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【癒しの雫】の想い

 相当努力して身分を安定させ、慎ましく、なるべく外界との接触を避けて過ごしていたアルフレド。


 【勇者の館】に先代魔王が存在しているとは知らないで行動していたが、そもそも極力人族の接触を拒み、唯一の身内である魔獣リアントを家族のように可愛がっていたので、人族の冒険者からは謎の多い男、そして薄気味悪い男と思われていた。


アルフレドがAランクに昇格した時には、【勇者の館】からは同時に昇格した者が多数いたために、書類を作成していたクオウには、数多くいる優秀な冒険者のうちの一人と認識されていた。


 そんなアルフレド、四星時代のフレナブルとたった二人でクオウ大好きチームとして交流があったのだ。


 こう言った理由からアルフレドの信頼は揺るがないと確信しているのだが、【癒しの雫】加入に対しては種族と言う大きな壁がある事は理解しているフレナブル。


 隠し通す事も可能だが、そもそも魔獣であるリアントを家族として扱っている所の説明が上手くできない。


 勝手にアルフレドの秘密を暴いてしまったような形のフレナブルだが、自分達の存在も明かさなければ、信頼関係については【癒しの雫】に理解して貰えない事もわかっている。


 この場では魔王云々は別として、クオウとフレナブル二人は魔族である事を明らかにするべきだと決断し、クオウにも確認を行ったのだ。


 以前楽しい夕食時に種族については気にしない!と【癒しの雫】のメンバー全員が言っていた事を思い出し、思い切ってフレナブルは緊張しながらも真実を告げたのだ。


 既にこの時点で、シアに一切の怪我がないと理解したシルバとカスミも、シアと共に話の場に来ている。


「それで、実は私とクオウ様も、人族ではありません……アルフレドと同じ魔族で、旧魔王様時代に交流があった仲間なのです」


 説明の途中で、何故か涙が溢れて声が小さくなり、下を向いてしまったフレナブル。


 かなりの覚悟で説明をしたので、拒絶される恐怖からこうなってしまっていた。


 魔王国から離脱した直後のフレナブルからは到底考えられない態度であり、”仲間の大切さを学んでくれたのだな“と、そんな事を思いつつ、既に覚悟を決めたクオウは優しくフレナブルを抱き寄せる。


 どのような結果になろうが、自分を追って来てくれたフレナブルと共に行動する事を誓って。


 自分達が魔族であり、今回【癒しの雫】の護衛を行うために引き入れようとしている元【勇者の館】Aランカーのアルフレドも魔族であり、アルフレドとは先代魔王時代に魔王国で交流があったと、決死の覚悟で暴露したフレナブル。


 だが、感情が追い付かずに涙を流してしまい、クオウに抱きしめられている。


 二人共、今の【癒しの雫】での生活が楽しすぎて、この一言、この暴露で追い出されるかもしれないと覚悟しているのだ。


「バカヤローが!!クオウの旦那!なにフレナブルさんを泣かせていやがる!見くびるんじゃねーよ!俺はな、俺達はな、クオウの旦那、フレナブルさんと言う人柄に惚れているんだよ!って、その、フレナブルさんはあまりも美しいので、ちょっとだけ憧れと言うか、その……何と言うか……同じ空間にいて頂けると幸せになるなって気持ちもちょこっと、いや、だいぶあるけど…‥‥」


 前半は血気盛んだが、後半は少々赤くなり尻すぼみになるミハイル。

 それを見て、ニヤニヤしているロレアルとバーミル。


 この三人は仕事場で時折【癒しの雫】の仲間について話しており、その時に恋愛感情ではないのだが、ミハイルが誰よりもフレナブルに対して憧れと言うのか、表現できないながらもとても良い感情を持っている事を聞かされていたからだ。


 ロレアルとバーミルも、フレナブルは当然ながら、【癒しの雫】の仲間全員に良い感情しか持っていない。


「ミハイルさんの言う通りですよ。う~ん、でもちょっとだけ悔しいですね。私達、信頼されていなかったのですかね。だとすると、ギルドマスターである私の力不足という事になります。ですから、これからもお二人のサポートが必要ですね!」


「それに、私、クオウさんには、いつかお料理で勝って見せると言う野望があるのです。勝ち逃げは許されませんよ。ね?シルバ」


「ハハハハ、かなりハードルは高いけど、その通り。それに、俺達にこんな素晴らしい場所をくれたし、フレナブルさんには武術の手ほどきもしてもらったのだから、本当に感謝しているんだ」


「クオウさん、フレナブルさん。ギルドマスターとしてまだまだ未熟ですけれど、【癒しの雫】のマスターとしてここに宣言します。お二人の種族なんて関係ありません。私達は、お二人がいなければ今この時、誰一人として幸せな生活をできていません。ですから、お二人にも引き続き【癒しの雫】の仲間として、共に幸せになってください!」


……パチパチパチパチ……


 誰もがシアの想いを肯定し、少ない人数ながらもとても温かい拍手で迎えられたクオウとフレナブル。


「ありがとうございます。本当に嬉しいです」


「フレナブルの言う通り、感動しました。これからも宜しくお願いします!」


 二人揃って深々と頭を下げる。


「よっしゃ、それじゃあ今日の夕方のパーティーは、決起会、それと、間に合う様ならアルフレドの歓迎会でどうだ?」


「わ~、良い案ですね、ミハイルさん!」


 ワイワイ始まった仲間達を見て、二人は嬉しそうに頷いて話に加わる。


 本当に良い仲間に巡り合えたものだと思いながら…‥‥


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