表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

45/153

最終階層(20階層)へ

 ダンジョン脱出に10日かかると踏むと、今日中に最終層まで攻略しなくてはならない【勇者の館】。


 その願いが通じたのか、19階層にある階段を下った先に見えたのは最終階層である事を示す扉があったのだ。


 最終階層に続く階段に関する情報はあまりない。

 未だに階段で襲われたと言う報告はないが、油断はできない事を知っているルーカスは、素早く全員に装備の再点検を命じ、自らも状態を確認する。


「ここをクリアして、今迄消費した分軽くなっている収納袋の中に討伐部位を入れて戻れば終了だ。行くぞ!」


 常にこのように冷静沈着な判断と態度が取れていれば、まさかSランク降格の危機を迎えるような事は無かっただろうルーカス。


 同行している二人のAランク冒険者にしてみれば、今のルーカスは頼れるギルドマスターであり、Sランク冒険者なのだ。


「行きましょう」

「私も万全です」


 気合を新たに、ルーカスを先頭に扉を開ける。


……バキ……


 その瞬間、先頭を歩いていたルーカスの防御の魔道具が一気に使用不可になったのだ。

 つまり侵入直後に、攻撃されたのだ。


「まずい、散れ!」


 すかさずルーカスは残っている魔道具を装備しつつ、散開の指示を出す。


 素早く散った三人の視線の先には、以前このダンジョンで襲われたAランクの魔獣ランドルに似た魔獣が、入り口からは離れた位置に立っていた。


「こいつはランドルの上位種だ。油断するな。ランドルと違って斬撃を飛ばして来るぞ!」


 流石のギルドマスターであるルーカスは、一目見てランドルとの違いを見抜き注意喚起する。


 今の立ち位置は、丁度ランドルマスタを半円状に囲うように三人が広がっているので、すかさず三人共に遠距離攻撃を仕掛ける。


「食らいやがれ!」


 ルーカスは最も早く攻撃力が高い雷魔術を。


「消し炭になりなさい!」


 ハンナは、魔道具によって底上げされている炎魔術を。


「オラァー!」


 ドリアスは、収納袋にしまってあった短剣を力に物を言わせて投げつけた。


 流石に三方向から、雷魔術を入れると上空からも攻撃が一気に来たため、全てを避ける事は出来ないランドルマスタ。


 最もダメージが少ないだろうと判断したドリアスの短剣は避ける事を諦めて、他の二つの魔術を避けた。


 当然短剣は刺さるのだが、そこは許容範囲だと思っていた。


「ふ~ん、やっぱりかなり強いんだね」


 気配を消しつつルーカス達の闘いを見ているレゼニアは、【勇者の館】の強さを改めて認識した。


 この場で魔王ゴクドの憂慮しているルーカスを始末するために、連れて来たAランクの魔獣ラスネを投入しようとも考えたのだが、魔獣同士の連携が取れずにかえって弱体化すると判断して静観していた。


 もちろん自分の命が大切なので、ゴクドに命令されてない以上は、この場で自分が戦闘すると言う選択肢はレゼニアにはない。


 命令がなければ、自分の眷属と共にゆっくりと過ごしたいと常に思っているからだ。


 魔王ゴクドの本来の意思はこの場でルーカス一行の抹殺であり、そのつもりでAランクの魔獣を差し向けろと告げていたのだが、レゼニアにはその言葉を正確に把握する頭脳はない。


 言葉通りに行動し、Aランクの魔獣であるマスネと共に潜んでいるのだ。


 きちんとした頭脳を持ち合わせていれば、過去にクオウを始末するための囮になるために弱体化される事を許容する事は無かっただろう。


 早く仕事を終わらせて、眷属達と過ごしたいと思っているレゼニアの視線の先には、動きが鈍くなっているランドルマスタがいる。


 当然ドリアスの投げた短剣はただの短剣ではない。

 【勇者の館】所属錬金術師特製の、対魔獣用の猛毒が塗布されている短剣なのだ。


 その短剣を真面に被弾したランドルマスタ。


 個体の強さによって即死する事はないのだが、かなり回復に力を削がれる羽目になったために動きに切れが無くなっている。


 何とかルーカス達に向かって大量の斬撃を放ち、攻撃させないように対処しているのだが……


 その攻撃は単調になり、高レベル冒険者である三人共に対処可能になってきた。


「ルーカス様、これならば行けます!」

「次のタイミングで、俺が行きます」

「わかった。合わせるぞ!」


 仮に目の前の上位種であるランドルマスタが特殊個体でもあった場合、人言を理解できるためにこの会話は悪手なのだが、間もなく完全攻略と確信した三人はその事には思い至らなかった。


「オラァ!」


 ランドルマスタの両手の刃が投げられ、再生されるその瞬間……ルーカスとハンナは、標的の少し前に着弾するように雷魔術と炎魔術を行使した。


 今までの戦闘で、ランドルマスタは魔術の起動を見極める事が出来ていると把握した三人。


 着弾する様な魔術は移動して避けるが、着弾しない魔術に関しては軽い防御姿勢だけで移動しない事を掴んでいたのだ。

 恐らく毒からの回復に力を注いでいるために、無駄な移動を避けているのだろうと判断した。


 その情報から、二人が魔術で足止めし、その隙にドリアスが近接して仕留める手法を選択した。

 刃が再生するタイミングであれば、近接するドリアスの安全も確保しやすい事から、慎重にタイミングを見極めていたのだ。


 この短い期間でかなりの連携が出来るほどになっていた三人。


「グ……グギャ……」


 結果、ランドルマスタの心臓に深々とドリアスの猛毒付き短剣が突き刺さっていた。


 そのまま短剣を引き抜かずに一瞬で離脱するドリアスは、二人のいる位置にまで下がる。


 油断なく三人の視線がランドルマスタに向けられるが、ダンジョンのボスは力なくその場に倒れ、動かなくなった。


 この時点で目的であるダンジョン攻略が終了したのだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