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【癒しの雫】襲撃

「おめでとうございます、シアさん」


 毎日顔を出しているギルド本部に着いたシアとクオウ。


 この日は納品ではなく、本部のボードに張り出されている依頼がどのような物があるかを確認しに来ているだけなのだが、突然担当受付のラスカから声を掛けられたのだ。


「漸く、ギルドレベル変更申請が通りましたよ。随分とウチのマスターが放っておいたので、一気にBランクに昇格です!!」

「本当ですか!やった、クオウさん、Bランクですって。嬉しいです。これでお父さんとお母さんを超える事が出来ました……うぇ~ん」


 嬉しさのあまりに泣き出してしまったシアを、優しく抱きしめるクオウ。

 そしてその姿を微笑みながら見ているラスカだが、もちろんこの場にいる全員が【癒しの雫】に好意的と言う訳ではない。


 クオウだけはその視線に気が付いていたが、今は喜びに浸っているシアの対応に集中していた。


 【癒しの雫】に戻り、既に本部から受けている依頼を一旦片付けて空き日を作り、大々的にパーティーをしようと計画していた。


 もう既に、ギルド内部はお祭り騒ぎだ。


「ウハハハハ、流石はマスターだ。良かったな!これで俺達もBランクギルドの一員だぜ!なぁ、クオウの旦那!」

「魔道具作りも充実しているし、食事は美味しい。本当に幸せで泣きそうだ」

「アハハハ、俺もだよ、ロレアル。まさかこんなに楽しい日々を過ごせるなんて、あの時は思わなかったな!」


 と魔道具バカ三人は騒げば、


「ウフフフ、最近はシア様もギルドマスターとしての貫禄が出てきましたからね。これからはBランクのマスターですよ?」

「はいっ、ありがとうございますフレナブルさん!」


 フレナブルとシアも弾んだ声で楽しそうに話している。


「まさか私達がBランクギルドに所属するなんて……シルバ、信じられる?」

「実際、この武具で俺達もかなり強くなった実感もあるし、【自由の風】に居たら、こうはなっていないだろうな。今思えば、追放してくれてありがとうって感じだな!」


 夫婦の冒険者、シルバとカスミも笑顔だ。


「じゃあ、明日納期の魔道具作成の仕事が終われば、その後の仕事は入れないので、明後日は朝からパーティーの準備をして、夕方から騒ぎましょう!」


 クオウとしても初めてのパーティー。嬉しく感じないわけがない。

 

 明後日の動きまでウキウキして決定した。


 数日間納期に余裕がある別の魔道具の作成をする三人、ギルドに直接依頼をしに来る人達の対応にマスターのシア、冒険者組とクオウは市場に食材、酒の買い出しに行く事が決まった。


 翌日、ギルド本部でラスカに事情を話し、今日から数日間は依頼を受ける事ができないと説明する。


 本来は本部から受注した依頼の納期さえ守れば、新しい依頼を受けるか否かは各ギルドに裁量権があるのでここまでする必要はない。


 そんな中でこう言った行動が出来る所も、信頼度が高くなるのだろう。


「本当に楽しそうなギルドですよね。休むときは休む。楽しむときは楽しむ。素晴らしいです。了解しました。では数日後にお待ちしていますね!」


 快く送り出してくれたラスカにお礼を伝えると、本部から【癒しの雫】に戻る。


 更にその翌日……


「クオウの旦那、マスター、今日の夕方はいよいよパーティーだぜ!楽しみだな!こんなパーティー俺達は初めてだから、待ちきれないぜ」


 ミハイルの一言で全員が笑顔になり、それぞれの役割につく。


 予定通り、ミハイル達三人は夕方まで武具の製作、冒険者とクオウは買い出し、シアは受付業務だ。


 全員がバラバラになって暫くすると、ギルド入り口付近が轟音と共に吹き飛んだ。


……バキバキ……ゴォ~~~……


 最近はギルド本部の依頼として武具の作成依頼まで受けており、一気にBランクに至ったやっかみもあるのだろう。


 その結果、【癒しの雫】は予期せぬ襲撃を受けたのだ。

 しかも狙ったかのように、冒険者であるフレナブル、シルバ、カスミが不在時に襲ってきたのだ。


 本部で夕方のパーティーの準備で各自が外出すると伝えていた為、その情報を聞いた何者かの犯行である可能性が極めて高い。


 その音を聞いた魔道具バカの三人が即座に反応して迎撃したのだが、ギルドマスターであるシアの魔道具も無駄に発動する。


 クオウとフレナブルの過保護とも言える対策によって、それぞれ防御魔術、回復魔術、念話魔術が起動されたのだ。


 以前【鉱石の彩】で購入した短剣と杖があるのだが、その後にシアの身の安全のためと別の触媒の魔道具を与えていたので、複数を持ち歩くのは不便だろうと考えてその短剣に改めて各種機能を組み込み、シアの安全のためにと短剣だけを持たせていた。


 正直誰も怪我をしていないのに高位の回復魔術まで起動するのだから本当に無駄なのだが、一方で念話魔術によって状況を聞いたクオウとフレナブル、シルバとカスミは急ぎ【癒しの雫】に戻ってきた。


 その時には、魔道具バカ三人が思った以上に強い事を把握した襲撃者は既に去った後だった。


「これは……もう少し防御態勢をしっかりしねーとダメじゃねーか?クオウの旦那!」

「確かにその通りだけど、どうするか……」


 ギルド自体の防御態勢について話はじめるクオウとミハイル達。


「マスター、大丈夫か?」

「どこも怪我はないかしら?」


 シアの体を心配そうに確認しているシルバとカスミ。

 フレナブルとクオウは、一目見てシアには何も異常がない事を把握しているので、シアの対応は二人に任せていた。


 フレナブルは、ミハイル達魔道具バカ三人と共に防御態勢について話しているクオウの会話に加わる。


「クオウ様、少々気になる事があります。そもそも今回の襲撃は何処を狙ったのでしょうか?ギルド本体ですか?それともどなたか個人ですか?それによって対策も変わって来るのではないかと思いますが」

「フレナブルさんの言う通りだ。だが、俺達があいつらを追い返した時、誰かを探すような素振りはなかったぜ。なぁ?」


 ミハイルの問いに、居残り組だったロレアルとバーミルも首肯する。


「そうなると、【癒しの雫】に対する襲撃と見てもよさそうだ。フレナブル、やはりここはラトールを出した方が良くないか?」


 クオウの眷属である兎の魔獣のラトールは、フレナブルよりは弱いが、ゴクドよりは、はるかに強い魔獣だ。


 人族の分類で強制的に当てはめればSランク以上。敢えて言うならばSSランクだろうか。


 そもそも本当の特殊個体であり、人族では到底たどり着けない様な環境で生活している為、人前には姿を見せた事が無い。


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