その後(10)
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事前に何かしらの呪いを付与してくる可能性が高いとミハイル達から助言を受けていたゴクドとジスドネアは、対策としてえげつない見た目と匂いの呪いの解除薬を飲む事を勧められていた。
全く呪いを受けていない者が飲んだ場合には体内の呪いと中和されずに暫く残ってしまうために後味が非常に悪いと言うおまけつきだが、この対策でゴクドは何も呪いを受ける事がなかった。
「あっ、呪い……こっちにも……」
未だに非常に不快な味がしているジスドネアは、逆に呪いをかけて中和してもらいたいと言う思いから、有り得ないような言葉を発してしまっている。
ジスドネアの気持ちはわかるが今はそれどころではないので、ゴクドは即座にロジャを取り押さえて衛兵を呼ぶ。
流石は魔王だけあって危なげなく取り押さえ、衛兵も即座に現れてロジャを縛り付けた上で牢に引きずって行く。
この場はロジャの商会の前であったため、多くの魔族にこの事件は目撃されている。
その後ミハイル達三人は、数多くの魔道具を使用する事が出来て満足そうに魔王国を後にしたのだが、今回の事件のあらましはロジャ断罪の為にも詳細が魔王ゴクドから魔王国の住民に広く告知され、改めて【癒しの雫】の偉大さと非常識さも広く国民に認知される事になった。
今回の非常識さの話は……
一つ目は、公的には地中に潜って帰ってこないスナイクは絶対に見つける事が出来ないと言われているのに、一瞬でこの広大な魔王国の城下町で発見してしまった上に無事に地中から引き摺り出した事。
二つ目は、かなりの権力を持っている商会長であったロジャに臆することなく、剰えババァ呼ばわりしていた事。
最後の三つ目は、呪いの万能回復薬だ。
これは、その効能と製作時間の短さもそうなのだが、やはりその禍々しい見た目と全てを諦めたくなるような匂い。
実際に呪いで中和する事が出来なかったジスドネアからは暫く比喩し難い匂いが発せられており、ゴクドを含めて誰しもが露骨に距離を取るようになっていた。
涙目のジスドネアだったが、自分が逆の立場であれば同じ事をするだろうとグッと堪えていたのが印象的なのだが、その寂しそうな姿も多くの民に目撃されており、一応魔王国の二番の地位にいる者を薬品一つでここまで追い詰める事の出来る【癒しの雫】の非常識さが知れ渡ったのだ。
結局、誰しもが大いに不安になっていた“依頼達成の過程において魔王国の環境を大きく破壊するのではないか”と言う事は無かったのだが、短期間ではあるがピンポイントで生活環境を大きく破壊された者は存在した。
「マスター、クオウの旦那、無事に完了だ。ついでに、呪いとか言うふざけた事をしていたババァも一人対処しておいたぜ?」
「お疲れ様です、ミハイルさん、バーミルさん、ロレアルさん。呪いの一件、魔王国にあるギルドを通して連絡が来ています。凄いですよね」
ギルドマスターのシアは、マスコットの一体であるラトールを抱きながら嬉しそうに報告を聞いている。
「マスターの言う通りですね。てっきりもう少し被害が大き……ゲフンゲフン。まさかの呪いで商売をしていた者がいるとは思いませんでしたが、そこまで対処できるとは流石鍛冶三人組です」
有り得ない事態……気合十分のミハイル達が何も環境破壊をしなかった事から、思わず本音が出そうになったクオウだが、何とか堪えている。
【癒しの雫】は、他の人々や種族から見られた時には常識を逸した力をもっている一団と見られているのだが、メンバーとしては、幼いギルドマスターであるシアも含めてこれが標準とは言わないまでも、そうそう常識を大きく逸脱している事は無いだろうと思っている。
特にその様子を間近で見ている【癒しの雫】周辺の昔から付き合いのある住民達は、例えそれ程の力を持っていようが今迄と変わらないシア、【癒しの雫】がいる限り、楽しく生活できることは間違いないと彼等、彼女達を優しく見守っている。
「じゃあ、今日も改めて頑張りましょうかねっと!」
「フフフ、クオウさんは本当に変わらないですよね?」
【癒しの雫】の楽しくも騒がしい活動はまだまだ続く……
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