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ダンジョン隠れボス?

「やったぞ!」

「やりましたよ、ルーカス様!」

「間に合ったな。よくやったぞ、お前ら。疲れているだろうが、時間はあまり残されていない。心臓は……換金するわけではないから、そのまま討伐証明として持ち帰るぞ」


 ルーカスが指示を出して、てきぱきと動いている二人。


 その三人を、20階層の入り口、既にランドルマスタは倒されているので出口にもなるが、そこに気配を消しつつ移動しているレゼニアと蛇型魔獣マスネ。


「ふ~ん。やっぱりあの三人、強かったんだね。他にもあのギルドに所属している高ランクもいて結構強そうだし、やっぱり危険だね」


 淡々と感想をマスネに話すレゼニア。


 マスネはAランクの特殊個体であるためにレゼニアの言っている事は理解できるのだが、これからその危険と言われている相手と無条件で戦闘させられるため、特に返事をする事はしなかった。


 マスネとしては、レゼニアがこの場で戦闘すれば一瞬であの三人を始末できるのにと思っているし、レゼニアとしては、ゴクドの命令を遂行して、さっさと眷属の元に帰りたいと思っているのだ。


 レゼニアにとって眷属の魔獣はとても大切な仲間だが、昨日今日行動を共にしただけの魔獣は、なにも思い入れの無いただの道具に過ぎない。

 この辺りは、やはり冷酷な魔族で最強の一角の四星と言われる所かもしれない。


「もうすぐ終わりそうだね。じゃあ僕は帰るから、しっかり頑張ってね。彼らを始末出来たら、勝手に帰って良いからね」


 この言葉と共に、本当にレゼニアはこの場を後にしてしまう。


 一瞬マスネはこのまま逃走しようかとも考えたが、仮に道中レゼニアに見つかれば命はない。

 であれば、勝利の可能性が高いルーカス達と戦闘した方が生き残る可能性が高いと覚悟を決めた。


 レゼニアが去ったためにマスネの気配はダダ洩れになっており、素材剥ぎ取りが終わり、20階層の出口に視線を向け始めていた三人の動きが止まる。


「な……まさか、あいつが隠れボスですか?ルーカス様」

「いや、未だかつて隠れボスなどと言う存在は聞いた事が無いぞ。だが、どう見てもAランクのマスネだな」

「ここに来て……ですが、まだ魔力も残っています。ここが踏ん張りどころです!」


 この会話の直後、どの道出口に陣取っているマスネを何とかしなければ未来はない三人は、即座に行動に移す。


 ドリアスは再び猛毒の短剣をマスネの頭部付近を狙って投げつると同時に、巨大な蛇の胴体部分に近接して行く。


 ルーカスとマスネも、遠距離攻撃の魔術で直接マスネの体にダメージを与えるべく攻撃する。


 既にマスネは彼らの攻撃方法を見ており、対策も考えていた。

 尻尾を激しく床に叩きつけ、巻き上がる岩によって全ての攻撃を避けて見せたのだ。

 同時に、近接していたドリアスにもダメージを与える事に成功している。


「畜生、ルーカス様。俺の魔道具はもう使えません。これで終わりです」


 この攻撃を受けた事によって、防御の魔道具が使えなくなってしまったドリアス。

 これ以降に致命傷となり得る攻撃を受けても、身代わりになる物は無い為に大胆な行動は取れなくなる。


「これを使え!」


 ここでドリアスの離脱は、自分自身の命の危険度が上昇する事を知っているルーカスが、最後の予備の魔道具をドリアスに渡す。

 ドリアスにしてみれば、自分のために魔道具を渡してくれた素晴らしいギルドマスターと言う認識だが、真意は全く異なっている。


「申し訳ありません、ルーカス様」


 ルーカスが収納袋から魔道具を出しドリアスに渡し、その魔道具をドリアスが装着するこの時間は、大きな隙となった。


 毒の短剣が危険であると認識していたマスネは、ドリアスに近接して体当たりをかましたのだ。

 ドリアスの近くにいたルーカスとハンナはマスネの急襲に本能で距離をとったが、魔道具装着に意識が向いていたドリアスだけは反応が遅れる。


 丁度魔道具を装備した直後のためにダメージは無かったのだが、装着直後の魔道具は既に使用不能となっていた。


「クソ……」


 こうなると、ある程度ルーカスがドリアスのカバーを行う必要があり、多少無理な行動をする必要が出てきた。


 帰還の事も考えると回復術が行使できるハンナの魔力は極力温存したい考えのルーカスは獅子奮迅の働きをする。

 ……のだが、ここまでの疲労、ランドルマスタとの戦闘の勝利によって一旦切れてしまった緊張感のせいか、全盛期の動きとは比較にならないほど緩慢な動作となり、重い一撃を食らってしまう。


 全方位的に被害が行くように、ダンジョンの地面、壁を破壊して石をまき散らしながら暴れるマスネの尻尾が直撃したのだ。


「「ルーカス様!!」」

「だ、大丈夫だ。だが俺も、これで魔道具はなしだ。ハンナは魔力を温存しろ。今後はお前の回復だけが頼りだ!」


 徐々に焦りが見える三人。

 ルーカスはこの状況に置かれて、再び下種な考えが頭をよぎる。


『こいつらの一方、そうだな、魔道具も無ければ回復も出来ないドリアスを囮にして離脱するか?』


 しかしその考えは悪手だと思い直す。

 この国王からの依頼であるダンジョン完全攻略、国家中に公になっているので、討伐メンバーも知れ渡っている。


 仮に依頼を達成したとしても、Aランクが一人死亡と言う結果ではギルドランク降格の可能性があるうえ、最終的にはハンナの口封じも必要になって来るからだ。


「ドリアス!あの短剣、残りどの程度だ!」

「……あと一本です!」


 またもや大声で確認するルーカス達。

 ランドルマスタには同じような行動をしても影響はなかったが、今回の相手であるAランク魔獣のマスネは特殊個体であり、人言を理解できるのだ。


 実際にマスネはこの言葉を聞いて、あと一回ドリアスと呼ばれている男の攻撃に気を付ければ、致命傷は無いだろうと考えていた。


 同じように暴れているように見せかけながら、集中的に岩をドリアスに向けて飛ばす。

 特殊個体である為、普通は使えない風魔術を少々行使できるので、岩が飛ぶ方向、そして速度を調整しているのだ。


 当然防御しきれないドリアスの補助にルーカスが入る為、マスネとドリアスの間に移動して防御態勢を取る。


 激しい音と共に、砂塵が待っているので視界は悪く、移動時の音も察知されないと踏んだドリアスは即座に移動し、最後の短剣を使って攻撃しようと死角に移動してマスネに近接する。


……バキィ……


「ドリアスさん!」


 成す術なく吹き飛ばされたドリアスが着地した場所が、ハンナの近くだったのは偶然だ。


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