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【癒しの雫】再稼働

 元【鉱石の彩】のメンバーが加入して、再びギルド本部の依頼を受ける事になった【癒しの雫】。

 活動禁止期間も過ぎ、再度本部の依頼を受けられる状態になったのだ。


 その期間も、【鉱石の彩】の加入による設備、環境を整える期間と、周辺の住民への顔見せを兼ねた細かな依頼を行っているので、決して干されたと言う感覚ではない。


 その間の活動は、楽しくも少々トラブルが有ったりもした。


 特に元【鉱石の彩】の面々が周辺住民の人達の依頼を受けたのだが、特に多いのが包丁を始めとした調理器具の修繕や新規作成依頼だった。


 鍛冶、鑑定や錬金を行う際の基礎の基礎として始める作業ではあるのだが、心機一転新たに活動する良いきっかけになると、積極的に依頼をこなしていた。


 ……のだが、彼らは自分達の実力を過小評価していた。

 例えば包丁。


 あまりにも鋭利になりすぎて、同じ感覚で調理した人がまな板だけではなく、その調理場まで中途半端に切断してしまったりしたのだ。


 もちろんミハイル達が包丁を修正の上、調理場も修理したのだが……彼らの評判が急上昇し、楽しく活動できていた。


 そんな感じで活動していたのだが、再び本部の依頼が始まる前にクオウは元【鉱石の彩】のミハイル達にシアの安全について相談していた。

 シアの安全を守るための魔術は込められるが、込める触媒、魔道具がない……という事を。


 クオウ自身が持っている触媒は人族では有り得ない程の高級品であり、それ故、封入できる魔術も高レベルの物に限られていたのだ。


 そんな物をシアが使えば周囲への被害、そしてシア自身への被害もあるし、なによりその触媒、魔道具の出所について要らぬ噂が立ち、クオウとしても、【癒しの雫】としても活動に影響があると考えたのだ。


「そんな事か、クオウさん。俺に任せておけ、と言うよりも、ほいよ。これで良ければ使ってくれ」


 あっさりと渡された触媒は、人族のレベルで言えば有り得ない程精密に出来ている魔道具だ。

 クオウの触媒は、どちらかと言うと自分と同じく力に物を言わせた魔道具。

 対してミハイルが作ったのは、技術の粋を尽くした精巧な魔道具だったのだ。


「助かります。これで俺達のマスターの安全が増します。俺やフレナブルが不在時のギルドの安全、お願いしますね」

「ガハハハ、任せろ。なんといっても、俺達のマスターだからな」


 こうして準備したのは、四つの魔術を組み込んだ魔道具だ。


「マスター、ミハイルさんに貰ったこの触媒の魔道具に、術を四つフレナブルに組み込んでもらいました。万が一の時には遠慮なく使ってください。これから【癒しの雫】は大きくなるにつれ、残念ながら魔王以外の脅威も現れます。対策はするにこしたことは無いですからね」

「ありがとうございます、クオウさん。後でミハイルさん達やフレナブルさんにもお礼を言わないと!」


 楽しそうに、嬉しそうに魔道具を受け取るシアを見るクオウ。


 本当は自分で術を組み込もうとしたのだが、どれ程頑張っても触媒が耐えられるのは一つの術しか入れられない程にしか調整できなかったのだ。


 結果、フレナブルに四つの術を組み込んでもらう事にした。


 その術、防御魔術、雷魔術、回復魔術、そして念話魔術だ。


 危機的状況になった場合、無条件で防御魔術と回復魔術、そして念話魔術が発動する。

 シアが怪我を負っていようがなかろうが、回復魔術まで自動起動する程の過保護ぶりだ。


 少女であるシアに対して、何となく親心を持ち始めているクオウとフレナブルだから仕方がない。


「では、行きましょうか。マスター!」

「はい!クオウさん」


 こうして本部に赴いて取ってきた仕事は、ダンジョンの浅層に出現し始めていると言う強力な魔獣の調査(・・)だ。

 ルーカスとフレナブルがギルド本部でひと悶着あった翌日に、ギルド本部でラスカと【癒しの雫】は依頼の受注処理を行っていた。


 既にダンジョンでの活動を行っている他のギルド、【勇者の館】も含まれるが、各ギルド所属冒険者から、浅層では有り得ないレベルの魔獣を発見したと言う報告が上がっているのだ。


