたのだ。


 確実に襲撃は実行したとの報告があったにも拘らず……だ。


 最早【癒しの雫】を完全な敵と認識したルーカスは、本部マスターのツイマを巻き込んで次なる作戦を立てるためにギルドマスターの執務室にズカズカと入り込む。


「こ、これはルーカス様、如何致しましたでしょうか?」


「言わなくてもわかるだろう!【癒しの雫】の件だ。つい先刻あのクソギルドに立ち寄ったが、そこに死……脱退したアルフレドがいた。あいつは俺達【癒しの雫】の依頼を中途半端に投げ出した挙句、【癒しの雫】に加入したのだ。そう、そうだ!あいつの下劣な行為は【癒しの雫】による妨害工作に他ならない」


「なんと!ですがそれは証明するのが難しく、逆に【勇者の館】の評判を落とす諸刃の剣になりかねませんよ?」


 ツイマは暗に【勇者の館】の信頼度は大きく下がっており、余計な事を言うと、最近評判が急上昇している【癒しの雫】に返り討ちに合うと言っている。


「わかっている。だから あいつらの本当の実力をこのジャロリア王国に知らしめるのだ。しょせんは裏切り者のアルフレドが加入しても冒険者は四人。高ランク魔獣を仕留められるとは言っても、手数には限界がある。わかるだろう?」


「……何を仰っているのですか?」


 その後、ルーカスが帰ったギルド本部。


「どうするべきか。このままルーカス様に乗るか、切るか…今回の提案だけ(・・)ならば問題ないが、エスカレートするとどうなるか分からない。徐々に距離をとる方が賢明か?」


 ルーカスとの今後について、悩み続けているギルドマスターがいた。


 このギルドマスターも結局は日和見で、自らの立場や権力を失わないようにするにはどうすれば良いか、更なる力を得るにはどうすれば良いか……を日々考えているような男だ。


 そんな男が悩んでも良い結果に結びつく事はないのだが、欲にまみれた男はどうでも良い事を必死で考えている。


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