 本来は継続して彼らに調査を依頼するのが一般的だが、既に魔族、魔獣側の勢力が勢いを増している現状、ダンジョンの調査だけに高レベルの冒険者を使うわけには行かず、Aランク魔獣の討伐実績のあるDランクの【癒しの雫】に白羽の矢が立った。


 これはギルド本部からの直接依頼となり、もちろんギルドの評価に大きな影響を与える。


「……と言う事で、あくまで調査(・・)を【癒しの雫】の皆様にお願いしたいのです。現時点での報告は、ランドルではないかと言われています。Aランクの魔獣ですね。今までも他のダンジョンで浅層に有り得ないレベルの魔獣が現れていますが、放置すると地上に出て侵攻してくるのです。早めに情報を集め、別途討伐隊を編成する必要があるので、お願いします」


 担当受付であるラスカから、依頼の詳細説明を受けたクオウとシア。

 あくまでも、討伐ではなく調査と強調するラスカ。

未だDランクギルド認定のBランク冒険者に、Aランク魔獣討伐を依頼するわけには行かないからだ。


 シアとしてはこの話を聞いて、Aランクの魔獣と聞いただけで唯一の冒険者であるフレナブルが心配になっていた。

 既にAランクを始末した実績があるし、その力は信頼しているのだが、やはり心配になるのだ。


 そんなシアの表情を見て軽く微笑むクオウは、迷うことなく依頼を受ける。


「ラスカさん、わかりました。その依頼【癒しの雫】が受けます。ですが……ついでにうっかり勢い余って始末してしまった場合はどうなりますか?以前のように依頼無しでの持ち込みの魔獣とは異なり、通常の実績にして頂けますか?」


 以前フレナブルが適当に狩ってきて納品したAランク魔獣持ち込みは、ギルドからの正式依頼ではない。

 そもそもギルド本部からの依頼を受けられるギルドではなかったのだが、結果を持ち込むと評価はされる。


 しかし依頼を受けて魔獣を納品した時の評価と比べると、報酬も含めて評価が抑えられるのは仕方がない所だ。納期も無い依頼になるのだから準備期間も異なり、難易度も違う。


 事務職としてその部分の知識も持っていたクオウは、今回の調査実行中にAランクをついで(・・・)に討伐した際にも、ギルド本部からの依頼で始末した時と同じように評価しろと伝えている。


「それは構いませんが、安全第一ですよ?ですから調査依頼なのですよ?大丈夫ですか、クオウさん」

「大丈夫ですよ。俺達【癒しの雫】はマスターを中心に楽しく活動するのがモットーですから、無理はしません。準備をしっかりして、明日依頼を開始します。ね?マスター?」

「は、はい!そうです。そうですよね!」


 クオウの言葉によって、クオウもフレナブルの事をきちんと考えての発言だと改めて理解したシアは、明るく返事をする。


「ハン、Dランクギルドが何を言っていやがる」

「うちのマスターの獲物を横取りするような奴だぜ。直ぐにボロが出るさ」

「そうそう。それに、あのふざけた武具を作っていた連中を迎え入れたらしいからな。お荷物を抱えてどうなるか、見ものだぜ」


 クオウの耳には、【勇者の館】関連の者達の声が聞こえるが気にしない。

 直接シアを始めとした【癒しの雫】に害がなければ、ダニがいくら騒ごうが、気にならないのだ。


 それよりも、同じ本部受付のミバスロアの元気がない事が少々気になっていた。


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